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異世界事件簿 ~魔法世界の誘拐事件 ~  作者: 黎明
本編

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10/12

9. 変な臭いと

 

 冷たい床の感触が、最初に戻ってきた感覚だった。

 んぅ、と自分から少しくぐもった声が出る。

 瞬きを繰り返していく内に、視界が明瞭になる。ツンと、甘いような変な臭いが鼻を刺した気がした。

 ズキ、と頭に鈍い痛みが走り、一瞬、視界が捻じ曲がった。

(・・・・・・今のって、一体・・・?)

 頭に何かあたってる。なんだろう。


 上を向くと壁があった。ああ、硬い何かは壁だったんだ。

 地面に手をつき、ゆっくりと体を起こす。頭がくらくらする。

(えっと、・・・ここは、どこ・・・だっけ?)

 痛いなぁ、なんて頭を押さえつつ壁に凭れかかる。


 暫くぼう、としていると段々と意識がはっきりしてきた。それに合わせて、頭が回転を始める。

 確か、眠たくて、寝ていた筈だ。ここ最近、というか運ばれていた時からすぐに眠くなる。変な事ばっかり、確かに疲れていた。けど、それでも可笑しい。

 だって、僕は不眠症に近い状態だった。なのに、なんで・・・?


 ・・・・・・変だよ。


 突然睡眠を求めるようになった体。

 でも、無理矢理眠らせる様な物でもない・・・気がする。


 そして、さっき鼻についた変な甘い臭い。

 あれ、なんだったんだろう。一瞬だったけど、多分、気のせいじゃない。嗅ぎ慣れない・・・甘くて、鼻にツンとくる変な・・・、なんとなく、薬品っぽいような・・・。


 頭が痛い。背後の、ひんやりとした壁が心地よかった。

 また、あの変な臭いが鼻を刺す。

 一瞬、意識が遠くなった気がした。


(・・・・・・・・・)

 変な想像が、頭をよぎる。

 心臓が嫌な音を立てた。


(いや、そんなまさか・・・ね)

 あり得ない。ただの勘違い。僕の考え過ぎだ。


 あー。駄目だな、一人だと。嫌な考えばっかり浮かんできちゃうや。

 上を向いて、手で目を覆う。


 一人と言えば・・・、と、頭に一人の男が浮かんだ。

 誘拐犯―――否、グループか。あの、お人好しそうな、ガタイのいい男。

 ・・・・・・体格は、関係無いか。私情を挟んじゃいけない。

 それが、命取りになるかもしれないんだから。


 死が迫って来るって、身の危険があるって。草原で目が覚めた時から、嫌になる程実感してる。


 大丈夫。僕なら出来る。ちゃんとやれる。

 生きるって、決めただろ。なんとなく、じゃなくてさ。


 って、あれ?今、なにか聞こえたような・・・・・・。

 空耳か?

 この牢の中・・・な訳ないよね。外からか。

 鉄格子の所まで、そっと這う。物音を立てない様に、細心の注意を払って。理由は、よく分かってないけど。

 ぎりぎりまで近づいて、耳を澄ませてみる。


 ・・・・・・ん、と・・・なにか聞こえる・・・?

 やっぱりか、空耳じゃなかった。

 人の、声・・・か?うん、人の声だこれ。

 二人以上いて、会話してるみたいだけど・・・ぼそぼそ言ってて解らない。聞き耳を立てれば・・・いけるか?んー、まあ、暇だし。どうせやることも無いんだからやるだけやってみよう。



 それに、僕はこのまま黙って待てる程イイ子では無いから、さ。


 莉里は、勝気に口角を上げるのだった。

次話は13日20時に投稿。

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