月夜のヮルツ
ーー面倒くさいな。
でも、練習しとかないと…。
後で痛い目に遭うのは嫌だ。
やると決めたからには、完璧に…。
もう、日付けが変わる。
やる事もないので店に行くか…。
「おう。モア!」
ーーなんで、人間のくせにこの時間で晴れやかな顔なんだよ…。
これから、苦しい特訓が始まるとも知らず。
ーー今夜は、もう店を締めるらしく。
店先だと、薄暗い。
ソレイュの部屋は、散らかってる。
月明かりの方が全体的に明るいか?
屋根でやる事に。
「うぅ、風が冷てぇ〜!」
踊った事ある?
「簡単なのならダントンさんのスヮリィで。」
ーーふぅん。お手並拝見。
三拍子で踊るやつ知ってる?さぁ手を、教えてあげるから…。
ーー簡単なのでいいか。
ァン、ドゥ、トヮの三拍子で…。
顔は、真っ直ぐ。
姿勢は、正しく。
胸を張る。
さぁ、ァン、ドゥ、トヮ。
脚は、前。
後ろ。
横。
回りながら進む。
「こう、か?」
もっと、顎をひいて。
ーーこれは、時間がかかりそう。
背骨そっとなぞった。
「〜ッ!!」
身体が傾いてる。
ーー肩を少し押して顎の角度を変える。
お前は、身長があるから会場でも目立つよ。
「そうか?…わっ!」
>>とすっ
ーー躓くなよ。
受け止めるこっちの身になってくれ。
「…。」
何?
「ぃや…その…ありがと。」
ーー何?
その何とも言えない顔。
見てるからやってみて。
ーー周りをぐるりと回る。
>>ごっ
違う。逆。
「いぃ''ッ!」
ーー脚を蹴った。
何故、こんな簡単な事ができない?
腕は、もう少し上。
ーーすぅっと二の腕に手を添えた。
「〜ッ!!」
>>がっ
身体が、傾いてる。
「い''ッ!」
ーー肩を叩いた。
顔は、もう少しこっち。
ーーそっと頬を傾ける。
「〜ッ!!」
相手の眼を見て微笑む。ほら、いつも店でしてるの。
ーーうぅん…。
それだけ、合格。これから、毎日練習する事。
ーー必要な事は教えた。後は知らん。
「ぁ…。」
ほら、降りるよ。早くして。
「…ぅぅ。」