出会い 1
ライナンは川辺に座って、川の流れを眺めていた。父の死、母の病、妹たちの面倒、全てが彼女の心を曇らせ、荒らしていた。ライナンの父・リファーは、先の内乱で戦死した。その知らせを受けたのは、内乱が収束した一週間後のことである。
ライナンの父親は、内乱が終わったことを知らなかった敵軍の兵士が乱射した銃弾によって殺された。彼は戦死ではなく、事故死として処理された。そう教えてくれたのは、リファーと同じように撃たれた兵士の一人・カリトである。彼は腕と脚に銃弾を浴びたが、幸い一命はとりとめた。そして同じ部隊で、親友のように接していたリファーのことを気に病み、彼の家族に事情を説明しに来てくれたのだ。しかし、それによって母は心の病に罹ってしまった。ライナンの家族は、内乱によってバラバラになった。
「ずっとそこにいるね」
ライナンが振り返ると、精悍な顔つきの青年が立っていた。瞳の色は深い緑色。ライナンと同じ部族のようだ。内乱は終わったとはいえ、まだ彼らの中には内乱の記憶は深く刻まれており、部族間での諍いは絶えない。また、同じ部族でないと安心できないという非戦闘員も多いのである。
「ええ」
「何を見ているの?」
青年は自然な足取りでライナンに近づくと、隣に腰をおろした。
「川の流れよ」
川は静かに流れている。先日の大雨で水かさは増しているが、流れはいたって静かなものだ。すると、青年から空腹を知らせる音が聞こえた。
「ハハッ、朝から何も食べてないから…」
「そうなの。うちに来る?何か食べるものくらい出せると思うわ」
ライナンはそう言っている自分に驚いていた。普段のライナンならばそんなことは言わないからだ。ライナンから誘いを受けた青年は、パッと顔を輝かせて何度も頷いた。
「ありがとう!あぁ俺、アレックスっていうんだ!よろしく」
「私、ライナン。よろしく。うちは部族からは少し離れたところにあるの。こっちよ」