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人払いの理由

 人払いを終えると、部屋に残ったのは私とランバート様、キアン様とネイジャンの人だろう護衛の4人だけだった。

「内密のお話とは、なんでしょうか?」

 話の内容によっては、どうにか断らないといけない。魔法付与について言及される可能性があると判断したからこそ、ランバート様が部屋に残ってくれたのだろう。少し身構えつつ、キアン様の話を待つ。

「……これらのバレッタは、どのくらいの値段なのだ?」

「花の構造や大きさ、数にもよりますが、今までに購入された方はこのような感じです」

 キアン様に、今まで作った作品のイメージ図と値段を書いたものを渡す。今まで作っていない種類の花を作るたびに、プリンターを使ってイメージ図を残しておいたのだ。

「…………かなり値段に差があるのだな」

「作りが複雑でも、糸を持ち込みされた方は値段を低く設定しております」

「糸を持ち込む?」

「はい。思い通りの色を自分で持って来られるのです」

 できる限り糸の種類を揃えようとは思っているが、どうしても入手が難しかったり、染め方によって色味が違うこともある。そう言った事態を避けるために自分で糸を持ってきてくださるお客さんがいたのだ。

「装飾品の値段は当然、原材料費と工賃を元に考えているので、原材料を持ってきていただけると加工だけになりますから」

「成る程……」

 要望に合う糸を探さなくていいし、糸の確認のために打ち合わせをする時間も削減できる。お互いに良いことが多いのだ。

「ただ、購入を考えていただいているのなら、一つ、先にお話ししておくことがあります」

「なんだ?」

 此処まで商品について聞くと言うことは購入しようと思っているのだろうが、キアン様が使おうとしたり、身近な人に送ろうと思っていたりする場合は問題がある。

「先程の組紐は見えない場所につけたり、重ねてつけるものなので問題ないかも知れませんが、これらの花を利用した装飾品は、宝石類には輝きが及びませんので……」

「幾ら目新しいとはいえ、公の場で使うことは難しい、か」

「はい」

 商人として、貿易を任されるような立場にいるのなら、流行を作ること、新しいものを広めることもキアン様の仕事の一部なのだろう。

「使用する糸を絹にするなど、品質を向上させ、貴族向けの商品作ること自体は可能です」

「金や銀の糸を使うこともできるか?」

「普通の糸と同じような太さ、柔らかさであれば可能かと」

 そう考えると、王都の装飾品店の中でも特に目新しいことをしている私の店に来るのは納得だが、問題は、目新しさだけでは貴族には広まらない、と言うことだ。

「しかし、それでも貴金属類ほどの価値はないかと」

 ある程度、金銭的価値の高いものでなくては、貴族の威厳が示せない。キアン様が私の作品を国に持ち帰ったところで、主な取引相手となる貴族には広まりにくいだろう。

「ですから、私からは、あまりお勧めはできません」

 此処まで言わずともわかっているだろうが、買ってもらう前に商品についてきちんと説明をするのは大切だ。後からクレームを付けられないようにするためとも言う。

「……その程度は理解している」

「失礼しました」

 説明を終えると、キアン様は眉間に皺を寄せたまま、私の方を見て言った。これ以上不機嫌にさせてはなるまいと素早く頭を下げる。

「が、我が国の状況を考えた上で進言する心意気は気に入った」

「ありがとうございます」

 正直に話すことで好感を得られたのならよかった。キアン様は笑みを浮かべたまま、それに、と言葉を続ける。

「元々、公式の場に着用するために頼むわけではないのだ。問題ない」

 そう言った瞬間、今まで存在感を消していたランバート様の表情が、一気に険しくなった。

「国に持ち帰り、流行させるのではなく、個人的に所有したいと考えている」

「……かしこまりました。どのような品をお作りすればよろしいでしょうか?」

 魔法付与したい、と言われた場合、どうなるか。内心焦りつつも、表面に出さないように注文の詳細を聞く。

「僕の母親に渡す品が欲しい」

「どのような品を?」

「母の国には有名な花がある。その花を作ってほしい」

 母の国に、というのはネイジャン以外の国のことだろうか。知っている花なら良いが、この世界独自の花だった場合は、図鑑か何か見せてくれないと作れない。

「すみません、国外の花には詳しくないのですが……」

「花に関しては資料をすぐに持って来させる。それを見て答えてほしい」

 すると、キアン様は一緒にいた護衛に指示をした。すぐに戻ってくるだろう、と言っているが、此処から貴族の住居までは距離がある。

「キアン様のお母様は、花がお好きなのですか?」

 特に好きな花があるのなら、組み合わせることも考えようと思って聞くと、突然、キアン様の表情が暗くなった。

「それが、そもそも母に花を渡そうと思った原因の話になるんだが」

「原因、ですか?」

 聞き返すと、キアン様はさらに声のトーンを下げた。

「ああ。実は今、母の状態は……」

次回更新は4月24日17時予定です。

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