優しさ
帰り道
二人は同じ傘に入って
唯の自宅に向かっていた
唯「…ねぇ萌さん」
萌「んー?」
唯「…萌さんは
うちのこと気持ち悪いとか思わんの?
女の子好きやし
自傷癖あるし」
萌「別に唯は唯やし
自傷癖ある人らいっぱいおるから
何とも思わんよー」
唯「…そっか」
唯は少し安心していた
萌「それにそんなことで
唯のこと嫌いになるわけないよ」
唯「萌さん…」
唯は自分より身長の高い
萌を少し見上げた
唯「…そんなこと言われたら
惚れるやん(笑)」
萌「別に惚れてもえぇでー(笑)」
唯「冗談でも
同性愛者にそんなこと言ったらあかんで(笑)
本気にする人もおるんやから(笑)」
萌「…別に本気にしてもえぇよ」
ボソッと呟いた
唯「…え…?」
少しだけ唯の足が止まった
萌「…ほら早くいくよー」
萌は少し動揺している唯を引っ張って
自宅まで急いだ
自宅
萌「めっちゃ濡れたねー」
唯「タオルとってくるから
適当に座っといてっ」
萌「わかったー」
唯は脱衣所へタオルを取りに行って
戻ってみると
萌は唯のゲームをしていた
唯「萌さん
はい
タオル」
萌「んー」
萌はゲームに必死で軽く返事をした
唯「(今帰ってきたばっかりなのに
もうゲームか)」
唯は萌をそっとしておいて
ベッドに寝転がり
携帯を弄っていた
そしていつの間にか眠っていた
唯「…ん…」
目を覚ましたのは
一時間後だった
左腕に重みを感じ目をやると
唯「!!」
唯の左腕を腕枕にして
萌が寝ていた
唯「…(これはどうするべきか…」
唯は少し悩んで
萌が起きるまでそのままにしておくことにした
そして数分後
萌「…ん~…」
唯「(起きたかな?)
萌さん?
起きた?」
萌「…おきたぁ…」
萌は寝ぼけた様子で
少しだけ体を起こした
唯「無防備すぎ
襲うぞ(苦笑」
唯は少し冗談交じりで言った
萌「唯はそんなことできんよ(笑)」
唯「よくお分かりで苦笑」
萌「…ねぇ」
唯「なに?」
萌「萌じゃあかんの?」
唯「え?」
萌は少し唯に近づいた
萌「唯のこと全部受け止めるから
苦しませんから
萌にせぇへん?」
唯「っ…」
萌の目は真剣だった
そしてその目に唯は少し戸惑った
いっそのことすぐにイエスと答えてしまえば
自分の好きな人
目の前の相手と
結ばれるのだが
唯は悩んだ
そして萌に
唯「…萌さんのことは
ほんとに好き
でもその萌さんを傷つけるかもしれない
苦しめるかもしれない
それでも萌さんは
うちとおってくれる?」
萌「おるよ」
萌は即答した
そしてその返事に安堵したのか
唯の目から涙が出た
萌「約束する
唯と一緒におるって」
唯は萌に触れるだけのキスをした
目の前の愛しい人を
壊してしまわないように




