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Backstreet Tokyo  作者: 夏実
season1

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1/6

第一話 プロローグ

 眠らない街、東京。この東京に、二人の男が住んでいた。彼らは「何でも屋」を経営し、文字通り何でも依頼を受け取って仕事をしていた。

 この二人の男たちは、実は双子の兄弟。しかし、性格的な観点から仲はあまり良くない。

 黒髪の兄「水瀬 翔」は、酒とタバコと女が大好きな、いわゆるダメ人間だ。オイルライターでタバコを吸うのが好きで、いつもタバコを咥えている。ギャンブルは好きではないらしいが、本人曰く「強い」らしい。だらしない彼が言うのだから、本当か嘘か分からないが。

 そんな兄とは対照的に、白髪の弟「水瀬 涼」は、緑と紫のオッドアイをもつ品行方正で礼儀正しい好青年だ。常に敬語で物腰柔らかに話し、客からの信頼も厚い。そんな真面目な性格ゆえか、だらしない兄とは喧嘩ばかりしていて、普段は会話もロクにしないようだ。

 そんな彼らだが、どうも裏にワケがあるようだ。


 良く晴れた日曜日の朝。兄の翔がベッドで寝ていると、既に起きていた弟の涼が起こしにやってきた。

「……起きてください。起床時間ですよ」

「お前は起きるのが早すぎんだよ。俺も疲れてんだよ、もうすこし寝かせろ」

 なおも寝ようとする翔を、涼は問答無用で叩き起こす。かなり手慣れた様子だ。

「そんな言い訳が通るわけないでしょう。起きなさい、さもないと実力行使に出ますよ」

「へいへい……。相変わらずだねぇ、お前は」

 涼に叩き起こされた翔は、髪を掻きながら起き上がる。翔はそのまま洗面所へ向かい、歯を磨く。その後ろで、涼が見積書を見ながら声をかけてきた。

「……依頼が来てます。見積もりも済んだので、後は現場に向かうだけです」

「へぇ、朝イチで依頼が来るなんて珍しいもんだな。で? 用件は?」

「……害虫駆除、です」

 その言葉を聞いて、翔がぴたりと動きを止める。振り返って涼の顔を見ると、涼も厳しそうな顔をしているのが分かった。

「なるほど、ね。……よし、支度するわ。お前は?」

「もう準備は出来てますよ。あとはあなたの準備次第です」

「さすが、早いねぇ」

 軽口を叩きながらも、翔はいつものだらしなさを見せず、素早く準備をする。準備を終えた翔は、涼と共に現場へ向かった。

 現場に到着すると、既にそこは大惨事となっており、住民が避難している。そして、兄弟二人の前には目を疑う光景が広がっていた。

「おっと……。こいつは少し本気にならないといけないか?」

「そんなこと言ってる場合ではないでしょう。一刻も早く片付けますよ」

 彼らの目の前にいたのは、巨大な鬼だった。鬼は金棒を持ち、それを振り回しながら暴れまわっている。

 すぐに片づけなくてはならない案件だ。二人はそう判断し、鬼に挑む。

「よぉ、そこの鬼さん。あんた、俺たちと最悪な時間を過ごさないか?」

『人ごときが何をほざく! 貴様らなぞ、蹂躙してくれる!』

 翔の挑発に鬼はまんまと乗る。鬼は翔に向かって金棒を振り上げたが、先に先手を打ったのは涼だった。涼は鬼の顔面目前まで迫ると、勢いよく蹴り上げた。鬼の顔面は凄まじい勢いで吹き飛ばされ、大きくその体が揺らいだ。

「相変わらずスピードだけはあいつに勝てないねぇ。んじゃ、サクッと倒しますかね」

 大きく揺らいだ鬼の体目掛けて、翔は思い切り拳を振る。衝撃波と共に鬼の体が裂け、地面に四散する。残ったのは、鬼が持っていた金棒だけだ。

「思っていたより早く片付いたようですね」

「まぁ、思ってたより強敵じゃなかったしな。しかし、この金棒なんとかして売れないか? 売れればその分、俺の酒代とタバコ代に出来るんだが」

「……万が一売れても、経営維持のために使いますからね」

 一仕事終えた兄弟は、報酬を受け取るべく事務所へ戻っていくのだった。


 確かに彼らは「何でも屋」だ。しかし、それには裏がある。それは、彼ら兄弟が異能を持った人間であることだ。

 数年前から、東京では謎のモンスターたちに襲われる事件が相次いでいる。先ほどのような大きな事件から、人間との小さな争いまで多岐にわたっていた。これを受け、水瀬兄弟はモンスターを退治すべく、「何でも屋」を立ち上げた。もちろん、モンスター討伐以外にも業務は受けているようだが。

 日ごとに増えるモンスター討伐依頼。これは、東京で巻き起こる事件に立ち向かう、双子の兄弟のお話である。

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