表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Backstreet Tokyo  作者: 夏実
season1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/18

閑話 少女と再会した兄弟の話

「えっと……確か、この辺りだったはず……」

 その日、ユウナは仕事で街の郊外に来ていた。地図を頼りに目的地まで歩いてきたのだが、目的地近くまで来て迷ってしまった。目的地はどこかと、迷いながら歩いていると、ユウナに近寄る不審な男たちが話しかけてきた。

「よぉ彼女、暇そうやなぁ。わいらと遊ばへん?」

「な、なんですか! 私は行かなきゃ行けないところがあるんです、邪魔しないでください」

 ユウナは男たちをはねのけて歩こうとしたが、男たちはユウナの進路を邪魔してくる。これでは先に進めない。

「へへっ、ええやんか少しくらい。遊ぼうや」

「通してください!」

 ユウナが思わず声を荒げると同時に、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「おう、ここにいたのか。探したぜ」

 その人物はユウナの肩を抱くと、自分の方へ引き寄せる。突然現れた男の姿に、不審な男たちがたじろぐ。ユウナは顔を上げ、男の顔を見た。

「翔さん!?」

「悪いな。この嬢ちゃんと会う約束があってな。ほら、さっさとどっか行け」

 翔は、以前からユウナと約束があったという前提で話を進める。本当は会う約束なんてしていないのだが、不審な男たちを追い払う口実なのだろう。明らかに腕っぷしが強そうな翔が現れたのを見た男たちは、すごすごと退散していった。

「やれやれ、今時いるもんだな。ああいうやつら。嬢ちゃん、大丈夫か?」

「は、はい! 大丈夫です。でも、こんなところで会うなんて奇遇ですね?」

「まぁ、俺らも仕事でここに来てるからな。涼もそろそろ来るはずだ」

 久々の翔との再会に、ユウナは思わずこう声をかけていた。

「あ、あの! 仕事が終わった後で良いので、この後お食事でも行きませんか? 久々にお話したくて……」

「おう、いいぜ。涼も喜ぶだろうよ。あいつ、お前のこと心配してたしな」

 翔はタバコを吸いながら、そう言った。彼はユウナの持っている地図に視線を移す。

「ところで嬢ちゃん。道分からねぇのか?」

「あ、はい。そうなんです。目的地がどこか、迷ってしまって……」

「ここか。俺が案内してやる。ついてきな」

 翔はそう言って、ユウナを目的地まで案内してくれた。二人は仕事が終わった後、特定の場所で落ち合うことにした。


「ユウナさん、お久しぶりです。どうですか、最近の調子は?」

 仕事の後、カフェでユウナに会った涼はそう尋ねてきた。翔と同じく、変わらず元気そうだ。

「涼さん! はい、おかげさまで順調です。あの時はありがとうございました。私、あの時の言葉に今も救われてるんです」

 翔と涼がユウナにかけた言葉。それは「人として生きていく道がある」という言葉だ。彼女はこの言葉に励まされ、今も助けとなっている。

「そうですか。ふふ、元気そうで何よりです。たまには事務所に顔を出しても良いんですよ」

「本当ですか! じゃあ今度お邪魔させてもらおうかな!」

 涼の提案に、ユウナは喜んで声をあげる。いつかこの兄弟に恩返しをするのが、ユウナの夢だ。その為に、今は仕事を頑張りながら、人として生きていく道を歩んでいた。

 カフェの席についた三人は、各々注文をする。翔はブラックコーヒー、涼とユウナはカフェオレを頼んだ。

「あれ、涼さんはブラックじゃないんですか?」

「えぇ。私、あまり苦いものは得意ではないので……。どちらかというと、甘党ですね」

「あら、そうなんですか。なんだか意外です」

 翔と涼は双子ゆえに、好みも同じだと思っていたユウナは、率直な感想を口にする。そこへ、コーヒーを飲みながら翔が話しかけてきた。

「涼はマジで甘党だからな。こないだも仕事帰りに菓子食ってたし」

「仕事帰りくらい良いじゃないですか。これでも前よりは節制してるんですよ」

「本当かぁ? 前に外食に行った時、でけぇパフェ一人で食ってたよな。あれは節制と言えんのか?」

 ユウナは思わず、涼が巨大パフェを一人で食べている光景を思い浮かべてしまった。涼は肩をすくめながら、翔にこう言い返す。

「あなただって酒とタバコやめないまま、毎日吸っては飲んでるでしょう? そちらこそ節制したらどうなんです?」

「やなこった。これは俺の楽しみだ、減らすのも嫌だね」

「まったく……。そんなあなたに節制がどうの言われたくないですけどね」

 予想通り、翔と涼は口喧嘩を始めてしまった。それを見ていたユウナが、慌てて二人を止める。

「わわ! ストップです! 喧嘩しないでください!」

「……畜生。お前といると喧嘩しかしねぇな、本当」

「誰のせいですか、まったく」

 お互いに険悪な雰囲気の兄弟二人を、ユウナは宥めるのに必死だった。


 カフェから出た三人は、外で少し話をしていた。

「今日はありがとうございました! 久々にお二人とお話出来て良かったです!」

「おう。嬢ちゃん、これからはどうするんだ?」

 翔がユウナの今後について尋ねる。ユウナは、それに対して胸を張って答えた。

「はい。仕事を頑張って、人として生きて行こうと思います。いつか、お二人に恩返しするのが夢なんです。だから、また会える日まで元気でいてください」

「えぇ。私も、また会える日を楽しみにしてます。無理だけはしないでくださいね?」

「はい! もちろん!」

 そんな会話を交わし、ユウナは翔と涼に別れを告げる。街の中に消えていく彼女の背を、二人は見送っていた。

「……上手くやっていけるといいですね」

「やっていけるさ、きっとな」

 翔と涼はそう会話を交わしながら、事務所へと戻っていく。辺りは夕焼けで明るい。明日はよく晴れそうだ。二人はそう思いながら、街の中を歩いて行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ