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Backstreet Tokyo  作者: 夏実
season1

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第五話 怪しい男

「えっ……。ユウナさん、それは……どういうことです?」

 困惑した涼が、ユウナに尋ねる。ユウナは、傷ついた涼に近づき、そっと手をかざす。

「見ていてください。これが私の『力』です」

 すると、ユウナのかざした手が、魔力を帯び始めた。同時に、涼の傷が少しずつ治っていく。涼は確信する。彼女もまた、自分や兄と同じ「異能持ち」であることを。

「……いつから、そんな力を」

「よく覚えてはいないんです。でも、いつの間にか使えるようになってました。私の『力』は、どうやら他人を癒す力と、防御に特化したものみたいなんです。涼さんみたいに、前線で使えるものじゃないんですけど……」

 ユウナは涼を治しながら、そう言った。涼は考える。彼女の力は確かに前線向けではない。しかし、悪用されたら大変なことになる力だ。ならば、気をつけなくてはならない。そう考えた涼は、ユウナにこう申し出た。

「ユウナさん。この異能は、隠しておくべきです。私や翔は対策出来る力ですが、ユウナさんはそうではありません。いつ、誰に悪用されるか分からない。だから、今後は隠しておいた方が良いと、私は思いますよ」

「涼さん、私のことを心配してくれてるんですか? だとしたら、大丈夫ですよ。今までも隠してきましたし、これからも極力使わない方針です」

「本当ですか? それなら良いのですが……。なるべく気を付けてくださいね」

 涼の言葉に、ユウナは微笑みを浮かべて頷いた。涼とユウナは、仕事の続きに戻ろうと、再び目的地へと向かって行った。ユウナ本人は、気にしていない様子だったが、もう少し警戒した方が良いのでないか、と涼は内心思うのだった。


「へぇ。人探し、ねぇ」

 一方、「何でも屋」の事務所では翔がとある依頼主と面談していた。依頼主は初老の男性で、たいぶくたびれたような様子の男だ。名前をハルキというらしい。ハルキは、翔に写真を差し出して言う。

「はい。この子を探してほしいのです」

「どれどれ……っと」

 差し出された写真を見た翔は、そこに写っている人物に内心驚く。それは間違いなく、ユウナだった。

 写真はどこかで盗撮されたかのような画角で、場所もここからあまり遠くない場所だ。

「……この嬢ちゃんとの関係は?」

「それは……言えません。しかし、とにかくその()を捜してほしいのです。報酬はいくらでも払います。どうか、お願いします」

 ハルキは翔の質問には答えずに、ただユウナを捜してほしいと訴えかけてきた。翔は、一旦考えるフリをしてハルキをじっと見つめた。

 ハルキは、一見パッとしない男だ。しかし、翔は何故かハルキに良い印象を持たなかった。何故だか分からないが、翔はハルキを悪人だと感じていた。ハルキは何かを企んでいて、それにユウナを使うつもりなのではないか。翔はそう考えていた。

「……お断りだね。頼むなら、別を探しな」

 翔は写真を投げつけて返すと、ハルキにそう言った。仕事は何でも請け負うのがポリシーの翔だが、今回ばかりは依頼を受けられないと判断した。理由は単純、ユウナのことが心配だったからだ。

「そんなこと言わずに! 報酬が足りないなら、追加で払いますとも! だから、どうか捜してください!」

「報酬云々の話じゃねぇ。これは俺個人の判断だ。この俺が断ると言ってるんだ、さっさと帰るこったな」

「そ、そんな……」

 ハルキは肩を落とし、事務所から出て行った。事務所に残された翔は、この後帰ってくるであろう涼とユウナにどう伝えるべきか考えた。

「(確証がねぇが、嫌な予感がするな。涼にも強めに言っておくか。……俺の勘は、何故だか当たりやすい。くそ、厄介なことにならねぇといいんだが……)」


 夕方。仕事を終えた涼とユウナが、事務所に帰ってきた。

「一日、ご苦労様でした。どうでしたか?」

「はい、とても大変でしたけど、涼さんがいてくれたので何とか頑張れました! またお手伝い頑張りますね」

「ふふ、頑張るのは良いことですが、無理は禁物ですよ?」

 そんな会話をしながら事務所に入っていく二人を、物陰からじっと見つめる影があった。ハルキだ。ハルキの視線は、ユウナに向けられていた。

「あぁ、優奈……。こんなところにいたんだね。すぐに……すぐに助け出すからね……」

 まるでうわごとのように、ハルキはそうボソボソと呟く。顔には不気味な笑みを浮かべ、不自然に体を揺らしているその様子は、傍から見ても異常なものだった。

 ハルキはその状態のまま、くるりと踵を返し、事務所から離れる。

「翔に、涼。あの双子の兄弟が邪魔だな。……いずれ邪魔者は取り除かなくては。……優奈、すぐに助けてあげるからね。待ってるんだよ」

 誰に言うわけでもなく、独り言のようにそう呟きながら、ハルキは街の喧騒の中へ姿を消した。

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