表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/218

カフェで相席

「ランバート様?」

「はい。ルイーエ嬢も今日は気分転換ですか?」

 外で見かけるのは珍しいですね、と言いながら椅子を引いてくれる。こういう文化には慣れないな、と内心思いつつ、笑顔で座る。

「新しい材料を仕入れようかと思って来たんです」

「この近くには工房が多いですからね」

 青い糸を購入しようと思って来ているので事実である。他の工房も気になるので、余裕が有れば見て回りたいところである。

「ランバート様こそ、どうしてカフェに?」

「休憩時間です。今日はこの付近の見回りが任務でして」

 普段は私達の生活圏内が担当らしい。今日は突然の人材不足で此方に来ることになったそうだ。ランバート様が詰所を指したので其方に視線を向ける。まだ二人は出て来ていない。

「カフェがお好きなんですか?」

「そうですね。同僚には意外と言われますが、結構甘い物が好きです」

 そう言うランバート様の前には、紅茶のカップと既に空になっている皿が置いてある。ケーキを食べていたのだろう。

「私も甘い物は好きです。作業をしていると、よく食べたくなります」

「頭使うと欲しくなりますよね」

「そうですね」

 美味しかったケーキの話をしつつ、視線は頻繁に詰所の方に行ってしまう。呼ばれる迄は出番がないとは分かっていても、気になってしまうのだ。

「ルイーエ嬢、何か気になることでも?」

「えっと……」

 暫く会話が続いていたが、ランバート様の紅茶が無くなるとそう言われた。時間が経つにつれて焦りや心配が顔に出てしまっていたのだろう。

「何かあればお力になりますが」

 返事を考えている間に、ランバート様にそう言われ、黙り込む。不審人物の噂が出た時に、真っ先に心配してくれた人に嘘は吐きたくない。

「……それが、少々複雑な事情が」

「場所を変えたほうがいいですか?」

 混み合っているので意識をしなければ聞き取れないとは思うが、聞かれない保証はない。小さく頷くと、私が注文した品を食べ終わったことを確認して、ランバート様は立ち上がった。


 詰所が見えなくなってはいけないので、カフェのすぐ隣の路地で話をすることになった。

「それで、何があったんですか?」

「この間の、不審人物の件なのですが……」

「また何か被害を受けたのですか?」

 眉を吊り上げたランバート様に、大丈夫なので話を最後まで聞いてほしいと伝える。被害がないと言うと安心したようで話の続きを促される。

「不審人物とされていた人物は、店に来られている方と関わりがあることがわかったんです」

「この間の、声の特徴を報告してくださった方ですね?」

「はい。そして、今日、その方と歩いているとまた声を掛けられたのですが……」

 その際に、徐々に顔が認識できるようになった事や、話し合った後に騎士団へ事情説明をしに行く決定をした事を説明すると、ランバート様は目を見開いた。

「話を聞く限り、悪意があったとは思えないのです」

「……それは、判断が難しいですね」

 暫くの沈黙の後、ランバート様ははっきりと言った。理由を尋ねると、ランバート様は話せる範囲で説明をしてくれた。

「今回の件では、被害自体は声を掛けられただけで大したことはありません。なので、今すぐ罪に問われたりなどはしないでしょうが、完全に疑いを晴らし、故郷に帰ることは難しいでしょう」

「…………王都で、痕跡を殆ど残さず行動していたからですか?」

「その通りです。騎士団が警戒をしていた最たる理由は、足取りが全く掴めなかったことです」

 生活している人は勿論、見回りの騎士も多い王都で姿を隠せていたと言うことは、強大な後ろ盾がないか疑われていると言うことだろう。

「呪いについて証明ができれば、誰にも見つからなかった理由も説明がつくと思うのですが……」

「それは確かです。聖女を召喚しなければならないほど、瘴気が蔓延しているのですから、呪いの強い場所は複数箇所あるでしょう」

「では……」

「ですが、私は呪いは専門外です。呪いを掛けられていたか、証明できる人物を呼ぶ必要があります」

 騎士は、あくまで騎士だ。呪いは広く知られているものの、呪いの痕跡を調べることができる人物は魔法を専門とする人間の中でもほんの一握りだと言う。

「ランバート様は呪いを解明できる人物に心当たりはありますか?」

「ある、といえばあるのですが……。何分、気難しい人なので私が言っても来て貰えるかどうか……」

 研究者や職人が気難しいのは良くあることだ。そこまでランバート様に頼るわけにも行かないので、自力で協力要請をしに行こう。

「紹介状を書いていただければ、自分で交渉しに行きます。お願いできないでしょうか?」

「……わかりました。騎士団の詰所には連絡用の道具がありますので、予定だけ聞いて来ます。その間、此処で待っていて貰えないでしょうか?」

「わかりました。お待ちしています」

 そう言って、ランバート様が詰所に入って行った直後。入れ替わるように、ラウラさんが走って出て来たのである。

次回更新は3月28日17時予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 1発では解決しなかったけど、1歩前進だ! 無事に故郷に帰れますように
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ