02 ゆるふわ算数・数学同好会
「はあ、次の授業は数学か。やだなぁ」
二階堂あずさは星森高校1年生。
中学の頃から数学が苦手になり、ずるずる今に至る。
「まっ、いいじゃん! 別に将来使うわけじゃないし!」
友人があっけらかんとした声で励ましてくれる。
「それにどうせヒフミンだし。間違えても怒られないから楽勝っしょ!」
「それはそうだけどさ」
あずさは実は、密かに克服したいと思っていた。
だが、別にこれといって勉強するわけでもなく、できたらいいなあと願うだけにとどまっている。
そんな彼女の目に、掲示板に貼ってある勧誘チラシが目に入った。
『ゆるふわ算数・数学同好会』
(ゆるふわ?)
なんだかハードルの低そうな同好会だなとあずさは感じた。
だが、もしかしたら自分の苦手意識を克服できるかもしれない。
何よりなんだか緩そうだし!
よく分からないテンションになったあずさは、放課後さっそく覗いてみるのだった。
~放課後~
同好会の部室を訪ねると、ヒフミンこと五十嵐一二三が1人で読書をしていた。
あずさに気づいた一二三は眠たげな顔を上げる。
「なんか見た顔だな。1年だっけ?」
「あっ、はい。二階堂あずさです」
「そっかそっか。見学か?」
「はい! 私数学苦手なんです。できれば克服したいなーって」
「あー。俺も苦手だと上手くなりたいって思うときあるよ」
一二三はあずさに席に座るように勧めた。
部室を見回すとあずさが使ってる教科書や2年生、3年生で使う教科書、他に小学校や中学で使った見覚えのある教科書まであった。
「先生」
「ヒフミンでもいいぞ?」
「いやいや、さすがにそれは。先生でいいですよ」
「そっか。どした?」
「同好会って何するんですか?」
「何を期待してるのか知らないけど、大したことはしてないな。宿題やったり、数学っぽいクイズ解いたり、ちょっとした実験したり、地味なゲームしたりかな」
「実験、ですか?」
実験というと生物・化学のイメージがある。
「この間はサイコロ千回振って実際どうなるか調べたな」
「あ! 6分の1になるかですね?」
「そうそう。俺が1を1番出した奴にジュースおごるとか言ったせいで、ひどい結果だったけど」
「どうなったんですか?」
「途中からほとんど1しか出なかった」
あずさは呆れた。
「盛り上がったよ?」
「6分の1にならなきゃダメじゃないですか」
「そう堅いこというなよ。ゲームはこれがいいかな」
一二三は碁石を取り出した。
「21個ある。順番に取って、最後の1個取ったら負けな」
「じゃあ私が先行で20個取ります」
「それはあんまりじゃない? 3個まで」
あずさは負けた。
「先生、もう1回!」
「けっこう有名なゲームなんだけど、知らないかー」
「もう1回!」
「はいはい」
あずさは負けた。
「今度こそ!」
「待って待って。これ必勝法あるから。二階堂が後攻して。で、俺が1個取ったら3個。2個取ったら2個、3個とったら1個とる。これで勝てる」
「ほんとですか? 嘘つかないでくださいよ!」
あずさは勝った。
「しゃあ!」
「どんだけ勝ちたかったんだお前さんは」
「もう1回やりましょう」
「ま、また今度な。うちの同好会の活動はなんとなく分かったんじゃないか?」
「分かりました。あ、これ借りていいですか? ちょっと友達とやってきます」
「いや、それはちょっと」
「すぐ返しますね!」
あずさは碁石をひったくって行った。
「あれ? あいつ1個落としてる」
~屋上~
三ノ宮しおりは空を見上げていた。
金髪で目つきが鋭いので誤解されやすいが、彼女はハーフなだけである。
「ミーヤ! 勝負しよ!」
「あずさも好きだね。ギャンブルはホントやらないでよ」
あずさは負けた。
「あれ? ちゃんとヒフミンの言うとおりにしたのに!」
「ヒフミン? 誰それ」
「数学の先生。さっき必勝法教えてもらったの」
「あたしをカモにすんなよ……」
しおりは呆れた。
「で? どうやるのそれ」
「教えたら私が勝てなくなるじゃん」
「ヒフミンってのが嘘言ったか考えるだけ」
「うーん」
散々悩んだ末、あずさはコツを教えた。
しおりはしばらく考えた後、ぽんと手を叩いた。
「あんたどっかで1個落としたんだよ」
「げ。どうしよう。これ借り物なんだけど」
「マジかよ……分かった。そんな目で見なくても探すの手伝うから」
~ゆるふわ算数・数学同好会の部室前~
「うう、どうしよう。見つからなかったよ」
「なんであたしまで謝らないといけないんだよ」
「お願い! 一緒にいてくれるだけでいいから!」
ガラッ。
メガネをかけた男子生徒が出てきた。
「あ、もしかして入部ですか?」
「はい!」
「え?」
(ごめんミーヤ! 入部する代わりに許してもらお!)
(どういう理屈だよ……ダルかったら辞めるからね)
(ありがとう!)
入部届けを書いている2人を見て、一二三は碁石のことは黙っておくことにした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
破天荒が息してない気がします。
すみません。




