一時的に雨宿りした家がクラスの引きこもりの家で、彼氏と勘違いされた結果なぜか悩みを聞くことになった件
冬の冷たい雨は、容赦なく疲れた身体に刺すように降る。
俺は下校中のにわか雨から逃れるように、すぐそこの家の庇の下に入った。
「あらその制服……もしかしてあなた、ユキの彼氏さん?」
すると突然、買い物袋を提げたおばさんが帰ってきた。
「あっいや、違うんです! すみません、勝手に入っちゃって。すぐに出て行きます」
「良いのよ! こんな酷い雨の中びしょびしょじゃない。とりあえず入って入って!」
「えっ? ちょっ」
言われるがまま家に入れられ、タオルを渡された。
「あの子ね、最近スマホを見ながらニヤニヤすること多かったの。ほらユキ! 彼氏さんが来てくれたよ」
「いや、違いますって。誰ですかユキって」
抵抗する余地もなく部屋に押し込まれ、母はどこかに行った。
布団に包まってそこに居たのは、入学して数日登校して以来一度も姿を見せなくなった、クラスメイトの青野由紀だった。
「ごめん! なんか、すごい勘違いが起きていて」
「いや、私のお母さんが全部悪いから気にしないで」
「大丈夫だよ。……やっぱり突然で申し訳ないし、帰るね」
「待って。まだ雨降ってるし風邪ひいちゃうからさ、もう少しここに居て?」
由紀は立ち上がろうとした俺の手を掴んで座らせようとする。
袖から見えた小さな手は、キラキラ透き通る雪のようで美しかった。
「……学校、来ないの?」
「うん……虐められるのが怖くて」
入学してたった数日で虐められていたとは全く知らなかった。
「ごめん、辛いことを思い出させちゃった?」
「ううん。今は辛くはないから」
「もう雨やんだかな。帰らなきゃ」
「今日は、ありがとね」
「えっ、何で?」
「話を聞いてくれて。ちょっと悩みを話すだけで、こんなにもすっきりするんだね」
「俺は何も――」
「いいの。じゃあ、気を付けて帰ってね」
彼女に一つだけ言っておきたいことがあった。
「あのさ、由紀はこうして俺とも話せてるし、学校でも皆と仲良くできるはずだと思うんだ」
「それは――――」
「悩みがあったらいつでも聞くからさ。あと、隣に居るくらいはできるから。一緒に学校、行こう?」
「うん……ありがと」
部屋を出ようとブレザーを着て立ち上がった時、由紀が付け足して言った。
「悩みを聞いてくれるの、誰でも良かった訳じゃないから」
振り向くと、照れながら小さく手を振る彼女の姿があった。
その眩しそうな表情に、余計引き込まれる。
「お母さんには誤解を生むかもだけど、また来るね」
「ふふ、いつでも来てね」
指定キーワードの雨宿りは一瞬でした。
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