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03 幸せの1コマ(完)

 最終回です。放置の期間が10日以上になったため、私の発想の限界ということで完結させることにしました。

 3年が経ち、三ノ宮しおりは星森高校を卒業した。

 色々あったが、しおりは一二三と友達以上、恋人未満という関係を5年続けている。

 今日も、しおりは一二三の部屋で携帯ゲームを遊んでいた。


「先生。しっぽ切って」

「あいよー」


 呼び方は卒業した後も「先生」だ。

 しばらくして、一二三が3D酔いしたと言い出す。


「おじさんっぽいなぁ」

「いやいや。おじさんですし。お寿司」

「はいはい」


 しおりは一二三をなんとなく眺めた。

 あ~、と言いながら目を揉む姿は、どこから見ても冴えないおじさん。

 初めて一二三の部屋で2人きりになった時は警戒したが、一二三から迫ってくるようなことはなかった。

 二十歳になり、酒の勢いでからかってみた時もあった。

 かなり動揺したのが面白くて、今でもたまにやる。

 しおりにとって、一二三は親戚の人というか、年の離れた兄のような感覚に近い。

 今まで出会ったどの男性よりも、気楽で接しやすかった。


「コーヒー淹れるけど、三ノ宮も飲む?」

「お願い」

「あいよー」


 一緒にご飯を食べて、テレビを見て、ゲームして。

 これから先も、一二三とはダラダラと長い付き合いになりそうだ、としおりは感じた。


(先生って『いて当たり前の人』になっちゃってるなー)


 人の好き嫌いが激しい自分にしては、珍しいこともあったものだ。

 これから先、何人そのような人間に出会えるだろう。

 しばらくぼうっとした後、しおりはゲームの電源を切った。

 コーヒーの香りが漂う中、まあいいか、と少し投げやりな気持ちで話しかける。


「先生。嫌なら聞かなかったことにして欲しいんだけど。私をお嫁さんにしない?」


 一二三はバッと振り返った。

 コーヒーサーバーの中で、コーヒーがゆらゆらと揺れる。


「え? へ? マジ?」

「嫌なら別にいいけど」

「え、いや、その。急にそんな言われてもね? ほら」

「何がほらなのよー」


 盛大にキョドる一二三とは逆に、しおりは冷静に「これは押せばいけそうだなー」と思った。

 それから3年後、2人は結婚し、子供も産まれた。

 病院のベッドで、まだ産まれて間もない赤ん坊を抱きながら、しおりは一二三に尋ねる。


「先生。この子の名前、決まった?」

「あの、しおりさん? 周りの方がすごい顔で見てくるので『先生』は止めてくれませんかね? あなた、ただでさえ童顔で昔とあんまり変わらないんだから」

「えへへ」

「えへへ、じゃねーよ。あ、お隣さん。生徒と教師のイケナイ関係とかじゃないんで、ナースコールから手を放してくれませんかね?」


 しおりは思わず笑った。

 そんなしおりを見て、一二三はやれやれと頭を掻く。

 2人の生活はまだまだ続くが、それは平凡で、それなりに幸せなものであることを、ここに記しておく。

 削除することも考えましたが、教訓として残しておこう、という謎の結論に至り、書けないまま野ざらし状態が続いてしまいました。せめて最後はハッピーエンドにと思い、このような結末にしました。


 ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

 この話を書きながら「恋愛とかも書けたら面白そうだな~」と懲りてない自分ですが、もし見かけることがありましたら、読んで頂けたら幸いです。

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