3.NFMO詳細とPVPシステムランキング報酬
今回は説明話です...私の想像力が乏しいのですごく大雑把になってしまいました。
右手を突っ込んでアカウント登録——その常軌を逸した方法に、俺とナメタはしばし呆然としていた。
……ただ一人、例のごとくブレない奴を除いて。
「と、とりあえずアカウント登録は……できた。ていうか、されてしまったけど……体に異常がなくて、本当によかった」
心底そう思う。
右手が物理的に吹き飛んだかと思ったし、あれで右手が失われてたらと思うとゾッとする。
「右手がどっか行ったら困る。俺、右利きだしな。電子化されてたり、変な義手にされてたらマジで終わってたぞ」
隣のナメタも、俺と同じことを考えていたらしい。
一方ランデスはというと……特に何も考えてなさそうな表情で、いつも通りだった。
「どういう仕組みなんだろうね。これ、完全に物理法則を無視してるよ……」
「さっぱりわからん。右手がモニターに物理的に突っ込める時点で、もうアホらしいってレベルじゃねえよ」
「ま、登録できたならなんでも良くない? 体も無事だったし~、気にしてもしょうがないでしょ~」
相変わらず楽天家すぎて羨ましい。
でも実際、身体に異常は見られない。今のところは、だが。
「……とにかく、ログインはちょっと控えておこう」
「俺もそう思う。正直、ルールとか注意点とか、そもそも読まずに突っ込みすぎた。反省してる」
俺たちはようやく腰を落ち着け、ゲームの基本的なルールや注意事項を確認することにした。
▼ルール・詳細・注意点
このゲームは、プレイヤーの肉体を完全にゲーム内へフルダイブさせるシステムを採用しています。
詳細な仕様については今はお教えできません。不明点やバグ報告は《公式フォーム》よりお願いいたします。
ログアウトは“基本的に”可能です。
人体への異常は絶対にありません。ご安心ください。
不正が発覚した場合、私たち運営の裁量でNFMOのログイン・ログアウト機能を制限いたします。
他のゲームから《通貨》《アイテム》《スキル》を持ち込むことが可能です。
6.1 課金アイテム・課金通貨の一部は持ち込み対象外です。
6.2 このゲームに存在しないステータス補正は適用されません。
6.3 持ち込めるのは《不正ツールを使用していない》アイテム・スキルのみです。
6.4 持ち込める総量やスキル数には制限があります。レベルに応じて上限が変動します。
PVP専用チャンネルが存在します。基本プレイチャンネルとは別になります。
ランキングシステムも実装済みです。(詳細は別記)
クローズドベータ期間は数ヶ月を予定しています。
※毎月“シーズン”が切り替わります。
テスター数は全体で350~1050アカウント。最大でも1050名です。
「……すごい大雑把だな。運営、本当にこのゲーム作り込んでるのか?」
「でも、なんとなく全体像は見えてきた気がするよな。ランキングシステムがあるってことは、プレイの方向性も見えやすいし」
「そうそう。あと他ゲーからアイテム持ち込めるってのが面白いな。……てか、“体をフルダイブ”って何だよ……あの右手イン事件のことだとしたら、マジで意味わかんねぇ」
「でも楽しそう~! 人体に異常は絶対にないって書いてあるし、安心して遊べるね~。PVPとかどうなってるのかな~?」
俺たちはさらに詳細をチェックする。
▼PVPシステム/ランキングシステム
※一般サーバーとPVPサーバーは別々です。
PVPサーバー利用時は十分ご注意ください。
PVPで死亡しても、ペナルティはランキングの降下のみです。
戦闘は《町の外》のオープンフィールドでのみ可能。町の中では戦闘できません。
勝利チームには《名誉ポイント》が与えられます。通貨報酬ではありません。
ランキングは以下の3種類
4.1 レベルランキング
4.2 PVP名誉ランキング
4.3 攻略ポイントランキング
4.2 各ランキング上位者には《月ごとの報酬》があります。
※報酬内容はシーズンごとに更新されます。
「ふむ……基本的に死んでもリアルに影響ないっぽいな。ランキングが下がるだけで済むのは良心的だ」
「この感じなら、まずは報酬がどういうものか1回目のシーズンで確認して、その後で本格的に狙うのが良さそう」
ナメタは早くも効率的な戦略を考えている。
けど本当に、簡単に上位を狙えるのか? テスターの上限が千人程度なら、意外といけるのかもしれないが——。
「俺は攻略ポイントが一番楽そうな気がするなぁ。クエストとかクリアしていくだけで稼げそうだし」
「俺はニートだからレベルでも名誉でもいけると思う~!」
「誰でもランデスみたいにニートしてるわけじゃねぇんだよ、羨ましいけどな!」
正直なところ、一番の不安は情報がほぼゼロな点だ。
Wikiもない、プレイヤー数も少ない……でも、だからこそやりがいがあるのかもしれない。
「……今日はもう寝るわ。メインゲー、メンテ明けだったのに何もできんかった。最悪」
「俺も寝るわ。一人でログインするのは流石に怖い。焦っても仕方ないし、スタートダッシュはまだ挽回できる」
「俺は~……どうしよっかな~? 寝よっかな~? もしかしたら、ちょっとやるかも~?」
……ランデスだけは、なんかログインしそうな雰囲気を出していた。
「おい、マジでのめり込むなよ? “絶対に安全”って書いてあるけど、まだ未知数だからな。明日、ちゃんと3人でやる時間作ろうぜ」
「わかった~。おやすみ~」
「は~いおやすみ~!」
こうして、その夜は一度、解散ということになった——。