学校に行きたくない僕、行かない俺の理由
この物語は、特別な誰かの話ではありません。
どこにでもいる、中学一年生の男の子の、日常の一部です。学校に行けない理由は、人それぞれ違います。
けれど「行けない」その裏側には、目には見えない葛藤や、精一杯の頑張りがあります。
この物語は、ノンフィクションとフィクションのあいだにあります。
誰かの実体験かもしれないし、あなたや、あなたの大切な人の心の中にある気持ちかもしれません。
読み終えたとき、
「今のままでも、生きていていい」そう思える小さなきっかけになれば幸いです。
【学校に行かない、行きたくない僕の理由】
僕の名前は心。中学一年生。
学校に行けなくなった理由を、うまく説明できる言葉は、今も見つからない。
何か大きな出来事があったわけじゃない。
ただ、少しずつ、少しずつ、心がすり減っていった。
一学期のはじめ、僕は新しい制服を着て、新しい学校に通い始めた。
小学六年の終わりに両親が離婚して、母と二人で知らない土地に引っ越してきた。
知り合いは一人もいなかったけど、最初はそれなりに頑張れていたと思う。
サッカー部に入って、汗をかいて、仲間とボールを追いかけた。
楽しい時間も、確かにあった。
でも、いつからだろう。
教室で聞こえる小さな笑い声が、自分に向けられている気がしてきた。
何気ない一言が、胸の奥に刺さって抜けなくなった。
クラスだけじゃなく、知らないクラスの子からも言葉を投げられた。
冗談のつもりだったのかもしれない。
でも、僕の心は冗談として受け取れなかった。
勇気を振り絞って教室に行った日。
嫌な言葉を聞いて、足がすくんで、息が苦しくなった。
その日から、教室の扉の前で体が動かなくなった。
二学期が始まる前、風邪をこじらせた。
体調が戻らないまま夏休みが終わり、生活のリズムが崩れた。
朝、起き上がれない。
立つと、目の前が暗くなる。
病院で「起立性障害」だと聞いた。
もともと朝は苦手だった。
ADHDがあって、時間を守ることや、気持ちの切り替えが難しい。
それでも、やらなきゃいけないって、ずっと思っていた。
二学期、学校には行ける日もあった。
でも、教室には入れなかった。
保健室登校。
それが、今の僕の精一杯だった。
担任の先生の言葉。
母の心配そうな背中。
出席日数や、高校のこと。
未来の話をされるたび、胸がぎゅっと苦しくなる……
……僕自身も、焦っていた。
……このままでいいわけがないって、分かっている。
でも、どうしたらいいのかが、分からない。
……日曜日の夜が、一番つらい。
明日が来てほしくないと思ってしまう自分が、嫌になる……
それでも、心の奥には、将来やりたいことが、ぼんやりと残っている。
……まだ言葉にできない夢。
まだ形にならない希望……
僕は今日も、できるところまでしか進めない。
それでも、それは「止まっている」わけじゃないと、少しだけ思えるようになった。
これから先、どうなっていくかは分からない。
うまくいかない日も、きっと続く……
……それでも、いつか新たな楽しい一歩が、
僕の前で、静かに、でも確かに輝いてくれることを、
今は信じてみたいと思っている……
心は、強い子ではありません。
でも、弱いままでも、前に進もうとしています。
学校に行けない日があっても、教室に入れなくても、
それは「頑張っていない」わけではありません。
歩幅が小さくても、立ち止まっても、自分のペースで進むことは、確かな一歩です。
もし今、同じように苦しんでいる人がいたら、
どうか一人で抱え込まないでください。
未来は、今は見えなくても、ある日ふと、思いがけない形で光ることがあります。
この物語が、
誰かの「明日をもう一度迎えてみよう」という気持ちに、そっと寄り添えたなら、とても嬉しく思います。




