03ネクロマンサー
「殿軍をまかす、勇猛果敢であった君の父の名に恥じぬよう奮闘してくれ!」
族長代理のキヌオンが、セラに命じた。
そしてすぐに南の山を抜ける道へと出立した。
種族の血を絶やさないという理由かつ援軍を要請するという理由で、キヌオンや老将タタオンは兵1500人をつれ、非戦闘員の村人を見捨てかなり遠方のバーバリアン族の町に撤退することを決した。
残された1000人はセラが指揮することになった。
「ここから5日はかかる、援軍が間に合うはずもないよ~」
ナナリーは憤慨して叫ぶ。
「それに種族の血を絶やさないためなら非戦闘員も連れていくのが筋だよね~」と絶叫した。
「ふっ」
楽しそうな声でセラが笑う。
「笑ってる場合ですかっ」
「まあ、南の山は非戦闘員のお年寄りや子供にはキツイし、兵1000を任せてもらえるならなんとかなるよ」
普通に考えて16000弱の敵と1000では、いくらなんでも相手にならない、砦に籠城するにしても3倍以上の敵には持ちこたえられないのが常識だ。
まして精鋭として知られるエルフが加わっていれば結果はみえている。
元の2500の兵でさえ相手にならないだろう。
「1000だと無理でしょ!」
「ナナリー、村の非戦闘員の子供、そうだなあ8歳くらいがいいかな、5人ほど連れてきてくれないか?」
「まさか、少年少女兵!?そんなのかわいそうすぎるよ~」
「いや、そのまさかだよ、時間がない急いで、あと父の軍服と剣を持ってきてほしい」
◇
帝国の将タキタは、この戦を楽観視していなかった。
「エルフ隊は矢を放て!」
「うおおおお」
小一時間ほど小競り合いのあと、帝国軍は力攻めをせず兵をひいた。
2度も退けられた修羅族の村、前回の指揮官は更迭され、高級副官であったタキタが指揮官に任命されていた。
タキタは慎重かつ冷静であった。
ごり押だと、前回のように死兵となった敵が突撃して味方に大きな被害が出るのを懸念していた。
「タキタ指揮官、修羅族の兵をとらえました」
「殺せ」
「しかし、まだほんの子供で・・」
「子供でも、悪魔の手先だ、遠慮はいらん」
「はっ」
◇
ネクロマンサーの少女ホーリーは、南の山を登りおえたところで、身を隠した。
修羅族の兵が向かってきたからである。
スケルトンを音もなく地中に戻し、ケルベロスの背からおり気配を消した。
ネクロマンサーとは、種族ではなく職業である、なれる種族はいろいろだが、人間が死霊魔術を極めネクロマンサーになることもあれば、エルフがなることもある。
ちなみに、この世界でもホーリーは神聖という意味の名を持つ。
皮肉なものだ。
そしてホーリーは、魔族のヴァンプといわれる種族であった。
ヴァンプとはヴァンパイアの貴族階層のことを指す言葉であるが、実際にはヴァンプとヴァンパイヤでは少し種族がちがうらしい。
亜人側で例えるならヴァンプがエルフ、ヴァンパイヤがハーフエルフという関係らしい。
「セラはと?いないようね??」
「神聖ちゃん、どうするの?」
ケルベロスは、親愛かつ嫌味でホーリーの名を呼ぶ。
「ひとまず、村にむかいましょ」
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