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今、僕の目に映っているモノ。それは、所々割れた窓ガラス。そして、壁一面のペンキとスプレーによる落書き。このある意味芸術的といえる風景が広がっているのは、実は僕の転校先である平沢高校の校舎だったりする。
・・・帰りてぇぇぇっっ!!ヤバイ、底辺高校なめてたわ。てか、ここまで酷いともはやただの不良学校じゃねーか。クソッ、親父のヤツだましやがったな!行きのバスの中で、運転手のおじさんに「アンタも気の毒に・・・」とか言われたことの意味が今やっと分かったわ。
「おー、お前がてんにゅうせーかぁ?」
棒立ちになっている僕に話しかけてきたのは、いかにも頭の悪そうなホストだった。
「なぜ、学校にホストが・・・?」
「は?ほすと?い、いや俺どう見てもほすとじゃねーだろ。」
いや、360度どこからどうみてもホストだろ。
金髪にジャラジャラしたアクセサリー、スーツのボタンを多めに開けたコイツをホストと呼ばずしてなんと呼べばいいのだろう。
「まぁ、いいや。俺は犬飼まよい。お前のクラス、2年1組の担任だから。よろしくな~。」
・・・は?担任?いやいや、ありえないだろ!担任うんぬんの前になんでこんなチャラチャラしたホスト野郎が教師なんてやってんだよ。
「お~い。どーした?まぁ、とりあえず教室いくぞ。えーと、高坂幸太郎クン?」
「『郎』は余計ですよ。仮にも教師なら、転入生の名前くらい覚えといてください。」
「あぁ、わりぃ、わりぃ。人の名前覚えんの苦手でなぁ。」
『仮にも』にはつっこまねぇのかよ。はぁ、こんなんでホントに大丈夫なのか?俺のスクールライフは。でも、まぁ、教室に行かないことには何も始まらないし。
「犬飼先生、早く教室に案内してください。」
~犬飼まよいside~
「てんにゅうせー、てんにゅうせーはどこだぁ。」
今日は俺の受け持つクラスに転入生が来る日だ。こんな学校に転入生なんてめずらしーから、少しわくわくしていたり。
お、前方になにやら突っ立ている学生を発見。ちょっと声をかけてみる。
「おー、お前がてんにゅうせーかぁ?」
否定しないところを見るとどうやら正解らしい。でも、どんなすげぇヤンキーかと思えば、結構ふつーのヤツだったなー。
「なぜ、学校にホストが・・・?」
前言撤回。教師をホストと間違えるなんて結構変わったヤツだった。
とりあえず、教室までつれていくことにする。名前は確か高坂幸太郎だったか?いや、ちがったっけか?
まぁ、いいや。うろ覚えの名前を呼んでみる。
「『郎』は余計ですよ。仮にも教師なら、転入生の名前くらい覚えといてください。」
あちゃ~。やっぱり違ったか。でも、俺を教師として見てくれたことは結構うれしかったりする。ちゃんと敬語だし。意外と真面目なヤツらしい。うちの生徒にも見習ってもらいたいもんだなぁ。
そんなことを思っていると、てんにゅうせーはスタッと俺の前に出た。
「犬飼先生、早く教室に案内してください。」
・・・え、犬飼先生?うっわ、先生なんて初めて呼ばれた。うれしすぎる。高坂幸太、今日から俺の大事な生徒だ。よっし、なんかやる気出てきた。なんだか、楽しいスクールライフになりそうだ。