第十話 地下深くにあるもの
翔と涼は、地下深くへと下りていく。この先に待ち受けるのは、一体なんなのか。二人はそう考えながら、共に移動していく。
しばらく移動していると、大きな広間のような場所に出た。ここから続く道もないようだ。
「おっと。ここが終着点か?」
「……いえ、違うと思います。この感じ……これはモンスターの結界かなにかだと思います。壁の様子とか不自然じゃありませんか?」
涼の言う通り、周囲を良く見ると所々不自然な場所が目立つ。オブジェクトも靄のようになっていて、まるで二人を閉じ込めたかのような壁がある。抜け出す道もない。
「おいおい、じゃあどうするってんだよ。これじゃ先に進めねぇじゃねぇか」
「――さすが水瀬兄弟。察しが良いじゃないですか」
そこへ、声が聞こえてきた。声のする方を見ると、また異形のモンスターがいる。
「ようこそ、私の結界へ。この結界は、私を倒すことで解除することが出来ます。その為に、あなたがたにはゲームをしてもらいましょう」
「……ゲーム、ですって?」
モンスターの言葉に、涼は聞き返す。モンスターは部屋の中央にテーブルとゲーム機を召喚し、手招きする。
「そうです。水瀬翔、あなたには私とこれでテレビゲームをしてもらいます。あなたが勝てば、ユウナさんの場所まで案内しましょう。しかし負ければ……あなたは死ぬことになる」
その言葉に、翔はめんどくさそうに髪を掻いた。またそのパターンか、とでも言いたげな様子だ。一方で、涼は翔に対して不安を覚える。何故なら、翔はテレビゲームなどほとんどしたことがないからだ。操作もロクに分からないのではないか。涼はそんな不安を抱いていた。
「……いいぜ。命を賭けて、勝負してやる」
「結構。では、準備いたしましょう」
かくして、再び命を賭けたゲームがスタートした。今回はテレビゲーム。イカサマが仕掛けにくいゲームで、どうやって勝てばいいのか。相手のモンスターは何かしらイカサマをしてくるはずだ。様子を窺っていた涼は、そう考えていた。
一方で、翔とモンスターの間では勝負が始まっていた。ゲームの種類はサッカー。相手の動きをどう予測するか、重要になってくるゲームだ。
「おやおや、どうしました? まるで操作がおぼつかないですよ?」
「……チッ。俺はテレビゲームなんざしたことねぇっての。こういうのは涼のが得意だろうがよ」
「今更言われましても。さぁ、ここが攻め時ですよ」
翔は少し苛ついた様子でタバコを吸いながら、画面を見ている。一方で、様子を見ていた涼が、あることに気づいた。
「(翔の操作……全部相手に読まれている? おかしい、お互いの手元は隠れて見えないはず。それなのに、どうしてあそこまで……。まるで、心を読まれているかのような……)」
そこまで考えた涼は、ハッとする。前回もそうだったように、今回もモンスターの手の上なのだ、と。
涼は翔たちの様子を観察する。一見、違和感はない。しかし、だからこそ画面の動きがおかしいと思うのだ。モンスターの動きは、明らかに翔の動きを予知しているかのようだ。何かしらの細工がなければ、これは出来ない。
「(周りに監視カメラの類はない。隠した手元を見ている訳でもない。……まさか、本当に翔の心を読んでいるのでは?)」
涼は、ひとつの可能性に辿り着く。これは翔に早く知らせなくては。そう考えた涼は、念話の能力で翔に伝えることにした。
「<翔! もしかすると、相手があなたの心を読んでいるかもしれません。先ほどから動きが不自然です。何か対策しないと、負けてしまいますよ!>」
「<……へぇ、なるほどねぇ。その可能性があったか。……よし、涼。作戦だ>」
そうしている間にも、モンスターが先に一点を取っている。翔の操作がおぼつかないのもあってか、モンスターは余裕そうだ。
「はは、これは楽勝ですかな」
「……うるせぇ。今に見てろ、逆転勝ちしてやる」
そう言いながら、翔は涼に目配せする。そんな翔に、涼は小さく頷いた。
モンスターは余裕綽々と言った様子だ。彼は「心を読む能力」を使って、今まで何度もテレビゲームで勝ってきた。ゆえに、今回も自分の勝利だと確信していた。
「(たとえ、この能力を見破れたとしても、水瀬兄弟に勝ち目はない。テレビゲーム自体に、イカサマをすることは叶わないからだ。この状況、どうあがいても私の勝ち――)」
モンスターがそう思っていた時だった。翔が突然口を開いた。
「予告するぜ。俺はストレートにゴールへ突っ込む」
「ほう……わざわざ予告とは、親切なことをしてくれますねぇ」
モンスターはそう言いながら、翔を見る。翔の心を読み、先ほどの予告が真実なのかどうか確かめた。
「(ふむ。翔の心は真実を言っている。ならば、ゴールを邪魔すれば……)」
そう考えながら、モンスターはコントローラーを操作する。しかし、どういうことか、ストレートにゴールに突っ込むはずだった翔のキャラクターは、別の選手にパスを繋ぎ、その選手にゴールを託したのだ。
「な……なにッ!?」
予想外の出来事に、モンスターは思わず叫ぶ。それを見て、翔が面白そうに笑っていた。




