第十七話「特別な日」
「二人とも、目を開けていいぞ」
僕は管理者に言われてゆっくりと目を開けた。
真っ先に飛び込んできたのは……ストップウォッチのさし示した、その数字。
「あ……」
さんじゅう、びょうだい……!
ストップウォッチの数字は、30秒01をさしていた。
おねーさんの数字は……30秒、02……!!
「や……やったあああああっ!!」
「やったね、アキラ君っ!!」
僕達は思わずはしゃいでしまった。
これでおねーさんは記憶を消されずに済むし、自由の身だ。
「ふむ。確かに試練はクリアーだ。無罪放免としよう。しかし——」
「しかし、何だよ?」
「里を抜け出したことについては、だ。全ての罪を赦すとは、私は言っていない」
「そんな……そんなの汚ないぞっ! 僕達は試練クリアーしたんだ、情状酌量の余地があったって……」
「封印指定者・結名よ。お前に今問われている罪は『契約時に自ら儀式の口づけを行った』ことだ。本来儀式は契約者たる男のほうからするものだ。緊急を要したとはいえ、お前はこの順序を間違えてしまった。これも掟違反であることに変わりはない」
「お願いです。記憶を消すのだけは……!」
おねーさんの体は小刻みに震えている。
管理者は腰に差していた長剣を抜いた。
「何をする気だっ!?」
「知れたこと。処罰を下すだけだ」
大変だ、おねーさんを守らなければ……でも。
体が、動かない……!
さっき使った拘束魔法だ。口も動かない。
おねーさん、逃げてくれ……!
そして無情にも魔法管理者はその剣を……振り下ろしたのだった……!
「おーきーろー、明良兄ぃ! あーさーだーぞー!」
僕は強引に布団を引っぺがされた。
「折角冬休みになったんだから、もう少し寝かせてくれよぉ」
「だーめーだーよっ!」
「ふごおっ!?」
妹は僕の脇腹に鋭い蹴りを叩きこんできた。
「ごふっ、ごふっ! ほ、本気で蹴りやがった……!」
「そう? 今のはせいぜい四割くらいの力しか込めてないんだけどなぁ。それより、今日は『大事な用事』、あるんでしょ?」
そう。今日は僕にとって……いや。
僕達にとって、特別な日なのだ。




