第一話「中2の話」
中2の夏、香奈が死んだ。
それは私達を360°回転させた。
私、相川桃、佐野香奈、角井巧、本田亜由香、持崎そう(もっちー)で幼稚園のときから仲良くしてたのに。
香奈が死んでから3ヶ月経った教室は、
私とあゆともっちー以外は笑っていた。
巧も。香奈は目立たない存在だったし、友達は私達だけだった。
でも、巧はちがう。それが言い訳にはならない。
たぶん、巧が一番傷ついてる・・・
「おーい!桃生きてる?」
巧がふざけた顔をして、話しかけてきた。
「うっさいな!」
よく人のこと傷つけておいて笑ってられるよね。
香奈の葬式の時、香奈の両親より泣いて、困らせるなんて。
でも・・・ほんとは解ってた。
巧は香奈が好きだって。
私は巧が好きなのに・・・・
巧は香奈が死んでから、耳にピアスをあけた。
巧が何考えてんだか解らない。ただのチャラ男。
巧は充分モテてるのに。何が不満何だか・・・
「てかっ!!」
私がそういいかけた時には、巧は涙目だった。
「ごめんな・・・」
巧はそういって私に背を向けた。
あああああ!!私はバカだ!!バカバカ!
一時間目数学。
どちらかというと得意なのに、
全然頭に入んない。
二、三、四時間目全部すらっと流してしまった。
来週期末なのに。
お昼はあゆともっちーと食べた。巧とは食べたくない。
もっちーは立派な男子なのに、全然男子とからまない。
あゆは明るい性格なのに、最近は笑わない。
話題を必死に考えたけど、
考えてるうちに、もっちーが食べ終わってしまった。
きずくと、あゆも私も。
・・・。
あゆの筆箱についた蛍のストラップが揺れる。
5人お揃いのヤツ。香奈のはもう燃やしちゃったけど。
小学校の卒業式の後だっけ、買ったの。
あの頃にはもう戻れないなぁ。
五、六時間目は何をやったかすら覚えてない。
帰ろう・・・。
教室にはあゆともっちーがいた。
5人組は全員、同じ住宅街。
香奈と私はお隣さん。だから5人は大体一緒に帰る。
今日はあゆももっちーも私も部活のない日。巧はいいや。
(あゆ=パレーボール部 もっちー=テニス部 巧=サッカー部
私=美術部)
よしっ!
「ねぇ。あゆ〜もっち…」
「なあ!おまえら」
巧!?邪魔された!!
「香奈の幸せってなんだと思う?」
「何それっ。少女マンガの台詞みたい。」
私は笑ってしまった。
でも、あゆももっちーも笑っていなかった。
「オレらが笑っていることじゃないの?」
その言葉を聞いた時、私は涙があふれた。
何かたまっていたものを流せた気がした。
古い台詞で、安っぽい感じだってわかってても、
涙は止まらなかった。
その日、4人で久しぶりにそろって帰った。
横に、香奈がいる気がした。