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二色のビーズリング

 即日入居したいという人物を快く受け入れてくれただけでなく、歓迎の料理まで作ってくれていたらしい。テーブルに並べられた料理を見て、私は目を丸くした。

「急拵えだから、大した料理はないけどね。お腹一杯食べておくれ」

「い、良いんですか……?」

「良いも何も、今日からアユムも我が家の一員だからね。遠慮せず、何かあったら言うんだよ」

 さあ座って、と、椅子に誘導される。慌てて席に着くと、他にも人がいることに気付いた。家族で暮らしている場所にお邪魔しているのだから当然だ。が、驚きの連続で周囲の様子に全く気を配れていなかったようだ。

「うちの家族を紹介するね。そこの丸眼鏡かけてる男は、旦那のカルロ」

「ジュディと一緒にカフェをやっています。よろしくお願いします」

 普段は主に厨房を担当しているらしい。優しそうな男性である。私がカフェに行った時間帯は買い出しに出かけており、丁度入れ違いになっていたらしい。

「こっちの三つ編みをしてるのが、長女のソニア」

「ソニア・オルド、12歳です」

「次は……」

「トッド!!ろくさい!!」

「ターシャも、ろくさい」

 ジュディさんに紹介されるより前に、元気よく二人が手を挙げた。長女のソニアちゃんは12歳で、昼間は教会に行って読み書きを習い、その後、手伝いをして帰ってきているらしい。双子のトッド君とターシャちゃんはそれに付いて行ったり、行かなかったりと自由に行動しているそうだ。

「アユム・ルイイエ。22歳です」

「「ルイーエ?」」

 頭を下げつつ自己紹介すると、トッド君とターシャちゃんが首を傾げた。どうやら、名前を呼ぼうとしてくれたようだが、少々発音が難しかったようだ。

「ルイイエ、だけど、言い難いですね。アユムと呼んでください」

「「アユム!!」」

「こら、呼び捨てにしない!!」

「別に構いませんよ」

 取り敢えず子供たちに嫌われた様子はないので安心した。これからお世話になるのだし、できる限りいい関係を築いていきたい。和気藹々とした夕食は、あっという間に過ぎて言ったのだった。


 夕食をごちそうになったお陰で、就寝までかなり時間の余裕ができた。早めに寝ようと思っていたが、時は金なり。折角なので予定を前倒しして、アクセサリーを作ろうと思う。

「【工房】」

 目を開けると、前回見た時と寸分違わぬ光景が広がる。時間経過で設備が増えたりすることはないようだ。となると、何か作ることで設備を増やしていけるのだと思われるが、問題は、この限られた物で作れるものは何か、という事だ。

「せめて同系色の色が複数か、大きさの違うビーズだったら作りやすかったんだけど……」

 全く同じサイズ、で、同じ形。しかも小さめの丸小サイズが十色。同系色でグラデーションを作ることもできない。

「赤、青、黄、紫、緑、橙、白、黒、水色、ピンク……」

 三原色と混ぜた色、白と黒はわかるけど、水色とピンクは何故入っているのか。せめて金と銀とかにしてほしかった。使いやすいから。

「どれかをメインにできたらいいけど、同じ大きさだと目立たないし……」

 金属パーツも一切持っていないし、糊は普通のものしかないので、キーホルダーも難しい。というか、そもそも鞄にキーホルダーを付ける文化があるかもわからない。ネックレスも金具やチェーンが無いので無理。

「……シンプルに、ビーズリングでも作りましょうか」

 見栄え等を考えた時に、同じ形状でも色んな色があれば華やかだろう。ストライプ模様のビーズリングを沢山作れば色とりどりで良いかもしれない。同系色の色が少なくても、ある程度の組み合わせは作れるだろう。

「白はどれと組み合わせもいいし、二色ができたら三色ストライプも……」

 基本の八の字編みだけでできるので、指輪サイズなら時間もあまりかからない。指の太さは取り敢えず自分の指を基準にして、まずは青と水色でリングを作る。ビーズを纏めてテーブルの上に出す。作業用マットが欲しい所だが、今は我慢である。

「テグスの長さ……、このくらいかな」

それぞれビーズを二つずつ取り、青色のビーズが端になるようにして、水色のビーズの中で交差。青色のビーズを二つ、水色のビーズを一つ取って、一個ずつテグスに通し、今度は青色のビーズの中で交差。

「意外といい感じ」

 指を一周する長さになったら次の段を編む。中々良い色合いだ。段々と楽しくなってきて、黙々と手を動かしていると、あっという間にリングが完成した。

「できた!!」

 やった、と自分で出来栄えに感動していると、レベルが上がったような、戦闘が終了したような音が鳴った。どこから音が出ているんだろう、と部屋中を見渡すと、天井に何か文字が表示されていることに気付いた。

『アイテム:ビーズリング 製作完了』

『【工房】スキルポイント 1 獲得』

『【ビーズ】技能ポイント 1 獲得』

 よくよく見ると、さらに上の方には工房への入室成功、等の文字も表示されていた。どうやらずっと表示されていたらしい。

「いや、わかりにくい!!」

 せめて壁に移動してくれ、と叫ぶと、天井の文字は消え、真っ白な壁面に文字が映った。どうやら、ある程度の要望は聞いてくれるようである。


次回更新は2月13日17時予定です。

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