表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Initialize/ZERO -そして少女は廃都に降り立つ-  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/76

Run――実行⑦




 誰よりも目立つ機体、太陽の光を受けて金色に輝く天川月乃のタランテラは、二刀の(ブレード)を引き抜いて最前線でドレッドノート級の装甲を剥がし続けている。カスタマイズされているとはいえ、それを差し引いても凄まじい動きだ。

 戦闘慣れしている。メタルの動きを熟知しているんだ。


 九年前のあの日、早見士郎とその機体キャスケットが曲線の動きで成し遂げたドレッドノート級の破壊を、天川月乃とタランテラは、対照的に鋭角に、まるで変則的な高速ダンス(タランテラ)を踏むかのような動きで行おうとしている。


『ショット。多連装ロケット砲(カチューシヤ)装填(リロード)開始』


 それを援護しているのが、ドレッドノート級から距離を取り、グライドを止めることなく位置を小まめに変えながら様々な銃器を撃ち続けているリサのベルベットだ。

 声紋認証による弾薬装填(リロード)を、絶え間なく行っている。

 タランテラを狙ったミサイルを狙撃銃(ドラグノフ)で確実に撃ち抜き、機体をグライドさせながら次々と赤外線探知ミサイルを放ち、ドレッドノート級の側面装甲を削り続けている。ツキノさんが主に狙っているのは、リサが破壊した装甲部分だ。


 それにしてもリサのやつ、なんて火力だ……!


装填(リロード)完了。ロック、ロック、ロック、ロック、ロック、ロック……ショット』


 轟炎と爆発、全長百六十メートルもの巨大なドレッドノート級が揺らぐほどの砲撃だ。

 他に目立つ機体といえば、バックグライドで短機関銃(イングラム)を撃ちながら中距離を保つ、まるで血液のような真っ赤な機体か。特殊クラスにはいなかったやつだ。


「拡大」


 ネイキッドがぼくの視界をズームして真っ赤な機体を映し出し、主要諸元の分析結果を視覚に表示してゆく。


「Dividead……ディヴァイデッド……っ!? 藤堂正宗か……っ」


 食堂でリサに絡み、同じチームの女子生徒を平気で殴りつける、あの凶暴な男――! 凄腕だとは聞いていたけれど、初陣ですでにあの動きとは……!


 ドレッドノート級の機関砲を緩急をつけた動きで回避して、装甲の隙間を狙って短機関銃(イングラム)を撃ち、炎をかいくぐって近づいては(アックス)を叩き付けている。


 だけど――。


「ダメだ……」


 あの山のような大きさのメタル、ドレッドノート級の装甲を削れる装甲人型兵器(ランド・グライド)はたったの三機。加えて味方の装甲人型兵器(ランド・グライド)は、秒間ごとに次々と破壊されている。


 たった一機のメタルにだぞ――!?

 甘かった。何人殺された? 早見士郎がひとりで倒したドレッドノート級と呼ばれるメタルで、これだ。


 絶望的な状況なのに、頭だけはますます冴え渡ってゆく。恐怖を感じない己の欠落に感謝したくなる。


『イツキ、まだ死んじゃいねえだろうなっ!?』

「生きてるよ!」

『よし。レギンレイヴからチーム内全機に通達。おれは今からある作戦のために戦線を一時離脱する。だからおまえらのサポートはできねえし、おれのサポートも必要もねえ。いいか、みんな。数分でいい。生き残ってくれ。あンのクソメタルヤローに目にもの見せてやる』


 レギンレイヴの姿はない。けれど、言葉の意味を考えるとかマサトを捜すだとか、そんなことに費やしている時間も余裕もなさそうだ。


『タランテラ、了解。何するつもりか知らないけど、ムチャはダメよ、マサト』

『ベルベット、了解』

「ネイキッド、了解した」


 よし! こっちもやれるだけやってやる! こんなところで殺されてたまるか!


 ぼくはビルの隙間でネイキッドのコクピットを開けて、未だ呆然と立ち尽くしたままの、薄桃色の装甲人型兵器(ランド・グライド)へと向かって肉声で叫ぶ。


「おい、パイロット! 生きてるか!」


 数秒後、エアーの抜ける音がして薄桃色の装甲人型兵器(ランド・グライド)のコクピットが開かれた。


「は、はい……」


 女子だ。それも見たことのある顔だ。

 パイロットの愛らしい瞳が、大きく見開かれた。


「あ……、食堂ではお世話に……」

「藤堂に殴られてたツキノさんの後輩か」

「はい。そ、その節は……い、いえ、今も危ないところを助けていただき――」


 側頭部で縛られた髪を左の肩に乗せて、少女が頭を下げた。


「挨拶はいい! あの程度のことなら何度だってやってやる! それよりも、まだその機体は動けるか?」


 その女子が一度すうっと息を吸い込んで、表情をやわらげた。血の気の引いていた顔色に、ゆっくりと赤みが戻ってくる。ちょっと赤くなりすぎているくらいだ。


「あ……う……、は、はいっ! 特進クラス一年! 成宮ルル及び、装甲人型兵器(ランド・グライド)キャンディフロス、問題なく作動します」


 成宮ルルにキャンディフロス。よし、おぼえたぞ。


「はは、綿飴か。機体名といい、機体色といい、呑気だな」

「す、すみません」

「ぼくらのチームにはツキノさんがいるんだけど、本作戦からはわけあって独立していて、指揮系統に入れないんだ。今の指揮は誰が執ってんの?」

「……藤堂正宗くんです」


 成宮ルルがわずかに言いづらそうに呟いた。


「……けれど、あれではダメ。みんな死んでしまいます……。彼は強いし頭もいいけれど、自分の機体を生かすための指示しか出さないから……。犠牲なんて関係なくて……」


 あのクソ野郎! どこまで自分勝手なんだ! てめぇのせいで何人殺されたと思ってやがる! 凄腕が聞いてあきれる!


「指揮権を二年の天川月乃に渡せって伝えられるか?」

「……ご、ごめんなさい。彼の作戦について何度も戦闘中に忠告したせいで、わたしは彼に通信から切り離されてしまって誰とも連絡が……。……今は一方的に指示を聞くことしかできません……」


 食堂での様子を思い出し、ぼくは頭を掻き毟った。

 だから成宮ルルは棒立ちになっていたのか。


「了解した。アンタは指揮回線を切って藤堂のチームを離れろ。ぼくのチームの通信周波数を渡すから動きを合わせてくれ。指揮は天川月乃だ。支援分析はできる?」

「はいっ、本懐です」

「頼む」


 ぼくらは同時に機体のコクピットを閉ざした。


「ルル、聞こえる?」

『問題ありません、えと……』

「イツキだ。機体はネイキッド」

『問題ありません、イツキ』


 同時に機体をグライドさせ、ぼくらは戦場へと飛び出した。

 さっきよりも黒煙がヒドい。戦場となった街も、味方も、もうボロボロだ。


「もうひとりの男がマサト、機体名レギンレイヴ。ツキノさんの機体はタランテラで、リサって女の子のはベルベット。それぞれ対面での自己紹介は後回しだ」

『おぼえました。行きましょう、イツキ』


 無線からツキノさんの素っ頓狂な声が聞こえてきた。


『ルル? その声は成宮ルルよね?』

『はい、ツキノ先輩。実戦はこれが初めてですが、精一杯サポートします』

『助かる! アンタの分析力があれば周囲への警戒を気にせず全力でやれるわ! てっとり早く頼んだわよ!』


 前方でタランテラが(ブレード)を振るい、巨大な装甲を叩き割った。瞬間、メタルの上部から吐き出された熱源感知ミサイルが、ゆっくりと空に舞い上がる。


 どこを狙っているんだ?


『キャンディフロスより全機。敵ミサイルは軌道を変更、報告終了後七秒で弾頭分裂、上空よりタランテラ付近に着弾。爆破範囲は半径三十メートル』


 ミサイルが発射された瞬間、成宮ルルが口早に告げた。


『……ベルベット了解。分裂前に迎撃する。――ショット』


 リサが静かに囁いて、遙か上空へと狙撃銃(ドラグノフ)を放った。空が真っ赤に染まった直後、炎と衝撃波が大地に降り注いだ。


 こいつはすごい! ツキノさんのお気に入りの後輩だけあって、めちゃくちゃ有能じゃないか!


 自機をロックオンされた場合は警告文が出るけれど、味方機のロックオンは分析支援型の後衛がいなきゃわからない。さらに今のようにロックオン前のものまで報せてくれるなら、生存率は飛躍的に跳ね上がる。


 それに、メタルがタランテラだけを狙って攻撃をしたってことは、それだけ天川月乃を脅威だと判断したってことだ。つまり、タランテラならばドレッドノート級を沈めることが可能かもしれない。


楽しんでいただけましたなら、ブクマや評価、ご意見、ご感想などをいただけると幸いです。

今後、作品を作っていく上での糧や参考にしたいと思っております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ