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火急の準備

 ソニアちゃんは、宣言通り晩御飯までに帰ってきた。その手に、一枚の紙を携えて。食後にその紙を受け取ったのだが、そこには手芸教室に参加予定の子たちの、参加可能日が全て記入されていたのだ。

「これで、すぐに開いて貰えますか?私たち、明日、材料を買いに出かけるので」

 全員が揃って参加可能な日で、最も近いのは、明後日だった。子供たちの予定が大丈夫なら、教会に実施日と内容だけを伝えればいいだけなので、明後日から教室を開くこと自体は可能である。

「大丈夫だけど、毛糸の太さとか、編み棒とかの探し方はわかる?」

「編み棒は、おかあさんが使っていたものを借りる予定です。毛糸は、資料に書いてあったものと同じ太さを用意すれば大丈夫ですよね?」

「そうだね」

 後は、毛糸の素材だが、合成繊維などは流通していないことは確認済みだ。店側も時期と子供たちの様子から、何を作るのかは察してくれるだろうから失敗はしないだろう。

「わかりました」

 明日は早いので、私はもう寝ますね。と、話が終わるとソニアちゃんは部屋に戻っていった。すごい気合の入りようだ。私も明日中に毛糸と編み棒の準備をしないといけない。他の人に挨拶をして、私も自室に戻る。

「あ、そうだ」

 ランバート様から頂いた、守り石の加工をしないといけない。暫く外出する予定もないが、使える形にしておかないと持っていても意味がないだろう。工房のポイントは編み物に使う予定だから、手持ちの材料で加工できるものにしたい。

「……ネックレスかな」

 指輪やブレスレットにすると、作業の時に邪魔になる可能性もあるので、影響のないネックレスが良いだろう。ずっと身に着けていれば忘れることもない。

「【工房】」

 穴などは開いていないので、刺繍糸で石を包んで、それを首からぶら下げる。シンプル過ぎる気もするが、糸を切れば石を出すことはできるので、気になった時に作り直せばいいだろう。

「……大した作業でもないから、すぐに終わったけれど」

 簡単な作業とはいえ、ネックレスが一つ完成しているのでポイントは付くのだろうか、と壁を見る。すると、いつものように作成によるポイントがあったことを示す文章が表示されていたのだが、何故かいつもより記述が少なかった。

『アイテム:守り石のペンダント 製作完了』

『【工房】スキルポイント200獲得』

「…………ジャンルがない」

 そう。いつもならば、何かを作り終わった時は、工房スキルポイントと同じだけ各種技能ポイントが入るはずなのだ。ビーズリングやブレスレットはビーズ、ミサンガなど紐を編んだものは組紐と言った風にジャンルに応じたポイントもある。

「ビーズ自体は使ってないし、石を刺繍糸で包んだだけだから、組紐とか紐細工にも入らないのかな……」

 アクセサリー製作の範囲には収まるだろうが、ビーズや組紐、と言った分類の仕方だと何処に入れていいのかわからない。なので工房スキルポイントだけが手に入ったのだろうか。

「その分、獲得ポイントが増えたのかな?」

 ビーズネックレスのポイントは5ポイントだ。ビーズを通す手間が無い分、簡単に作れた気もするが、何故かいつも以上にポイントがもらえている。使っている素材が高いからか、それとも他の原因があるのか。全く分からない。

「……まあ、編み物キットが買えるだけのポイントがたまったからいいか」

 お陰で、工房スキルポイントが1029になった。これで、基本キットが購入できる。編み物は棒編みと鍵編みでそれぞれキットがあるので、間違えないように棒編みキットを購入する。

「内容は……、と」

 各号数の編み棒セットに、付け替え式の輪針、縄編み針もある。毛糸はウール100%のみで、色は白と黒しかないが、全ての太さが用意されているようだ。正直、針を揃えるのが一番難しいと思っていたので、これで問題解決である。

「子供たちに説明するなら、白の方が見やすいかな」

 目の数え方や、表目、裏目の説明をする時に黒色だと影になっているのか元々の色なのか、判断し難いだろう。正直、汚れが目立つので白色のマフラーを作っても使う気がしないが、使うことが目的ではないので気にしないことにする。

「最初の作り目と、基本の編み方の復習をして、説明の練習もして……」

 神父様に渡す用の今回の教室の資料作成と、子供以外の参加者を募るチラシも作らないといけない。有料で行う教室に大人がどれだけ集まるかはわからないが、作っておいて損はないだろう。

「取り敢えずチラシ。資料は教室終了までに少しずつ作っていくとして……」

 編み図を人数分コピーするのも忘れてはいけない。編み棒と毛糸を一球だけ持って、工房から出る。プリンターは店の方にしか置いていないのだ。

「完成したマフラーのイメージと、必要な文章を……」

 イメージ自体はすぐに固まり、一枚、二枚、と印刷していく。二十枚もあれば十分だろう、と思ってどんどん印刷を行っていた、その時だった。ぐわん、と頭が揺れる感覚がして、手をプリンターに置いたまま、テーブルの方に体が傾いていく。

「……ねむ、い」

 そして、急激な眠気に襲われ、そのまま意識を手放してしまったのだった。


次回更新は3月16日17時予定です。

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