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花のバレッタ

 不審人物騒動が完全に解決して数日、店の営業も順調だったのだが、私は深夜の工房で一人頭を悩ませていた。

「たくさん貰ったけど、これで何を作ろう……」

 そう、ラウラさん達からお礼として、特産の青い糸を貰ったのだ。とはいえ、商品をタダで貰うのは私が遠慮するだろうとのことで、規定の長さに切った余りを定期的に貰うことになったのだ。

「余り物とは言われたけど、十分な長さがある気がする……」

 規定に1センチでも足りなかったら使えないから、と言われたが、幾つか商品に使えそうな長さもある気がする。まあ、お礼の気持ちということなのだろう。

「小さいモチーフを作るか、継ぎ足していって少し大きめのモチーフにするか」

 貰った糸は、一般的な刺繍糸と同じくらいのものから、太めの毛糸まで様々だ。小さなアクセサリーパーツを作ろうと思うと、刺繍糸くらいのものを使うのが一番だろう。

「……流石に、棒編みは厳しいかな」

 棒編みで小さい物を作ること自体は可能なのだが、私が慣れていない。小さいモチーフを作るのなら、棒編みよりもかぎ編みの方が慣れている。

「よし、今日かぎ編みキット買おう!!」

 幸い、編み物教室をしたお陰で、工房ポイントには余裕がある。ポイント引き換えをすると、棒編みの時同様、各号数のかぎ編み針セットと、コットン系の糸が出てきた。

「白と青の花だけでもかなり華やかになるかな」

 白い糸と鍵針を手に取り、くるくると二重の輪を作る。輪の中に鉤針を差し込み、糸玉側にある糸を引き出す。

「花弁が6枚くらいで良いかな」

 引き出した糸が鍵針にかかっている状態で、その中に更に糸を引き出し、立ち上がりの目が出来上がりだ。

「久しぶりだから持ちにくい……」

 もう一度輪の中から糸を引き出し、一つ前の目と引き出した輪の中を通るように細編みをしていく。輪に目が6つできたところで1段目は終わりだ。

「糸端と繋がってる輪は……」

 二重の輪のうち、糸端と直接繋がっていふ輪の方を最初の目がある方から引いていき、もう片方の輪を縮める。

「で、糸端を引いて」

 両方の輪が縮み、これで土台となる部分は完成だ。2段目から花弁の部分を作っていく。1目めに鍵針を入れて引き抜き、できた輪の中にもう一度鍵針で糸を通して鎖編み1目立ち上がる。

「細編み、鎖2目、長編み3目、鎖2目、引き抜き編み……」

 細編みを最初に作ると、糸を輪の中に引き抜く作業を2回繰り返し、鎖編みを2目作る。鍵針に一周糸をかけた後、先ほど作った細編みの目に針を入れる。

「1回、2回……」

 輪が3つある状態から、2つの輪から糸を引き抜く。そして残った2つの輪から糸を引き抜いて、長編みの出来上がりだ。この長編みを3目作ったら、また鎖編みを2目作る。

「最初の目に戻って、次」

 最初の細編みに引き抜き編みをしたら、次の目にもう一枚花弁を作っていく。残りの5枚の花弁を作り、最後に1枚目の根元に引き抜き編みをすれば出来上がりだ。

「後は糸の処理をして……」

 小花の完成である。これさえできれば花の形のものは幾らでも作れるのだ。花弁の枚数を変えたり、立体的なモチーフを作ることもできる。

『アイテム:かぎ編み小花 製作完了』

『【工房】スキルポイント18獲得』

『【編み物】技能ポイント18獲得』

「棒編みもかぎ編みも、ポイントは共通か……」

 そして、魔法付与する気がなかったので成長しないようだ。今度は花弁5枚の青い花を作ってみると、今度は15ポイント貰えた。花弁の数を3倍したポイントが貰えるようだ。

「このままイヤリングパーツに下げたり、ネックレスとブレスレットに付けたり、何個か纏めてブローチにしてもいいかな」

 ポニーフックに貼り付けたりしても可愛いのだが、まだ髪ゴムが普及していないのにポニーフックを作っても広まらないだろう。

「取り敢えず、メインはバレッタにしよう」

 花のパーツを貼り付けて作るのが一番作りやすい。色を変えるだけでイメージがかなり変わる。

「輪じゃなくて、平たく花弁を何枚も編んで、巻いたら立体的な花もできるはず」

 取り敢えず、普通に花を3つほど作って、バレッタに貼り付ける。白と青の花が交互に並ぶ、シンプルなデザインだ。

「明日から商品にしてみよう」

 好評なら、組紐の時のように花の種類と糸の色を並べたポップを作ろう。糸を手にかけ、新しい花を作り始めた。


「いらっしゃいませ!!」

 かぎ編みの花を使ったバレッタを商品として置いた、最初の営業日。編み物教室以降、お客さんの入りは以前より少し増えた状態を保っている。

「店主さん、おはようございます」

「ラウラさん、ドナートさん。おはようございます」

 開店直後、他のお客さんと一緒に入ってきた2人は今日はアクセサリーを見に来てくれたらしい。

「青色のアクセサリーが欲しいんですが、オススメはありますか?」

 ラウラさんに聞かれ、あまりのタイミングの良さに笑顔になる。

「とっておきの商品がありますよ。本日から販売するのですが……」

 鮮やかな青い花が並んだバレッタを見せると、2人だけでなく、店中から息を呑むような音が聞こえた。

次回更新は4月4日17時予定です。

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