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 この不良学校での生活において注意しなければいけないことを僕なりにまとめてみる。

その一、あんまり目立たないように、目を付けられないように。

その二、いつも笑顔で。にっこにっこにー。

その三、だれにでも優しくしましょう。

・・・なんか、その一以外小学校の学級目標みいたいになった。と、とにかく死なないように頑張ろう、うん。


 まぁ、現実から目をそらすために適当なこと考えてただけだけど。


 今、俺の目の前には地獄絵図がひろがっている。赤、青、金色、その他もろもろ。カラフルなのは花壇の花なんかじゃなくてこの教室にいる生徒たちの頭だったりする。そして、どの生徒も校則の存在をダイナミックに無視してパーカーやらアクセサリーやらを身につけている。


 こっえぇぇぇぇっっっ!!!いやいや、これはマズイって!一般ピーポーの僕をこんな珍獣の檻みたいなとこに放り込んでどうするつもりだ。黒板の前に立ってるだけで、死にそうだもん。もう、死ぬよ?


「え~、今日はてんにゅうせーが来てる。はい、じこしょーかいしなさい。」

犬飼先生頼むから空気読んでくれ。今、絶対しゃべれる状況じゃない。むしろ、口開いたら殺されるだろ、これ。

 とりあえず、犬飼先生にヘルプを求めるべく必死にアイコンタクトをとる。すると、犬飼先生は、何かに気付いたように親指をぐっと立て、微笑んだ。


 ちっげぇぇぇっっっ!!!『ぐっ』じゃねぇぇっ!!そーゆうの求めてないから!いい顔で笑わなくていいからっ!


 もういい。どうにでもなれ。あ、うそうそ。やっぱまだ死にたくない。ここは、僕のスキル平凡を生かして、無難な自己紹介を笑顔で。


「高坂幸太です。この学校のことはよく知らないので、迷惑をかけることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

「はい、よろしくー。みんな、仲良くするように~。」


 よ、よし。とりあえず、自己紹介はクリア。拍手の一つも返ってこなかったが、計算内。いや、ホントに。断じて傷ついてなどいない・・・。


 僕の席は、窓際の一番後ろというなかなかの好ポジションだった。となりの席で赤髪のヤンキーが寝ているのが少しこわ・・・いや、気になるが。前の席には誰も座っていない。きっと休みだろう。それか、サボりか。



「んじゃ~、まぁ、授業はじめっかぁ。はい、数学。きょーかしょ34ページ開いてー。」

 犬飼先生、意外に真面目に授業とかするんだな。よっし、僕も教科書を・・・。教科書を・・・。


 教科書持ってきてねぇぇっ!!そうだ、こっちの学校でどの教科書使ってるか分からないからって、用意してなかったんだ。・・・やっちまった。どうする僕。

選択肢一、持ってるふりをする。

選択肢二、隣で寝ている赤髪不良に借りる。

選択肢三、自殺する。

 いや待て、そんな深刻な事態じゃない。普通に持ってるふりでごまかせば

「高坂幸太くーん、早く教科書出してー。忘れたなら、隣のヤツに見せてもらえ~。」

犬飼ぃぃぃっっ!!マジ空気読んでくれ、頼むから。そして、なぜいつもフルネーム呼びなんだ。いや、コレは今は関係ない。


 しかたない。とりあえず声かけるだけ。大丈夫、笑顔で、にこやかに。眠っている赤髪不良の腕をちょんちょんとつつく。


「・・・ん。何だ。」

「あ、起きた?あのさ、僕、数学のまだ買ってなくて、えっと、よかったら見せてくれないか?」

 よっしゃ、言えた!かなりどもったけど言えた!あ、笑顔笑顔。だが、赤髪不良は驚いたようにこちらを見ている。

「えっと、どうした?」

「お前、俺がこわくないのか・・・?」


んん?どういうことだ?この台詞どこかで聞いたことあるぞ。そう、一昔前のマンガやアニメなんかでテンプレヤンキーがよくこんな台詞を・・・。

まさかコイツ、マンガなんかによくいるタイプの周りに怖がられてぼっちになちゃった典型例か?だとしたら話は早い。


「こわくないよ。出会ってすぐなのに、こわがるなんておかしいだろ?」

嘘である。ホントはちょっとこわい。当たり前じゃん、ヤンキーだし。てか、怖がられたくないならその赤髪やめろし。


内心そんなことを思っていたが、なんだかんだでその言葉はやっぱりテンプレヤンキーの心に響いたようで、教科書を見せてもらっている間中、僕は隣からのキラキラした視線に耐えなければならなかった。



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