表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3)女の武器

 近々ローズを救出することになる。ローズのために南へ来て欲しいという連絡に、サンドラは迷うこと無く馬車に乗ることを選び、フレデリックを慌てさせた。


 馬車に乗り王都を離れ、そろそろ目的地に到着する頃になり、フレデリックがいつになく神妙な顔をして、サンドラに打ち明けた。

「絶対にグレース様のお耳に入れるわけにはいかないから、秘密にしていたんだ。今ならグレース様のお耳に入ることもない。色々と、サンドラも知っておいたほうが良いだろうから」

その時に聞かされてはいた。だが、サンドラはローズと再会した時、声を聴くまでローズと一緒にいた背の高い男が、ロバートだとはわからなかった。


 髪はほとんど白くなり、頬が痩け、濃い隈が目立つ顔は、別人のようだった。鋭さが目立つようになった瞳の色だけ同じだった。サンドラの夫フレデリックと年齢はさほど変わらないというのに、短期間で数年以上歳を重ねた様に見えた。それこそ、ロバートの親族の誰かだといわれたほうが、納得できた。


 抱きしめたローズが痩せていて、溢れそうになった涙を堪えるのに必死になったから、サンドラの動揺は誰にも悟られなかったと思う。


 ローズとロバートに、ようやく訪れた穏やかな時間だ。

「少なくとも二匹、気の利かないお邪魔虫を足止めしないと、女がすたるってなもんよ」

サンドラは背筋を伸ばし、微笑みを顔に貼り付けた。お手本はグレースだ。


 途中すれ違ったシスターに、サンドラは、できるだけ恭しく、でっち上げた聖女様のお言葉を伝えた。

「聖女様はお休みになるそうです。私は聖女様より何人たりとも絶対に部屋に入れないようにと、直接お言葉を賜りました。聖女様は、明日、司祭様へ正式に御挨拶をなさる御予定です。今晩は、聖女様が幼い頃からお仕えしていた私がお世話いたします。私は今から、聖女様のお言葉を司祭様にお伝えする予定です。どうかそれまで、聖女様のお部屋の見張りをお願いできますでしょうか」


「かしこまりました」

快く引き受けてくれたシスターに、グレースを真似て、鷹揚に礼を言ったサンドラは、食堂へと足を向けた。グレースのように美しく優雅に一歩ずつ足を進める。


 サンドラの敵は、救出されたばかりの可愛いローズに休憩も無しに慰問しろと言いかねない司祭と、宝物を取り返したばかりのロバートに仕事の話をしかねない無粋なフレデリックだ。


「よいですか、サンドラ。人は他人を外見で判断します。上品に丁寧に振る舞えば、あなたの美貌です。良い家のご令嬢として十分に通用します。知性と美貌と優雅さは女性の武器です。どうかサンドラ、王都に残る私のかわりに、ローズを守ってあげてね」

別れ際のグレースの言葉は、今もサンドラの心を照らしてくれている。


 宣伝です

【完結済】マグノリアの花の咲く頃に 第一部から第四部まであります。

本編と短編で、シリーズ化しております。


第一部https://ncode.syosetu.com/s0801g/

第二部https://ncode.syosetu.com/s2683g/

第三部https://ncode.syosetu.com/s2912g/

第四部https://ncode.syosetu.com/s5831g/


現在、連日投稿しているお話もございます。ぜひお越しくださいませ。


かつて、死神殿下と呼ばれた竜騎士と、暴れ竜と恐れられた竜が、竜の言葉がわかる人の子と、出会ってからの物語

https://ncode.syosetu.com/s1096h/


現在、毎週土曜日19時に投稿しているエッセイもございます。ぜひお越しくださいませ。

人がすなるえつせいといふものを我もしてみむとしてするなり

https://ncode.syosetu.com/n4307hy/


ある日思いついた短編達

https://ncode.syosetu.com/s4037g/

ここも時々突然増える予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ