幸せの記憶 ~別れの時間~
〜リーリア・ヴァルシュクライン〜
馬車は、ルミナス王国(ノーベン家)の宮殿を取り囲む広大な城壁を出ると、まもなく、見渡す限りの広野へと進み始めた。黄金色に染まる麦畑が、夕暮れの風に揺れている。リーリアは窓の外を眺めながら、深く息を吸い込んだ。広野を吹き抜ける風が、彼女の黒い髪をそっと揺らす。その風に乗って、遠くの森から運ばれてくる草木の香りが、リーリアの心を穏やかに満たしていく。
「……」
日が沈み暗くなる頃
山賊が馬車を囲んだ。
「止まれぇ!!」
御者は焦りブレーキをかける。
「金目のものだけ置いていけ、そうすりゃなにもしねぇ」
「お嬢さん潔く渡しましょう。あいつらは平気で人を殺します。」
御者は唇が震えている。
「おい!早くあの女を下せ!」
それに比べて彼女は冷静だ。
「敵は6人相手武器ナタ、オノですか。御者さん少し 待っていてください。」
馬車から降りて背負った杖袋から杖を取り出す。
「あなた方に最後のチャンスを与えましょう。私の名前はリーリア・ヴァルシュクライン。
私はルミナス王国直属の宮廷魔術師である。
それでもなお私に敵意を向けますか?」
場が静まり返る。
彼らは笑い
「お嬢ちゃん舐めた態度してんじゃねぇよ
それにその杖高そうだなぁ。いいかぁすぐにこのガキをひっとらえろ‼︎!」
6人の刃物を持った男が襲いかかる。
ため息が混じる。
「はぁ,,,いいでしょう。これより宮廷魔術師の名の下に"6人を殲滅します。"我々はあなた方にいかなる情も与えません。」
次の瞬間杖に向けてこう言った。
「六つの水輪、星を巡り、心臓を貫く針となれ
"アクアランス"」
呪文が完了した瞬間、6つの水球は弾け、無数の鋭い水の針へと姿を変えた。飛びかかる山賊たちに目掛けて進む針は、標的の胸元めがけて、瞬く間に突き進んでいく。標的は、心臓を貫かれ血が無惨に飛び散る。そして、苦痛に顔を歪ませた。
「行きましょうか御者さん。」
「は、はい。」
御者は怯えながら馬車は動かし目的地まで進んだ。
ふと、空が朝日を照らして光が溢れ出す。
「 ……レイ・アストレア。」
〜宮殿〜
「レイ様昼食のご準備ができました。」
「うん。すぐに行く。」
バタン、 扉が閉まると同時にレイは言う。
「ウィリアムー、今日から来てくださる、家庭教師はどんな人かなー」
(美人な若いお姉さんとか来ないかな。)
「レイ様。今日から来られる、魔術師の方はルミナス王国直属の宮廷魔術師であり非常に優秀な方がお越しになります。」
(まじか。…と言っても全くとしてその宮殿魔術師のことがわからない。それにそもそも魔法をどう出すのかさえ知らない。)
ウィリアムは再び口を開いて
「レイ様はアストレア家として強く優秀な魔術師になってもらいたいという願いをもって今回ご主人様がご依頼をしました。
ですから自分がこれから魔術師となり何がしたいのかを決めて、これから頑張ってください。」
(魔術師になってこれからどうすればいいのだろうか。
俺は今までただ漠然と目標は決めれた。でも、そこに到達するまでの想像がつかない。つまり、力がないってことだ。
何度も何度もこうやって考える。結局自分が頑張らないからだ。)
「ありがとうウィリアム。期待に応えられるかな。」
昼食を終えて午後が始まる。
もうそろそろかな。
うまく喋ることができるだろうか。
逃げないでいたい。もうチャンスを逃すわけにはいけない。
"覚悟は決めた。世界一の魔術師になって
世界を変えてみせる。"
「レイ様」
「来た…。」
服を整えて扉を開ける。
鼓動はやはり高くなる。
ドアの向こうには馬車がある。
馬車から人が出てきた。
出てきたのは黒髪で背が少し小柄、加えて顔立ちがどこか大人のようで少女のように見える。背中には何かを背負っているように見える。
魔法の杖だろうか。
ここに決て初めて女性と話す。
何を言い出せばいいのか思いつかない。
自然と顔と耳が温かく鼓動が高まっていく。
気づけば彼女は俺の目の前に立って背の低い俺と視線を合わせるためか、膝を曲げて口を開いた。
「こんにちわ。今日からあなたの家庭教師をします。リーリア・ヴァルシュクラインと申します。」
(何を言えばいい。やばい、やばい。)
「…レ、レイ・アストレア…と申します。よろしくお願いします。」
彼女は微笑むように手を出した。
自然と手を伸ばして握手を交わした。
早速俺は静かな部屋に戻り先生から魔術について教わった。
「レイ、魔法を最も効率よく莫大な魔力を生成するのかわかりますか?」
「…自分の心の思いと呪文とか?」
少しか考えるかのようにして先生は言った。
「そうですね。とても良いと思います。ただより必要とされることがあります。それは、"冷静さ"です。魔法というのは呪文を唱えることだけで発動するわけではありません。先ほどレイの言った、心の思いと呪文は非常に大切です。魔法は心のようなものと思えばいいでしょう。
人間の心の中は誰しも弱く脆く乏しいのです。つまり、物事を冷静な実態として捉えることこそができなければ、魔法を使うことができなければ初めの魔法は現れないでしょう。」
(冷静か、、、)
間を開けて先生は再び喋った。
「魔法はおおまかな種類に行われます。 火、水、風、土、光、闇の六つに別れます。それぞれ人により覚醒する属性は異なります。」
(なるほど覚醒か、)
「これで魔法の概念は終わりです。次に外へ出て魔法の特性についてみていきましょう。」
言われるがまま外へ出た。
宮殿の外ではいつものように、老夫婦が周りの木々を整えている。
緑の草地が程よく流れて、草地にはいる。。
「これから私が魔法を行います。属性はあなた自身が知っています。本来の姿が見えるはずです。」
そう言って先生はお手本を見せるかのようにして、手を前に向けた。」
(…)
手から何か赤い球体のような渦が作り出される。
ゆっくりとただ貪欲に赤色が濃くほんのり薄い青に見えてくる。
さっきまでの風が一気に強まる。周りの木々は大きく揺れる。
(うそだろ、)
そうして、何事もなかったかのようをゆっくり俺の方へきた。
「あれが私が持ち合わせている炎の魔法です。
レイ。今度はあなたの番です。」
緊張する。初めての魔法だ。
(手を前に向けて… いけ!)
「・・・・・・」
(あれ?)
「レイ、ただ手を前に向けるのではありません。覚醒するためにはさっきほど述べた冷静に覚醒させる。
多様な感情を心に抑え込むことが重要になります。」
冷静に…
ーーーいつまでも変われやしない
冷静に… いつまでも一人
冷静に… いつまでもーーー
ならどうしろってんだ
心の中の俺はいつも笑っているように見える。
冷静に… 冷静に…
瞳の中で葛藤する。
手の前に何か暖かい何かがある。だんだん何かが集まる感覚がある。
目を開けたころには、赤い球体から炎があふれ、
涙を消し飛ばして 瞳が大きく揺らぎ
周囲からの風が強まる。
先生がこちらへ来る。
「抑え込む。」
(抑え込む。…)
なぜだろうか一度経験したことがあるかのように溢れる炎が収まる。
気づけば手のひらに何かがのっている。
赤い宝石のような指輪だ。とっさにポッケにしまい込む。
振り向けば先生がただまっすぐ瞳がうっすらと…
何か言いたそうにしていた。
「おめでとうレイ。 あなたは今日より魔術師としての資格が認められました。」
(魔術師。)
老夫婦の声が少し耳に入る。
「お坊ちゃん、わずか5さいで。・・・」
再び先生は口を開いた。
「レイ。 本来この覚醒は一日でできるものではありません。レイの強い思いがあったからこそできたことなのです。ですから自信を持ってください。」
(俺は全くとして自分に打ち勝てなかった。
自信が持てるのだろうか。)
こうして初の授業にして、魔術師としての資格を獲得した。
その夜、宮殿はやけに騒がしかった。
ここにきて5年少しは成長しただろうか。
食事に先生が呼ばれた。
部屋は真っ暗だ。
やけに食事の空気が暗い
「レイ。あなたは私たちの自慢の息子よ。」
「レイ。よくやった。」
(……)
「ありがとうございます。父様母様」
無理やり二人は笑っていた。
先生はただ無言で食事をした。
きれいにナイフで肉を切り口に運ぶ。ローソクが一つ消えた。
その瞬間、
「リーリヤ殿我が息子レイの覚醒。助長してくださりなんとお礼を申し上げればよいか。」
「いえ、私は何もしておりません。ただレイの才能が素晴らしかったと思います。」
父さんは重い顔に変わった。
しばらく沈黙が続いた。
「我々アストレア家よりお願い申し上げます。これからリーリヤ殿にお願いがある。
…レイを連れてルミナス王国へ秘密裏に連れて行ってほしい。これで我が息子の有用性は証明できたはずです。」
(……なんだよ急に)
「父様?母様?どうゆうことですか?」
「……我々ライオス・アストレアおじさまは王の座を弟であるアトラス・アストレア一族に譲りました。ですが我々は守られているわけではなかった。現王様であるアトラス二世は今後を考えて秘密裏に一族根絶やしを考えていたのです。ですから我々にはもう時間がない。
事前に手紙でお伝えしたはずですリーリヤ殿我々ライオス一族としてではなく、レイ一人の命のためにどうか。」
「父様?何を言っているのですか?ねぇ母様何か言ってよ」
(なんなんだよいきなりどっかに行けって今日まで普通だったのに急にどっか行けって
何が起きてるんだよ!)
「私、レイの母からもお願い申し上げます。」
「ジゼルからも申し上げます」
みんなが頭を下げて先生にお願いをする。
「ねぇ何か言ってよウィリアム!ウィリアム。何が起きてるんだよ!」
その時察した。すべてを。
もう遅いのだと、ウィリアムはただ一人泣かずに顔を下げていた。
”どうか息子を!”
ナイフを置く。先生は席を立ち荷物も持ってこう述べた。
「…レイ・アストレアの有用性をこれより確認ができたため
ルミナス王国直属宮廷魔術師リーリヤ・ヴアルシュクラインの判断によりこれより、ルミナス王国国民としての資格、保護の保証を決定します。これより、レイ・アストレアの名前を”ユリウス・アルヴァン”とします。」
「なにをいってるの?ユリウス?先生、ねぇなんでみんな僕だけのけもの?何か言ってよ、、…」
自然と涙があふれた。
母「レイ…。」
もう無理だって知っていた。だけれども受け止めたくなかった。
「ありがとう…」「ありがとうございます。」
(うるさいうるさい。なんだよ急に連れて行けって。やめろやめろもうやめてくれ。頼むから。)
「なんだよ!な…」
視界がくらむ。
(いやだ…まだ俺は。)
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男(???)「君は変わらない一生。知ってたじゃないか。そんなうまくいくような世界じゃないって。」
ユリウス「…。」
男(???)「残念ながら君に選択の余地はない。早く死んでくれ。そうすればまた。まあ君にはまだわからないよ。」
ユリウス「絶対に。」
男は何も言わずただ自分の見えない顔を触って歩き出す。
”もう後悔なんてしない”
男(???)「ずっと君は後悔をする。すぐに終わってしまう出来事。急な出来事ぜーんぶ
無駄だってことさ。」




