7. 利発な子供
ああ、面白い。あの子供、人畜無害だという面を見せておきながら、男をどこまで利用できるのか見定めて居た。体格のいい男を前に、冷静に考えるとは。きっと、賢い子供なのだろう。
ああ、本当に面白い。
誰も居ない通路を歩きながら、男は一人、笑いを漏らした。
だが、男にその思惑がばれているとは思いもよらないのだろうな。これまで、自分よりも賢い者に出会った事が無いのだろうか。きっとそうなのだろう。あれは随分と賢い。
でも、幾ら賢くとも所詮は子供だ。先を読む力は全くと言っていい程育っていない。
あれがもっと成長していたら危なかったと男は思った。
男は特別賢いわけではないのだから、危なかった事だろう。自分は少し分析が出来るだけなのだから。育っていない状態で出会えたのは、男にとって幸運と言える。
だが、あの子供は既に、己よりも賢い。頭の回転が速く、多少の予測も出来る。ただ、予測のパターンは少なく、可能性の高い物を見つける様な行為は苦手なのだろうな、と冷静に分析をする。
先を読む、思考を読む等の行為は男をかなり下回っていたが、男の感情を見極める事等は異様に高かった。
あれは、自分が周囲からどう見えるのか、それを良く解っている目だった。自分と物事を切り分け、完璧に俯瞰していた。
感情は強いのだろうが、それを押さえつける程の理性を持っていた。
勘違いしないように言っておくと、莉里は十分上手くやれていた。年の割には、と付きはするが。だが、男も己と似たタイプだった。それに気付けなかった。何より、相手がこの男だった。それが、莉里にとっての誤算だった。
さて、あの子供。どうしようか。
ああでも、その前に、熱心に嗅ぎまわっている兵士を片付けてしまわなくては。それは、少し面倒に思った。
だが、それもすぐに消え去る。
今男の脳内を占めるのは、面倒な兵士ではなく、あの珍しい利発な子供。
男は口角を上げ、これから起こることを思い描いて、ひそやかに笑った。
次話は27日20時に投稿。
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