第十三話 決戦
「ユウナさん!?」
ユウナは涼から離れ、翔の方へと向かって行く。
翔の方では、ハルキとの戦闘が行われていた。ハルキの圧倒的な力に、さすがの翔も苦戦を強いられていた。翔は何とか応戦しようとするが、なかなか隙が見つからない。
「ははは、どうした? 攻撃を受け流すだけじゃ、私は倒せないぞ」
「(……くそ、そろそろ限界か)」
翔は攻撃を受け流しながら、考える。一撃でもいい、ハルキに攻撃を仕掛けようと考えるが、そう考えている隙にハルキからの攻撃が重なる。翔は傷だらけになりながら、それでも攻撃に耐えていた。
「……ふむ、余興も終いにしよう。これで終わりだ」
ハルキが手を掲げる。巨大なエネルギー弾が生成され、それを翔に放とうとしている。逃げても無駄だと分かるほど、膨大な魔力だ。もはやこれまでか、と翔が思いかけた、その時だった。
ハルキと翔の間に、小さな影が割り込んできた。ユウナだ。ユウナは手を前に出し、盾を作り出す。盾とエネルギー弾がぶつかり合い、周囲に衝撃が走る。
「私は、あなたの言いなりにはならない! 私には私の心がある! だから、私は私の信じる道を行く!!」
「この……! 小娘め、小癪な真似を!」
ユウナの想いは盾の強さとなり、ハルキの攻撃を見事防いでみせた。しかし、ユウナは反動で倒れこんでしまう。そんな彼女を、翔が支えた。
「……よくやった、嬢ちゃん。あとは、俺たちに任せときな」
翔はユウナを安全な場所まで下がらせる。そこへ、涼が走って合流してきた。涼と合流した翔は、手を差し出す。
「涼、魔力を貸せ。俺の魔力も貸してやる。……あの気色悪い野郎を叩きのめしてやろうぜ」
「……わかりました。ちゃんと合わせてくださいよ?」
「馬鹿言え、お前が俺に合わせんだよ」
翔と涼はお互いに手を握り、互いの魔力を貸す。こうすることによって、一時的ではあるが、ハルキを凌駕する力を得ることが出来るのだ。互いの魔力を出し合った二人は、ハルキに宣戦布告する。
「ハルキ。お前、俺と最悪な時間を過ごさないか?」
「今度こそ、私の本気を、見せて差し上げます」
翔はハルキの前に素早く移動し、その腕を蹴り上げる。二人分の魔力が乗った蹴りは、ハルキの腕の装甲を簡単に剥がした。その隙を突いて、今度は涼が鎖の付いた短剣で、ハルキの体を縛り上げる。涼は素早く移動し、鎖と瓦礫を繋げ、ハルキの身動きを取れなくしていった。
「この、薄汚い兄弟共め……! この程度で私を縛れると思うなよ!」
ハルキが抵抗し、ビームを放って鎖を壊していく。崩れていく鎖を見て、涼がさらに魔力を練る。
「涼! もう一度だ!」
「はい!」
ハルキは涼を狙って攻撃しようとする。しかし、動きを読んでいた翔に阻まれた。翔はハルキの前で拳を振り上げ、そのまま顔面を殴りつけた。
「ぐはぁ……っ!」
大きくハルキが揺らいだところで、再び涼が鎖で拘束する。今度はさらに強い魔力で作られた鎖だ。瓦礫と共に、ハルキは縛り上げられる。身動きが取れなくなったハルキの前に、翔と涼が揃って立った。
「これで終わりだ! 合わせろ、涼!」
「分かってます!」
二人は高く飛び上がり、ハルキに向かって蹴りの姿勢を取る。魔力でブーストをかけ、翔と涼はハルキに飛び蹴りをお見舞いした。蹴りはハルキの体を貫き、致命傷を与えるには十分だった。
「くそ、くそ! あと少しで、私の野望が敵うはずだった、のに……! こんな、こんな惨めな負け方、認めない……ぞ!」
致命傷を負ったハルキは、徐々に体が崩れていく。その姿を、ユウナは遠巻きに見ていた。彼女の眼は、どこかハルキを憐れむような、そんな眼をしていた。
「私は……この世界を支配する……はずだった、のに……」
ハルキはそう言い残すと、塵と化して消え去った。残ったのは静寂、それだけだった。
支配者がいなくなったモンスターたちの地下街は、大パニックを起こしていた。支配者がいなくなっただけでなく、地下街は大火災に見舞われていた。これは、翔と涼の策によるものだった。この地下街を残しておくわけにはいかない。そう判断した二人が、街ごと焼き払おうと火を放ったのだ。
「ここが無くなれば、モンスター共も出て来なくなるだろうよ。……っと、悠長に話してる場合じゃねぇな。おい、さっさとここを出るぞ」
「言われなくても出ますよ。ユウナさん、大丈夫ですか?」
涼がユウナを心配して声をかける。ユウナは翔と涼の手を握りながら、返事をした。
「は、はい! 大丈夫です。でも、お二人は……」
ユウナの言う通り、翔も涼も、ハルキとの戦いで体力を消耗していた。しかし、今はそれどころではない。二人は傷ついた体に鞭打ち、地下街からの脱出を図る。
「なに、俺たちのことは気にするな。嬢ちゃんは自分のことだけ心配してな」
「私たちは大丈夫ですよ。お気になさらず」
翔と涼がそう言ったが、無理をしているのは明らかだ。二人を心配しながら、ユウナは階段を歩く。火がすぐそこまで迫ってきている。急がねばならない。
「急ぐぞ、俺たちまで焼かれたら元も子もねぇからな」
「えぇ、分かってますよ。……出口までもうすぐのはずです」
出口に向かって急ぐ三人。火は、地下街を丸ごと飲み込み、全てを焼き尽くしていった。




