獣
逃げろ逃げろ
靴擦れした足も気にせず、走り続ける。
絶対、あいつに捕まるわけにはいかない。
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ
逃げろ逃げろ逃げ「おい。」
後ろから腕を掴まれた。
怖い
「なぁ、分かっているよなぁ、瑠璃。」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
急に呼吸しづらくなって、目の前が暗くなる。意識がなくなる前、喉に鋭い痛みがはしった気がした。
瑠璃、俺の愛情が伝わるようにもっともっと愛してやろう。全身に俺の愛を刻み、逃げるなんて考えさせない。お仕置きは何にしようか。監禁なんて生ぬるい。歩けなくするのはどうだろう。
男は満足そうに女の首に噛み付く。流れた血を獣のように啜ると、女を連れて何処かへ行った。
いつから私は間違っていたのだろう。人の愛を知らない獣に優しさを与えたのがいけなかったのだろうか。それとも、あいつに正しい愛しかたを教えてやればよかったのだろうか。あいつの愛しかたを受け止めていたらよかったのだろうか。
これからの私とあいつの生活に幸せがあるかどうかは神のみぞ知る。