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第6話「疑問と出会いは突然に」

「──もしかしてこのアカウント名である"ikutir ustuka"ってさ立輝の事?」

「………は?」

突然の問いに立輝はこいつ何言ってるんだと感じた。それも無理は無い。いきなり秀の話から自分の話に移り変ったからだ。

「きゅ、急になんだよ。さっきまで秀の話だっただろ。」

「話をすり替えるのがいきなり過ぎないか?さっきまで何の話をしていたんだよ。」

立輝は突然の問いに驚き、答える気は見せない。

「こんな時に聞いて申し訳無い。でも問いに答えて欲しいんだ。立輝。」

「お願いだから答えてくれないか?だってあんな凄いけど怖い歌詞を見せられたら…心配するだろ?」

「はぁ…………」

立輝は秀の言い方に押されたのか仕方が無くアカウントがどうかを話す事にした。

「──結論から言うと…あのアカウントは僕のものだよ。よく分かったね。」

"ikutir ustuka"の正体は阿久津立輝だった。実はこれに関しては前の話で正体が分かった人もいるかもしれない。まずそもそも前から読んではいけない。そのまま読むと意味不明な言葉になるからだ。でもどうすれば正体が理解出来るのか。それはこの"ikutir ustuka"という単語を逆から読む事だ。逆にすると"akutsu rituki"になる。これを読むと"あくつりつき"、つまりは阿久津立輝となる。これで正体が分かる。

「…やっぱりそうだったのか。」

「そのアカウントを逆に呼んだら阿久津立輝になる事に気付いたんだ。」

「…っ。名前はもう少し難しいものにすべきだったか。」

実は立輝はアカウントの名前の候補がいくつかあった。中でもまあまあな時間悩んだのは"りっきー ラーメンLove♡"、"ただのラーメンが好きなヤッツー"、"我が同志に憎しみを抱える悪魔 厨二"などである。だがこれはなんか痛いなと自分で感じたのでシンプルだが絶妙に分かりずらい"ikutir ustuka"にしたのである。

「…お前、確か音楽は何かもう嫌という顔をしていたよな?どうして音楽をまた始めたんだよ。」

「………そんなの…復讐の為だよ。僕の…ただの愚かな…」

「……お前が知るべき程の事は無い。そんな明るい理由なんかじゃないよ。」

「────っ!」

すると、立輝は突然走り出して何処かに行ってしまった。

「え?ちょっと!立輝!?」

秀は立輝を追い掛けたが追い付く事は出来なかった。

〜空き教室〜

「(いやだいやだいやだ!言わないで!僕がまだ音楽やっている事!)」

「(て言うか最悪!秀にそれがバレるなんて!……このアカウント削除しようかな。)」

立輝は何処かの空き教室に逃げ込んだ。そして其処で一旦リラックスする。

「(そうだ。アカウントを消せば秀も"ikutir ustuka"には興味無くなるだろう。だから…『アカウント削除』。)」

立輝は落ち着いた後、自分をアカウントを削除しようとする。理由は秀にバレてしまったから。そして──もしかしたら元仲間がこのアカウントの動画を見るかもしれないからである。

──(このアカウントを削除します。)

「…『はい』」

──(……アカウントを削除いたしました。一旦、読み込んで下さい。)

「読み込みボタンっと。」

立輝は本当にアカウントを削除してしまった。だが、実はアカウントは削除してから五ヶ月くらいならユーザー名、メアド、パスワードのどれか二つを覚えておけばアカウントをまた取り戻せる。今の立輝はそんな事なんかする気配も無いが。

「よし。アカウントは…うん。削除されたな。」

「これでいいんだ。だからもう…僕に関わって来ないで…秀…」

立輝は泣きながら言った。そしてかつての出来事を思い出す。

「阿久津さんってさ何か僕達と生きている世界が違って言うか…」

「俺達に見えないものが見えるというか…そんな不気味さがあるよな。」

「やっぱりさ。アイツ基本、怠け者だけど才能はピカイチなんだよ。だから…俺たちがどう足掻こうが、届かない。」

「アイツと友達になっても才能とかで置いてけぼりにされるからならないでいようぜ。」

〜現在〜

「(もうあんな事になんかなりたくない…)」

「(僕は本当は…音楽がやりたかっただけなのに…)」

立輝はただ泣いた。誰もいない所で、ひっそりと。

「(そう考えたら…リリックミューの皆は優しかったんだな…)」

「(あの人達は僕を否定する事は無かった。それに差別的な事なんて一切言わなかった。)」

一人でリリックミューの事を思い出す立輝。すると、ドアを叩く音がした。

「…………音がする。誰?」

「──失礼する。」

其処に入って来たのは立輝も知らない人だった。

「貴方…誰ですか?」

入って来た人は答えた。

「俺は区川(くかわ)隆人(りゅうと)。…アイツの兄だ。」

その人は何と区川啓斗の兄である人物だった。

「え?もしかして貴方が、区川啓斗先輩の兄なんですか?」

「ああ。お前の事は知っている。アイツから聞いた。…お前、アイツ曰く親切な人らしいなァ。」

それを言われた立輝は驚いた。

「え?僕が親切!?そんな事は無いと思いますけど…」

「まあ、アイツの言っている事だ。アイツは時に人を過剰に評価する。良くも悪くも、な。」

「おっと無駄な話があったなァ。…まずは俺がわざわざこんな所に入ったかを言わないと。」

「実は此処は演奏部の部室だ。と言っても、演奏部は真面目な奴が少ないから殆ど遅れてやって来るか、来ないかの二択だがなァ。」

演奏部とは他の学校で言う軽音部である。だが、この学校の今の演奏部は何処か怠惰な生徒が多い。

「そ、そうなんですね。でもどうして僕がそこにいても何も責めないんですか?」

「それは……きっとお前には悩みというものがあると考えたからだ。」

図星だった。立輝は何も反論出来なくなった。

「……!」

「実はこれは噂だが悩みのある生徒は此処に来るという噂があってなァ。今日それを見るまでは大袈裟な噂だと感じていたが……」

「どうやら本当みたいだなァ?」

「もし悩んでいるなら俺が話を聞こうかァ?」

「え、良いんですか?でも隆人先輩も忙しいんじゃ…」

「いや、俺が所属しているのは演奏部だけだからなァ。演奏部なんて来る奴の方が少ないから、別に相談に乗っていても怒られるという事は無いぜェ?」

「最も自分で考えたいのなら相談しなくても良いが。」

「ごめんなさい。お願いします。隆人先輩。相談乗って下さい。」

「おう。任せておけよ。」

そうして立輝は自分の悩みを啓斗の兄である隆人に相談する事になった──。

皆さんこんにちは。小山シホです。さて、何ヶ月も更新が止まってしまいすみません。今回、かなり急展開です。区川隆人が出てきましたしね。

さて、次回から自分の過去を立輝が秀以外にも話していく事になります。

果たして彼は自分の過去にどう向き合うのか、そして他の三人は何をしているのか。お楽しみに。

次回予告

自分の過去、悩みを言う立輝。隆人はそれに同情して行く。隆人が立輝の心情に同情出来る理由は──。

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