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悲しみの風の詩  作者: エンブレム
最悪の悲劇
2/3

第2話 連続殺人事件の被害者たち

 中原神社では中ヶ原の地名の由来となっていた神社であった。どうやら何かを祀っていたようだ。

「なあ、沙良。この中原神社では何を祀っているんだ?」

「これはね。竜神と女神を祀っているの。その竜神様はここ中ヶ原に平和を齎したと言われているの。そして女神様は中ヶ原に光を齎したと言われているよ。」

 中原神社では竜神と呼ばれる神と女神と呼ばれる神。かつて中ヶ原に平和と光を齎した2つの神があり、中ヶ原で大昔から祀られてきた。そのための神社がこの中原神社であった。

「なんかすごい神様だな・・・。」

「そうでしょ!?そうでしょ!?いいでしょ!?」

 大はしゃぎする伊理はとっさにピョンピョンとジャンプし始めた。


「あらら、楽しそうですね。沙良さんに伊理さん。」

 後ろにいたのはなんか背は小さく、茶色のロングヘアで黄色の服を着ている。

「あっ。彩子ちゃん。」

「あなたがこの前に初寺高校に転校してきた徳川仲吉さんですか?沙良さんからよく聞いています。1年B組の水野彩子(みずのさいこ)と申します。」

「ああ・・・。よろしく。」

 彩子は神社の賽銭箱に近づくと右を向いた。そこにいたのは一人の男であった。

「輝雄さん。」

 彩子が呼んだ輝雄と呼ばれた男は彩子の方を見て歩いた。

「彩子。こんにちは。」

「輝雄さん。こんにちは。」

 彩子と伊理に輝雄と呼ばれる人は今度は俺のほうを見て近づいてきた。

「何だ?こいつ?」

「君が沙良と伊理が言っていた転校生だね。僕は3年D組の竜野輝雄(たつのてるお)。よろしく。」

「こちらこそよろしく。」

 輝雄は自己紹介を終えたとたんに神社のほうを振り向く。すると、長田がいた。

「おや、徳川君じゃないか。」

「長田先生!もしかして、先生もお参りですか?」

 沙良は長田に駆け寄ってきた。先生も同時に沙良に駆け寄った。

「はい。」

「沙良、長田さんとは知り合いだったのか!?」

「うん。医者としての腕が結構いいの。よく病気になったら世話になってるよ。」

「先生はすごいよ~!!多くの病人を救ったんだから!仲吉くんも病気になったら先生に見てもらうといいよー!!」

 伊理は自慢するかのように叫んだ。

「腕なんて・・・僕にはまだまだだよ・・・。人を救いたいという気持ちが強かっただけさ。」

「長田さん。仲吉くんは本当にあの中ヶ原連続殺人事件の犠牲者の一人にはならないと思いますか?」

 輝雄からの口から長田に連続殺人事件の被害者が仲吉なのではないかと聞いてきたのである。

「輝雄さん・・・。あのことを・・・。」

 なんだか沙良たちは輝雄からあの殺人事件関連のことを言った瞬間に悲しそうな目をしていた。

「う~ん・・・。基本的に誰が殺されるか分からないよ・・・。転校前に高校生が1人死んだし・・・。僕が知っているわけがないだろ?」

「もう話すしかないわね・・・。」

 悲しそうな顔をした伊理たちは中ヶ原連続殺人事件のことを認めていた。

「かつてこの中ヶ原では1ヶ月に何人かが殺されます。1~25人ぐらい。だから何人が殺されるかなんて分かりません。」

 彩子は殺される人数とこれは多い場合もあれば少ない場合もある。そう考えていた。正に次々と人が死んでいく事件であった。

「仲吉。君は中ヶ原の事件をどう思う?」

「そうだな・・・。1人ずつ消されていく。俺は絶対に犯人を見つけ出してやる。」

「そうかい。」

 そして、中原神社を後にした仲吉たちは長田と別れてあちこちを周ってきた。




 その日の夕方。その帰り道で一人の男がいた。あれは浜無である。

「あれ?徳川君?こんなところで何をしてたんだい?」

「浜無先生こそ、こんなところで何をしているんですか?」

「ああ。あの連続殺人事件を調べていたのさ。」

 またあの中ヶ原連続殺人事件の話であった。

「結構殺されている人はいてね。いったい今度は誰が消されるんだろうね・・・。」

「浜無先生!もしかして、竜神様、女神様とかの祟り・・・てやつですか!?」

「祟りねぇ・・・。しかし竜神様や女神様はこの中ヶ原を平和にした神様。そう祟りを起こすほどじゃないと思うよ。」

「先生。僕もそう思います。」

 伊理は祟りとかを考えていた。しかし、浜無や輝雄は祟りではなく他殺だと考えている。

「結構難しいところだな・・・。警察も必死に調査しているのに・・・。」

 浜無は仲吉の家がある方向に向かって消えていった。


 それからしばらく案内されて、仲吉は皆と別れて家に帰宅しようとしていたところだ。そして、1台の車が通り過ぎてその車が止まった。その人は車から降りると仲吉に近づいてきた。

「君が徳川仲吉さんでいいですか?」

「誰ですか?」

 まったく知らない人であった。黒のスーツと黒のネクタイ。おそらく姿からして30代。そして、髪は黒くて短めの人であった。その人は何かを取り出して仲吉に見せた。

「俺は中ヶ原警察署の黒田角介(くろだかくすけ)と申します。聞きたいことがあるので車でお話しませんか?家までお送りもします。」

「はい。」

 仲吉は黒田と言う人の車に乗り込んだ。仲吉はさっきの何か。おそらく正に本物の警察手帳であった。この人は本物の警察である。

「警察が・・・何の用ですか?何か・・・俺は悪いことでもしましたか?」

「はっはっは!徳川さん、面白いこと言いますね!もしかして、警察が来たから逮捕されるとでも思いましたか?実は違いますよ。」

「ふぅ・・・。」

 仲吉は警察が来たから何かで逮捕でもされるのではないかと思っていた。しかし違ったようで一安心でため息をついた。そして車を走らせた。

「実は聞きたいことがあるだけって言ったじゃないですか。さて、本題に入りますが・・・。初寺高等学校の2年A組の竜野正人(たつのまさと)について教えてください。」

「竜野って・・・。」

「竜野と言うのはもしかして、竜野輝雄さんのほうをお考えですね。実は竜野正人は竜野さんの実の弟になります。」

「なんだと!?輝雄の弟が2年A組で事件の被害者・・・。」

 これは初耳であった。竜野輝雄に弟がいて、その弟が2年A組に所属し、さらにはその事件の死亡者であったからだ。

「あなたもこの町で何を起きているか知っているようですね。俺はこの事件を解決するために動いている刑事です。気になったこととかはありますか?」

「はい。竜野正人の机に俺が座ることになりました。その机には花瓶が置いてあってその花瓶のことを皆に言うとシーンとしてしまいます。」

「それはそうでしょうね。あの出来事は私が聞きにいってもあの出来事に関することは初寺高校では誰も話してくれないのです。」

 初寺高校では輝雄の弟である正人のことについて先生たちも生徒たちも誰も話してくれないようだった。

「竜野正人さんの通夜は実は今日の夜に行われます。そして、明日に正人さんの葬式がスタートします。」

「え!?」

「しかし、正人さんの葬式は一般のご入場は不可なのです。この葬式はなぜか極秘です。」

 流石は警察である。すごい情報網であった。これだけ事件について詳しく調べられている。

「だから、あなたが正人さんの葬式に言っても話を聞いてもらえずに追い返されるだけです。」

「輝雄にそんな秘密があったとは・・・。」

「そして、今日も一人お亡くなりになった方がいます。首が取れて死んでいます。この町に住む小説家の浜無康成さんです。」

「え!?浜無さんが!?」

 さっき会ったばかりであった。いきなりだったのである。




「そして、ここがこの事件が発生した現場です。」

 黒田はこの場で車を停止させた。周りは田んぼばっかりである。そして無数のパトカーがあった。現場の検証中である。

「ついてきてください。」

 仲吉は黒田に連れて行かれたところは浜無の首が取れてその場で倒れている場所だった。

「これは・・・。確かに首が取れています。間違いなく浜無さんです。黒田さん。」

「そうですか。浜無さんに最後に会ったのはいつですか?」

「夕方です。この町の案内を友達にしてもらっている時に偶然会いました。」

 浜無は昨日は長田と一緒にいた。そして、今日は夕方に出会う。その後にこの場で死亡したのである。

「死亡推定時刻からすると、あなたと浜無さんが会ったのは4時です。そして、5時に徳川さんが帰宅途中に俺と出会っています。そのくらいを考えると4~5時ぐらいでしょう。この時間帯はまだ明るいです。」

「この中ヶ原連続殺人事件の事件であると言う証拠とかは無いですか?」

「実は中ヶ原連続殺人事件の被害者は死体に共通点があります。」

「共通点?」

 中ヶ原連続殺人事件になんと死体に共通点があるというのだ。しかし、殺し方と殺した場所。倒れ方。それぞれ違うのに共通点があるわけがない。

「実は何かの白くて透き通っている粉を鑑識が発見しています。しかし、詳細はまったく分かりません。」

「毒ではないですか?」

 この白い粉。白い粉と言えば毒を含む物もあれば小麦粉などの食べ物だったり塩酸だったりする。透き通っているため死体には白い粉は撒かれていないように見える。

「違います。鑑識で調べたところ、毒の成分はありませんでした。触れても平気です。この事件にはそれぞれ殺し方と言ってもたくさんあります。刃物やバットなどでそのまま撲殺。密室状態での毒ガス。高いとこから落として殺す。放火で焼き殺すなどあります。」

 全ての死体に謎の粉。そしてそれぞれに死に方、殺し方が違っている。

「黒田さん、中ヶ原連続殺人事件の最初に起こった事件はいつですか?」

「4年前の6月8日からです。この日に実は北崎伊理さんの兄で当時、初寺高等学校の生徒であった北崎直人(きたざきなおと)さんが初寺高等学校の2年A組の教室で何者かにバットで撲殺されました。そして北崎直人さんにはその白い粉が降りかかっていました。」

「え!?伊理の兄が中ヶ原連続殺人事件の最初の被害者!?それに殺された場所が初寺高校の俺のクラスの教室!?もうすでに中ヶ原殺人事件の現場にいたということですか!?」

 伊理の兄の北崎直人がなんと中ヶ原連続殺人事件の最初の被害者であった。当時はバットで撲殺されて教室中が血塗れになったようだった。さらに死体には少量の白い粉が降りかかっていた。

 仲吉が驚いていたのはそれだけではなかった。最近仲良くなった仲吉を入れて5人のうち2人もすでに被害者関係者であったからだ。

「驚いていますか?中ヶ原連続殺人事件にあなたのお友達が2人も被害者の関係者だったと言うことが・・・。」

「はい・・・。」

「本当は2人だけではありません。4人です。それだけではありません。初寺高校内には被害者関係者が多数います。」

「沙良や彩子も被害者の関係者!?」

 なんと、伊理、暉雄だけではなく沙良や彩子。そして、他の初寺高校内で被害者の関係者が多数いるというのも驚きであった。

「4年前の6月10日に2人目の中ヶ原連続殺人事件によって水野彩子さんの自宅で水野さんの父親。そして、その3日後の水野さんの父の葬式の会場で3人目の中ヶ原連続殺人事件により、水野さんの母親。それぞれが刃物に腹を刺されて死んでいます。」

「彩子の両親も被害者なんですか・・・!?彩子が関係者というのも納得がいきます。」

 彩子の両親もなんと被害者であった。明らかに3人がこの事件に近い。

「星見さんは3年前の1月1日。正月に中ヶ原連続殺人事件が起こり、実の母である星見綺羅(ほしみきら)さんが沙良さんの家が何者かに放火されたことによって焼き死んで亡くなっています。」

「沙良の母親が・・・中ヶ原連続殺人事件の3年前の最初の被害者・・・。」

 これで4人全ての被害者との関係性が分かってきた。ここまで事件が悲しいだろうか・・・。だから花瓶のことを聞いても誰も答えなかった。

「そして、俺もかつての同期で仲良しだった刑事を中ヶ原連続殺人事件で失っていますし、初寺高校の2年A組担任の又中先生も実は信頼されていた3年前の校長先生があの事件で亡くなってたのがよほどショックだったらしいです。」

「身近にいる人だけでこれだけ何ですか・・・。」

「はい。残念ながら真実です。事件のことは初寺高校の生徒や先生たち。中ヶ原の人にとって禁忌(タブー)です。なので俺が徳川さんと接触していたこと。事件のことはくれぐれも極秘にお願いします。」

「分かりました。」

「俺は急用が出来ましたのでここで失礼させて頂きます。何か言いたいことがありましたら、こちらに連絡してください。では。」

 黒田に電話番号が書かれたメモを受け取ると車に乗って去っていった。

 初寺高校にこんな秘密があったのはとても驚きであった。この事件を初寺高校の先生や生徒はとても恐れているのだろう。

「・・・・・・。」



 家に帰ってきた仲吉は中ヶ原連続殺人事件についてパソコンで調べ出していた。

『中ヶ原連続殺人事件。今度の被害者は小説家の浜無康成さん(31歳)。刃物によって首を斬られて死亡。死体発見時は首が取れた状態であった。死体には細かくて透き通っている白い粉がまかれていた。』

(いったい誰が犯人だ・・・。最初の被害者は伊理の兄北崎直人。4年前に何者かにバットで撲殺され死亡。死んだ後は結構立ち入りが禁止されていたらしい。次が彩子の父親。その次が彩子の母親。それぞれが刃物に腹を刺されて死亡。全ての死体には無色透明で無毒の白い粉が撒かれている。)

 最初の被害者は伊理の兄北崎直人。2年A組の教室にてバットで撲殺され死亡。

(明日、2年A組を調べてみるか。)







 明日の朝。ご飯を食べた仲吉はさっそく学校へ向かう。

「あっ!仲吉くん!」

 家の前で待っていたのは沙良であった。沙良の母親。星見綺羅は沙良の家を放火して焼き殺され死亡した。沙良も事件の被害者である。

「浜無さん、殺されちゃったんだって。」

「そうか。そうか。」

 仲吉はあえて知らないふりをした。輝雄がこの事件を引っ越してきたばかりの俺の前で堂々と言った。だが、あの事件。2年A組の教室で伊理の兄の北崎直人が何者かに殺された事件が起きた。そして竜野正人が6月8日に殺された事件。極秘の葬式。これは皆は俺に維持でも教えないつもりだろう。

「残念だったなー。」

「そうね。はは・・・。」

 沙良は苦笑いをした。




 学校に入った仲吉と沙良は教室に入って最初の中ヶ原連続殺人事件が起きたあの教室で授業を受ける。

(何か、中ヶ原連続殺人事件現場で授業を受けるって何か悲しい雰囲気だ・・・。それに俺が使っている机はこの前の連続殺人事件で死んだ竜野正人の机だからな・・・。)

 被害者がここで殺されていてしかも被害者が使っていた机を自分が使っている。そのうえ、被害者の悲しみなのか漂っている雰囲気が感じる。

「では、今日はここまで!室長!」

「起立!礼!」

「ありがとうございました!」

 ようやく授業が終わった。昼ご飯の給食の時間になっていた。

(給食かよ・・・。いつも不味いものばかり来るからよ・・・。俺の口には合わないって・・・。)

 不味い給食が来ると感じ取っていた仲吉に伊理が仲吉に話しかけてきた。

「仲吉くん!何々?も・し・か・し・て・・・。給食が嫌い?大丈夫よ!いつもここではこれを食べてっていったら承諾してくれる人たくさんいるから!!ね!」

「そうそう。私の嫌いなものはいつも皆が食べてくれるから。」

「そ・・・そうか・・・。やけに親切な人がたくさんいるんだな・・・。」

 普通の学校の給食ではこれを食べてっていったら食べてくれないものなのにここでは代わりに食べてくれると言う人がたくさんいるらしい。

「俺は不味くても残さずにしっかりと食べるんだよ。お前らとは違って・・・!!」

「よけいなお世話よ!!」

 伊理は大声で怒鳴った。こいつはかなりの負けず嫌いのようだ・・・。




 放課後。皆が帰る時である。

「仲吉くん!一緒に帰ろう!」

「ごめん、俺は又中先生に用事があるから。」

「そう。じゃあね。帰ろう。伊理ちゃん。」

「そうね!沙良。」

 沙良と伊理は仲吉を放って教室から出て行った。1人になった仲吉はさっそく何か手がかりになりそうなものを探し出そうとする。

「なんにもないな・・・。」

 今度は教卓の引き出しを調べた。中にはプリントや文房具がたくさんある。

「これは・・・。」

 "希望新聞"と書かれたプリントを見つけた。このプリントはよくこの初寺高校で渡されているプリントである。日付は6月8日だった。

『竜野正人くんが中ヶ原連続殺人事件にて今日にて死亡。次々と死亡者が多発。くれぐれも注意しましょう。』

(・・・・・・。やはり・・・。書かれてあった。)

『北崎直人くんが2年A組の教室でバットで撲殺され死亡。3年間旧校舎にて授業を行います。6月8日は命日の日です。』

 6月8日とは俺が引っ越してくる日。その日に命日があり、その昨日は竜野正人が殺された日であった。

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