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黒いアンクレット

 待ち合わせの時間まで余裕があるので、身支度などの為に一度家に戻ることにした。あくまで魔法研究所であり、官僚はあまり出入りしないと言っても王宮は王宮。

「入り口とかで、顔の確認とか、されるかな……」

 そうでなくても、召喚に関わった人が研究所にいる可能性は高いだろう。夜である程度顔が見えにくくなるとはいえ、普通に行ったら面倒な事になるのは目に見えている。

「…………【工房】」

 なんとかする方法を考え、思いついたのは、一つだけだった。私が作るアクセサリーには、魔法付与がされる。

 そして私が持つ魔法付与スキルの詳細は、『装着者に与えたい効果を具体的に思い浮かべることで、合致した効果の魔法を付与する』だ。それならば、この状況を突破できるような魔法付与アイテムを狙って作れるのではないか。

「ラウラさんが作ったマフラーの付与詳細はわかる?」

 とはいえ、今迄に付与をした数が少ないので、どのような効果なら付与できるかもわからない。一番目的の効果と近そうなラウラさんのマフラーについて聞いてみる。

『付与詳細』

「わかるんだ……」

 作ったのは私ではないが、作り方を教えたりしたからだろうか。結果が壁に表示されるのをじっと待つ。

『黒いマフラー・装着者の認識を強化する』

 相手の事を強く想いながら作ったので、相手の認識を強化する効果が付いているようだ。私はこの真逆の効果が付与されているものを作ればいい。

「目立たないけど、確かにある。確かにあるけれど、細かい所は見えない」

 そんなイメージのアクセサリー。となると、アンクレットだろうか。普段は見えないけれど、足元に視線が行った時だけチラリと見えるアクセサリーだ。

「色も重要かな……」

 メインは黒色にしよう。長さの調節もしたいので黒色のアジャスターなどの金具をポイントで引き換える。

「ビーズの色は、黒、紺、濃い紫」

 単純にビーズ通すだけでのシンプルなデザインはつまらないので、3本のビーズを通した紐を三つ編みにする。

「テグスは……、透明でいいかな」

 手早く3本のビーズコードを作り、順に並べる。黒を2本にして四つ編みでも良かったかもしれない。今度商品として作る時には色々やってみよう。

「留めて、金具を付けて……」

 完成である。シンプルだが三つ編みにしたので色に変化があって面白い。色味も似ているので自然な感じだ。

「パステルのグラデーションカラーで作っても良さそう」

 色々と改善案は思いつくものの、取り敢えず完成である。後は、思った通りの効果が出ているかだ。

「このアンクレットの効果は?」

 尋ねると、壁の文字列が動き、このアンクレットに関する情報が並べられていく。

『アイテム:ビーズアンクレット 製作完了』

『付与詳細』

『隠密アンクレット・装着者に対する他者からの認識を阻害』

 どうやら、上手くできたらしい。問題は、その認識の阻害がどの程度のものかだ。マフラーは長い時間をかけて作られていたが、このアンクレットは自分で作ったとはいえかなり短時間で完成している。

「ポイントは?」

『完成度ボーナス獲得』

『【工房】スキルポイント10獲得』

『【ビーズ】技能ポイント10獲得』

 普段、ブレスレットは3ポイントだったはずだ。三つ編みにしている事、テグスの伸縮ではなく、金具で長さを調整できるようにしてある事でポイントが増えたのだろうか。

『【特殊効果】魔法付与ポイント10獲得』

『魔法付与の効果上昇』

『【特殊効果】魔法付与2に成長』

『作成済みのアイテムに付与された魔法を強化可能』

「意識して魔法付与したら特殊効果も成長していくのかな」

 強化ができるのはありがたい。作ったアイテムに魔力を込めれば効果が強くなるとのことだ。

「トッド君とターシャちゃんの反応を見て、付与の効果を試しておきたいな……」

 それで強化が必要か判断する。二人には悪いかもしれないが、私も切羽詰まっているので許してほしい。また今度お菓子でも買って来よう。

「……付けるのは、外に出てからのほうがいいよね」

 3階から、知らない人が出てくるのは怖すぎる。カフェで試そう、とアンクレットを手に持って工房を後にした。


 陽がすっかり暮れてから、家を出る。二人に試した結果、少し強化すれば顔の印象が残らない程度に調整できる事がわかった。

「この時間帯でも、魔法研究所には出入りする人が多いから、怪しまれることは無いって言われたけど……」

 いざ城門の前に立つと緊張する。何度か大きく深呼吸してアンクレットを確認し、わずかに魔力を込める。落ち着いて、門の横にいる見張りに声をかける。

「すみません、国立魔法研究所に用事があるのですが……」

「招待状はお持ちですか?」

「はい」

 真っ黒の封筒を手渡すと、見張り番は無言でその中身を確認し、頷いた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 封筒を返して貰って門を通り過ぎようとした時だった。見張り番がハッとしたような表情を浮かべた。

「待ってください!!」

 呼び止められ、心臓が大きく跳ねた。

次回更新は3月30日17時予定です。

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