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Backstreet Tokyo  作者: 夏実
season1

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第二話 クラブ襲撃事件

「……おい、涼。いないのか?」

 とある朝、成瀬翔がそう言いながら起きてきた。部屋の中は誰もおらず、代わりにテーブルに朝食と書き置きがあった。翔は、テーブルに置かれた書き置きを読む。

「家事代行の依頼が来たので、そちらの対応に行きます。涼」

 それは弟である成瀬涼のメッセージで、どうやら先に仕事に行っているようだ。翔は溜め息をつきながら、テーブルに置かれた朝食をレンジで温め直すことにした。

「やれやれ。あいつも真面目だねぇ。……ま、朝飯置いて行ってくれたし、あまり悪く言うのもな」

 翔は自分が涼から嫌われている自覚はあった。性格的な相性でいえば、最悪の部類だろう。とはいえ、それとは別に兄弟として信頼しているのも事実だ。あまり彼を悪く言うのはやめよう、翔はそう思った。

「……とはいえ、帰ってきたら嫌味のひとつくらい言っても許されるだろ」

 朝食を口にしながら、翔はそう呟いた。それこそ喧嘩の引き金になると分かっていての発言だ。翔も懲りない男である。


 その日はあまり依頼と呼べるような仕事もなく、翔は一人事務所でタバコを吸いながら事務処理をしていた。後回しにしていた事務処理をようやく終える頃には、日が暮れていた。涼も帰ってくる気配がない。翔は退屈そうにタバコを吸っていた。

「今日はもう店じまいでいいだろ。俺は酒が飲みたい。……そうだ、久しぶりにあそこへ行くか」

 翔は仕事を切り上げると、事務所から出て真っ直ぐ目的地へ向かった。目的地とは、いつも出入りしているクラブのことだ。翔はいつもそのクラブに入り浸っており、そこで酒を飲むのを楽しみとしていた。

 日も暮れて、すっかり夜になった路地裏を歩いて行く。しばらく歩いて、ようやく目的のクラブに辿り着いた時、翔は違和感を覚えた。

「(……なんだ? やけに静かだな。……嫌な予感がするな)」

 翔がクラブの中に入ると、中は凄惨な荒れ模様で、人が何人か倒れている。ステージには、異形のモンスターが酒やら人間やら口にしているが見えた。どうやら、このクラブはモンスターに襲撃されたらしい。

「おっと、ずいぶんと荒らしてくれたなぁ」

 翔はステージにいるモンスターたちに向かって声をかける。モンスターたちは翔の姿を見るなり、唸り声をあげた。どうやらまともに会話出来るタイプのモンスターではないらしい。翔はタバコを指で挟み、それをモンスターたちの前に掲げた。

「お前ら、俺と最悪な時間を過ごさないか?」

 その言葉をきっかけに、モンスターたちは翔に襲い掛かる。翔を食ってやろうと、モンスターたちは牙をむく。対する翔は、軽々しくモンスターたちの攻撃を避けていった。どこか楽しんでいる様子の翔は、挨拶代わりだと言わんばかりに、モンスターの一体に拳を振る。翔の拳はモンスターの頭に直撃し、破裂する。

「ギ、ギィ!!」

「なんだぁ? 怖気づいたか? 悪いが、一匹たりとも生きて帰さねぇよ!」

 翔は近くにいたモンスターに蹴りを入れる。蹴りの衝撃に耐えられず、モンスターは四散する。それを見た他のモンスターたちは、怖気づいて逃げようとしたが、それを見越していた翔の罠にかかった。あらかじめ翔が床に設置していた罠にかかり、モンスターたちは一網打尽になる。それを見た翔は嗤いながら、モンスターたちの頭を床にねじ込んだ。そして、まるで雑巾がけでもするかのように、頭を床に充てながらクラブ内を疾走する。モンスターたちの頭はみるみるすり減り、跡形もなくすり下ろされてしまった。全てのモンスターたちを倒した翔は、辺りを見渡して他に生き残りはいないか確かめる。

「……全部殺ったか。あーぁ、こんな早く終わるなんて肩透かしも良いところだ。店には後で請求書送っておくか。途中酒でも買って帰……あ?」

 そこで、翔は気づいた。モンスターたちの死骸の中で、倒れている少女がいることを。翔が近づいて確かめると、まだ生きているようだ。見たところ、まだ未成年のように見える。

「なんでこんな場所に……。警察に届けるべきか? ……いや面倒ごとは起こしたくねぇしな。どうすっか……」

 翔は少女を目の前にして考えた。長考の末、翔が導き出した結論は……。

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