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Backstreet Tokyo  作者: 夏実
season1

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第六話 違和感

「はい! 今日の朝ごはんです! 私、頑張ってお手伝いしたんですよ!」

 ユウナはそう胸を張りながら、今日の朝食を持ってきた。朝食をテーブルに乗せながら、涼が言う。

「ユウナさん、だいぶお手伝いが出来るようになってきましたね。いつもありがとうございます」

「そんな! 私が出来ることなんて、これくらいしか……」

 そう謙遜するユウナに、新聞を読んでいた翔がおもむろにユウナの頭を撫でた。その撫で方は、やや乱暴な撫で方ではあったが、翔なりの伝え方なのだろう。

「そう謙遜するな、お嬢ちゃん。俺や涼の手伝いが出来るなんざ、相当覚えが良くなきゃ出来ねぇ。もっと自信を持てよ」

「そ、そうですか……? じゃあ、翔さんがそう言うなら……」

 ユウナは少し困惑しながらも、翔の言葉を受けて嬉しそうに微笑んだ。

「あっ、翔さん。いつもベッドを貸してくれて、ありがとうございます。でも、そろそろ申し訳ないので、今日から床で寝ようかと……」

 ユウナがそう言いかけた途端、翔は新聞を放り投げ、ユウナに顔を向けた。翔はユウナを真っ直ぐ見つめ、彼女にこう言った。

「あ? 女はちゃんとベッドで寝るべきだろうが。まさかとは思うが、俺のことを気にしてるのか? だとしたら、心配はいらねぇ。俺はちょうどソファで寝たい気分なんだよ。いいか、今後二度と床で寝るとかぬかすなよ」

「は、はい! すみません……!」

 翔はユウナの返事を聞くと、タバコを咥えて席を立った。恐らくベランダに向かうつもりなのだろう。部屋から出ていく翔の背中を見ながら、ユウナは呟く。

「私、言っちゃいけないこと言っちゃったのかな……」

 そんな彼女の隣に、涼が屈む。涼は、ユウナを慰めるような口調で言った。

「そんなことはありませんよ。翔は、ああ見えてあなたのことが心配なんです。床で寝たら風邪をひくかもしれない。たぶん、そう思っているから、あんな言葉が出たのだと思いますよ。だから、あまり気にしないでください」

「涼さん……。はい、ありがとうございます。翔さんにも、後でちゃんと伝えなくちゃ」

「いえいえ。こちらこそ、いつも兄がすみません。……いつも、その荒い口調を直せとは言ってるんですけどね」

 そう言いながら、涼は立ち上がり、朝食をとろうとテーブルへ向かった。ユウナもテーブルに向かい、翔が戻ってくるのを待つことにした。


「……なぁ、涼。お前、最近おかしいと思わねぇか?」

「何がですか?」

 その日の午後、翔と涼は害虫駆除の依頼――という名のモンスター討伐の依頼を受け、モンスターの討伐に出かけていた。依頼通り、イモムシのようなモンスターの駆除をしたのだが、その際に翔が涼に問いかけた。

「最近、やけにモンスターが沸いて出てくると思わねぇか。依頼数も爆発的に増えてやがる」

「確かに、やけに多いとは思いましたが……。単純に時期的なものではないのですか?」

「相変わらず鈍いな、お前は」

 そう言って、翔はイモムシの死骸を蹴り飛ばす。翔の言動に、多少苛立ちを覚えながらも、涼は翔に尋ねた。

「なんですか? このモンスターの多さは、何かが絡んでいる。あなたはそう言いたいんですか?」

「あぁ、そうだ。この多さ、それに出現頻度……。明らかに不自然だ。これにはきっと裏がある。俺はそう思っている」

「確証はないんですか。はぁ……。とりあえず先に帰ってますので、後はよろしくお願いします」

 涼は若干呆れた様子で、先に事務所へ帰っていった。現場に残った翔は、辺りを観察する。

 現場は人通りの少ない路地裏。一見自然に発生したモンスターのようだが、翔はそうは思えなかった。確証こそないが、何か「違和感」のようなものを抱いていた。

「(俺の勘は当たりやすい。もし想像していることが現に起きたら、それこそ大変なことになる。……ただの思い過ごしならいいんだけどよ)」

 翔の勘とは、このモンスターたちは意図的に作り出され、それを裏で操る人物がいるのではないか、という推測だった。あまりにも突拍子もない考えだが、翔は違和感を説明するにはしっくりくる考えだと思っていた。

「(とりあえず、後始末だけして帰るか。今は、目の前の仕事に集中――)」

 翔がそう考えながら後始末をしていると、突然スマホの着信音が聞こえた。スマホを取り出してみると、涼から電話がかかってきていた。

「おう、涼。どうした?」

 翔はそう言って電話に出る。すると、聞こえてきたのは慌てふためく涼の声だった。

「翔! 今すぐ戻ってきてください! 事務所が荒らされています!」

「あ? なんで事務所がそんなことになってんだよ。待ってろ、今後始末してから――」

「後始末なんてどうでもいいです! とにかく早く戻ってきてください!」

 やけに涼は慌てている様子だ。事務所が荒らされただけで、こうも慌てるだろうか? そう考えている翔の耳に、涼の声が響く。

「いないんです、どこにも。……ユウナさんが、いないんです!」

「……は?」

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