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異世界事件簿 ~魔法世界の誘拐事件 ~  作者: 黎明
本編

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12/12

11. 特別は鍵の向こうへ

 

 静かだ。

 自分の呼吸の音だけが莉里の耳に届く。

 バクバクと心臓が高鳴った。今更、高揚感が出てきたらしい。それと同時に、足元が無くなる様な、嫌な浮遊感を覚えた。

 恐怖も顔を見せたらしい。どうせなら、見せないまま隠れていればよかったのに。

 なんて、そんなの無理か。


 頭が痛い。ゆっくり息を吐く。体中の息を吐き切りそうなくらい、深く深く。

 落ち着くためのものだけど、なんとなく、重苦しく感じた。


 体から力が抜けていく。何時の間にか伸びていた背が、丸まっていく。

 伸ばしていた覚えは無いんだけど、・・・気を張っていたからかな。

 頭痛はましになった。けど、くらくらする。疲れたからか?あんまり考え事したくないや。でも、元気でも考えたくはないな。

 けど、そういう訳にもいかないからなぁ。


 さっきの声・・・。えっと、男と子供・・・?かな。うん。多分子供。割と高い声だったし。


 鉄格子の隙間から、ちらっとだけど茶色っぽい服の端が見えたけど・・・子供の方の服、かな?でも、なんだったんだろう。洗ってないのか?大分汚れてた感じだったけど。

 ・・・・・・これは、今考えてもよく分からないな。


 今は内容について考えよう。そっちなら、役に立つかもしれない。自分だって、推測くらいは出来るんだから。とは言っても、あんまり分かってないし、理解出来るかも怪しいんだけど。



『おらっ、とっとと出ろ』

『あ、うぅ。・・・ぐっ』

『チッ、あくしろよ』

『ひ、ごめ、なさっ・・・』

 ガラの悪い男と、それに怯えてる様子の子供。微かに鈍い音がして、くぐもった声を出した子供。まさか、殴られた・・・?

 それから、鍵の閉まる音がして・・・


『行くぞ。遅れんなよ』

『は、い・・・』

 で、壁を蹴る音がして・・・二人分の足音が離れて行った。



 声も小さくてはっきりしてなかったけど、反響してくれたお陰でなんとか聞き取れた。

 それにしても、異常なくらい怯えてたけど・・・・・・虐待・・・?

 あ、僕と同じで誘拐された子供とか?でも、自分は殴られたりなんてされてないし。莉里の所に来た男の人は、優しかったけど・・・大分、態度違うな。人当たりも、いい感じだったし。

 って、駄目駄目。警戒しなきゃ。あの人、自分で誘拐犯側の人だって言ってたもん。簡単に信じちゃ駄目。


 えっと、纏めると


 ・自分以外にも子供が居る(その子も誘拐された?)

 ・虐待疑惑(これに関しては、男の性格の違いかも?)

 ・僕の所へ来た男とは違う、別の子供の所に来た男が居る(二人とも、似たような仕事をしてる?)


 ・・・・・・か。


 それにしても、大分、僕との扱いが違うな。男の『莉里は特別』だと言う言葉。

 何故?何が特別?容姿?

 引っ掛かっている事はある。男の、自分の性別を知った後の『どうしよう』と言う呟き。思わず漏れた、という感じだった。態と聞かせた、というのは可能性が低いと思う。


 莉里が男だと、何か不都合がある?

 あるとして、それは何?

 女だとできて、男だと出来ない事がある?


 それともう一つ、


 ―――攫ったのは俺じゃない


 攫ったの‘‘は‘‘。

 別に攫う役割の人が居るのは、確定してもよさそう。



「よっ」

 体がびくりと跳ねた。

 声の主は、今まさに考えていた人だった。

「お、お兄さん・・・?」莉里は驚いて目を丸くする。

 気付かなかった。

 考え込んでいたから?

 駄目だな、一度何かに没頭すると、周りが見えなくなる。


「どうしたんですか?」

 どうしたのだろう。莉里に、何か用なのだろうか。

「・・・・・・」男は答えない。どこか困った様な顔で、黙り込んでいる。

「あの、お兄さん・・・?」

 何なのだ。意図が分からない。

「あー、その、な?お上から指示があってさ。ちょっとお前さんを連れて行かにゃならんのよ。つーわけで、鍵開けっからついてきて」

 お上・・・?やっぱり、ある程度ちゃんとした組織なのか。

(ここから出られる・・・?連れて行く所って?そもそも、指示って一体・・・)

 疑問だらけだ。


 何で男が困ってるんだ?

(何かあるのか・・・?)

 考えないようにしないと。マイナスな思考は、止まらないから。


 自分の口からか細い呼吸音が聞こえる。自分の心臓が撥ねる音が、頭に響く。


 ガチャン、と牢の中に金属同士がぶつかりあう音が響く。やけに大きく感じた。



 鍵が開く音がして、扉が開けられる。

 近くに来た男から、あの独特な、つんと鼻につくような甘い匂いがした。


 口の中がカラカラに乾いている気がする。硬く唇を結び、促されるままに牢を出た。



 何処からか、肉を焼くような、焦げたような臭いが漂って来た。

 気のせいだと無視して、男について歩きだした。

次話は27日20時に投稿。

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