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魔法付与の価値

「改めて聞きますが、怪我はありませんか?」

 使いの男が別の騎士によって店から連れ出されると、ランバート様は状況確認を始めた。私は先程掴まれていた肩に痛みが残っていないことを確認し、頷く。

「大丈夫です」

「わかりました。どこか痛むようならすぐに騎士団の詰所まで来てください」

 怪我の程度で此方の対応が変わりますから、と言われ、小さく頷く。大事にしたくはないが、正直に伝えないと迷惑がかかるということだ。

「……それにしても、ルイーエ嬢は、問題に巻き込まれやすい体質なのでしょうか?」

「本当に申し訳ありません……」

 ランバート様は頭に手を当てて言った。折角、事前に気を付けるように伝えていてくれたというのに、このような事態になってしまい申し訳ない。

「ルイーエ嬢を責めている訳ではありません。ただ、巻き込まれやすいとわかっていたなら、この近辺の見回りを増やしておくべきだったと思いまして……」

「いえ、そんな不確定な要素で動くわけにもいかないでしょうから……」

 ただでさえ忙しいというのに、更に仕事を増やしては体を壊してしまう。あまり気にしないで欲しいのだが、責任感が強いのか、ランバート様はかなり落ち込んでいるようだ。

「今回は、珍しく子供たちが駆け寄って来たかと思えば、裏口から変な人が来たというものですから驚きました」

「子供たち?」

「はい。いつもの2人です。かなり急いで来たのか、私に話し終えるなり疲れて動けなくなってしまったので別の騎士に頼んで様子を見てもらっています」

「そうですか……」

 トッド君とターシャちゃんは、ジュディさんと私が裏口で話している様子を、何処かから見ていたのかもしれない。お陰で助かった。まだ帰って来ていないようなら後で迎えに行こう。

「店が荒らされた形跡は無い様に見えますが、間違い無いですか?」

「はい」

 目当ての物がなかったからか、商品には指一つ触れられていない。そのことを伝えると、ランバート様は難しい表情を浮かべた。

「……キアン様は、何を求めていたのでしょうか?」

「あの人の虚言という可能性はないのですか?」

 正式な使いではない可能性がある、と言ったのはランバート様だ。ならば、キアン様という人を言い訳にして、店に来ただけなのではないだろうか。

「その可能性は低いです。自分のためだけに、店に来て横暴な態度を取るのは不利益しか生じないでしょうから」

「……正式な使いではないかもしれないですが、キアン様が私の店の商品に関心を持っていることは確かだと?」

「はい。キアン様が王宮で挨拶をされた時に、先程の男は同行していませんでした。つまり、身の回りの世話役として同行しているものの、身分はあまり高くないのでしょう」

 小間使い、と言ったところなのだろう。なら、どうしてそんな人物が私の店にいきなり現れたのか。それは恐らく。

「キアン様が私の店について何か言っているのを聞いて、誰よりも早く目当ての品を手に入れれば出世ができると考えた、ということですか?」

「あくまで予想ですが、可能性は高いかと」

 そして、その商品は、現在店にない何か。今回は相手側に非があって帰ってもらったのでいいが、次に正式な使いが来たらどうするべきか。

「ルイーエ嬢。キアン様が求める品について、心当たりはありませんか?」

「……今、店にない商品としか」

「……置いてない商品、何がありますか?」

 気まずい沈黙が流れる。思い浮かべている物は、私もランバート様も同じだろう。今、店に置いていない商品。それは、編み物の花か、魔法付与された物の2つである。

「最近、注文が多いのは編み物の花です。現在店に在庫がないことと、お待ちいただいているお客様が多いこともあり、今回は説明しておりません」

「他には、ありますか?」

 静かな声音で尋ねられる。が、その目は真剣に私を見据えている。考えたくはない、が、最悪の事態を避けるためにも、正確に情報を共有しなくてはならない。

「……魔法付与した商品も、並べていません。ドナートさん達の一件以降、自分の作品に魔法付与されているかどうかわかるようになってきたので、店に出していません」

「そう、ですか」

「……はい」

 再び、互いに沈黙する。私が魔法付与できることを知っている人は、ランバート様と、その相談相手であるB様だけだ。つまり、事情を正確に把握して動ける人物がいない、と言うことになる。

「……そもそも、どうして魔法付与は貴重なのですか?」

 魔力を込めれば使える道具は比較的よく見かけるので、そこまで貴重という感覚がない。純粋に質問すると、ランバート様はそこからでしたか、と頭を抱えた。

「魔法付与は、魔法式の道具とは違って、持っている人物に魔力がなくとも発動するので重宝されているんです」

「……持ち主が魔法を使えない状態でも効果がある、ということですか?」

「そうです。発動には条件があるか、常に効果があります」

 つまり、要人が身の安全を守るにはもってこいの物という訳だ。

次回更新は4月13日17時予定です。

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