【1-6】.ワンワンの群れ
今回のこのウルフ討伐クエストは突発的なゲリラクエスト攻略です!こういう突発的なものが多い方が後々楽しくなると思うんですね
道中の雑魚MOBたちをなぎ倒しながら、ついでにレベリングをしていく。そんなふうに進んでいるうちに、西の森へと到着した。
「案外、多少の連携が取れてれば、この辺りなら適正レベルでもトレインして、ランデスがタゲ取って殴るだけで片付くな」 「俺の攻撃魔法に範囲系の派生スキルが取れれば、もっと効率良くなるんだけどな」
「俺は~、店売りの盾5個買ってきて正解だったよ~。もう1個目の盾、赤ゲージで壊れかけてるもん~」
“トレイン”というのは、後衛職である俺が弓や弱めの魔法で敵を小突いて、多くのMOBを引き連れて集めることだ。効率よくレベリングできる一方で、悪用すれば、トレインした敵を他プレイヤーに押し付けて処理させる、いわゆるMPKにもなる。このゲームで実際に遭遇したことはないが、ネトゲ用語としては有名で、当然マナー違反なので嫌われる行為だ。
「基本的にこのゲーム、メインクエストとか無いみたいだし、クエストやらずにレベル上げだけして、簡単に俺TUEEEやりたいんだよな~」
ランデスは、ニートの特権・時間を活かして最速レベル上げを目指すタイプのガチ勢。面倒なクエスト進行なんか、性に合わないんだろう。
今日のプレイが終わる頃には、たぶん俺たち三人の進行度にも差が出てくると思う。まあ、みんなマイペースでやってるし、それが心地いいんだけど。
「多分、あそこに見える狼の群れが例の魔物たちだな。……ほら、近くにクエストマーク出てるおっさんがいる。受けてくるわ」
このゲームの便利なところは、パーティーでのクエスト受注がリーダー一人だけで済むこと。受注から報告まで一人でOKなので、かなり楽だ。
さっきの素材集め系クエストも、三人でやった方が圧倒的に効率が良かった。面倒なクエストが出たら、素直に手伝ってもらうのが一番だ。
「た……助けてくれぇ! あそこの狼の群れを倒してくれ! 奥には親玉もいるみたいで、エリルの村の兵士たちが応戦してるんだ!」
へぇ……序盤から中ボスクラス? 時間固定POPのMOBかもな。よくわからんが、とりあえず受注。
【クエスト:ウルフの群れ討伐】
ついでに、周囲の敵に気づかれないように端を通って、向こうにいる兵士のクエストも受けておいた。
【クエスト:キングウルフの討伐】
「よし、ワンワンの群れを討伐するぞ~! お~!」
「……無駄にテンション高いな。でもまあ、こういうイベントがリアルスケールで展開されると、臨場感あってちょっとアガるのはわかる」
「俺らよりレベル高そうだから、とりあえず数体ずつ集めてきて~。死なない程度にね~」
数えてみたら、全部で12体。全部一気に釣ったら(MOBを集めることを“釣る”とも言う)たぶん即死だな。4体ずつ、3回に分けて倒すのがベストか。
装備を杖から弓に切り替え、通常攻撃でウルフに一発入れる。3匹で1グループだったようで、3匹が俺に向かって走ってきた。
「3匹で1グループ、それが4つだな。つまり全4戦、ってことでよろしく」
釣ってきた3匹に対して、ランデスが【雄叫び《シャウト》】と通常攻撃で、見事に敵のヘイトを全部引きつけ、絶妙な位置で固めてくれる。
「ヘイトは全部こっち向いたよ~。定期的に叫ぶから、好きに殴っちゃって~」
ナメタはトリッキーなスキル構成で、単体攻撃が得意。俺は魔法スキルに範囲攻撃を多く取っていて、まとめて削る係だ。
一応、簡単に取れる回復スキルは全員が覚えている。あくまで気休めだが、非常時には役立つ。
「ナメタ、MPは温存しててくれ。俺が全体攻撃で一気に片付けるわ」
そんな感じで、15分ほどでウルフの群れを討伐完了。俺たちのレベルは16に到達。思ってたよりぬるいな、このゲーム。
とはいえ、敵のレベルは18。ランデスの盾が優秀だったからこそ勝てたが、前衛がポンコツなパーティーにだけは入りたくないと再認識した。
「ナイス盾、ランデス。さすが本職前衛、動きが上手いわ」
「そうでもないよ~。とりあえず次のキングウルフ戦は、レンちゃん、ちゃんとバフ取ってな~? ダメージは俺とナメタが出すし~」
「うん、防御アップのバフだけでもいいから、取っておいてくれ。攻撃バフは最悪なくてもいい」
彼らの言うことはもっともだ。次のボス戦では、周囲にウルフがいた場合、ヘイト管理が一気に難しくなる。だからこそ、俺の範囲攻撃は控えるべきだろう。
代わりに、俺の役目はバフを撒くバッファーと、回復役のヒーラー。地味だけど重要なポジションだ。
「さぁ、ワンワンキング、倒しにいこっか~!」
単語帳
POP モンスターが現れる発生するといった意味
トレイン 大量のモンスターに追われてる状態のこと、今回はあえて利用して効率的に倒している。基本迷惑行為なので過度なトレインはやめようね!
釣る モンスターや人を誘導するときに良く用いる単語




