プロローグ
エルドクラフト王国
・歴史上唯一世界を統一した国。この国に関する英雄譚は現在でも多くの人々によく知られているが、記録が劣化しているため、現在でも世界を統一でき、約200年間も統治できたのかが謎である。王国であるため王がいたはずだが、歴代の王の記録は発見されていない。その多くは謎に包まれているがその謎は神話の時代、つまりは神代の存在証明の鍵であると言われている。
・主な英雄譚
■■の■神 (※)
狂信の聖母
大罪王
エルドの黒王子 など
(※)■の部分は解読不可
エルドの黒王子
・エルドクラフト王国にいたとされる王族。伝説によると黒髪黒目で整った顔をしていたという。とても賢く、魔法に優れていた。彼の逸話の多くは、女性に関するものでありながら結婚したという話は無い。彼の事について書かれたとされる石碑には"彼の者多くを為し、多くを救い、そして多くを捨てた。初恋は諦め、本当に愛した者達を失い、なお立ち上がる姿は正に英雄。彼の者の名は黒王子■■■■■“と刻まれている。その為、彼が理想の男性とする女性も多い。
はぁ。僕はため息をついて本を閉じる。まったく教授も悪い人だ。まさか絵本の中の英雄について調べてこいだなんて。それにしても
「黒王子ねぇ、ホントどんな人なんだろう。」
「とてもいい子だよ。」
エッと思って後を振り返る。いつの間にか人がいた。
「えっと。ごめん、驚かせちゃったかな。」
どうやらいい人らしい。僕は首を振って否定した。
「君、黒王子なんて調べてどうするんだい。」
そう問われて、僕は事情を話した。なんとなく誰かに話したかったのかもしれない。
「大変だね。」
彼はいつの間にか僕の正面の席に座っていた。
―ああ、ホントに大変だよ―
そう言おうとした。でも言えなかった。彼の姿を見たとき体が硬直した。白。
「それじゃあ僕が手伝ってあげるよ。」
彼は満面の笑みを浮かべて言った。いや、実際は深く被ったフードで顔は見えないのだが。ただそんな顔をしている。そう思えるほど目の前の少年の声は弾んでいた。
「じゃあ君に、真実を話そう。」
そう言い、彼は誰も知らない英雄譚を語り始めた。