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突き付ける現実

「ルイーエ嬢が飛び出していった直後、貴族たちも一斉に会場から飛び出した。が、半数程度はキアン様に足止めされ、その間に研究員による王宮封鎖が完了した」

「十分追手の数は多かった気がするのですが、相当減った状態だったのですね」

 貴族が一斉に動き出した混乱に乗じて、ランバート様が直ぐに聖女一行の方へと移動。護衛の為と言って騎士たちで聖女一行を囲み、王太子や側近たちと距離を取らせた。その際に、彼女たちの体が動かないことを確認し、放置していた王太子たちを問い詰めたという。

「『婚約者の体調不良を気にも掛けない相手には聖女様は相応しくないのでは?』と、リシャールが言った瞬間に貴族たちが一斉に反応してな。自分の子の方が聖女様に相応しい、と手を挙げる者が続出。王太子と側近は立つ瀬がない状態になった」

「直前までは二人の婚姻に賛成していませんでしたか?」

「聖女が他の国に行くよりは良いと判断していただけだろう。付け入る隙があれば自分が優位になるように動く。それが貴族だ」

「……怖いですね」

 お陰で今は私たちが有利になっている訳だが、誰も信じられなくなりそうだ。慌てた王太子たちは会場に残っていた侯爵お抱えの魔法使いに指示し、聖女の口から婚姻を望んでいる旨を伝えさせようとしたが、ベルンハルト様が阻止。聖女を始めとした日本人全員に効果のある魔法を会場全体に掛けていたことを認めさせたという。

「会場に配置していた魔法使いは10人を越えるのだぞ!?同時に全員を相手していないとはいえ、貴様一人で相手をできる数ではない!!」

「一人で相手をしたとも言ってないだろう。当然、リシャールを始めとした騎士たちも制圧に参加した。直接相手をしたのは二、三人だ」

 一人、あのデュオと呼ばれていた魔法使いは侯爵のお抱えの中で圧倒的な実力者であり、ベルンハルト様を相手に暫く持ちこたえたという。が、最終的にはベルンハルト様が勝利し、全員纏めて捕縛したという。

「くそ!!あの恩知らず!!拾ってやったというのに捕縛された程度であっさりとすべてを話すとは!!」

「勘違いをしているようだが、あの魔法使いは捕縛された後も何も話していない。寧ろ、他の魔法使いたちが何も言わないように身体制限魔法を掛けようとしていたくらいだ」

「では、何故貴様が装置について知っていた!?配下の中では、あいつ以外には何も教えていないはずだ!!」

 用心深いのか、侯爵は配下の中でも特に裏切れないような人物にしか重要な情報は伝えていないらしい。事実、魔法使いは口を割らなかったというのだから、ある意味人を見る目は確かなのだろう。その能力をもっと有意義な方向に使ってほしいけれど。

「他の者が話したからだ」

「誰だ!!」

「王太子殿下の補佐役だ。乳兄弟、と言った方がわかりやすいか?」

「あの男が?有り得ん。誰よりも王太子の傍にいた男だぞ!?」

 乳兄弟、というと、乳母の息子という事だろう。そして補佐役だったという事は、本当に幼い頃から王太子と一緒に居た人物の筈。どういった人なのかは全く知らないが、確かに裏切りそうには思えない。

「今迄、王太子殿下が失敗しても、側近ができて軽んじられても離れなかった男だぞ?聖女との結婚も承知の上の筈だ。誰よりも王太子殿下のことを考えているような奴が、裏切る要素が何処にある!?」

「誰よりも王太子殿下のことを考えているからこそ、非人道的な行動を見過ごすことはできない、と言っていましたよ」

 第二王子は、聖女召喚の儀式や今回の計画について聞き終わると、即座に聖女一行にその場で謝罪したらしい。この国の上層部は腐り切っていると思っていたが、まともな感性を持った人も残っていることがわかり、少しだけ安心した。

「彼が計画を殆ど把握していたので、後は研究員たちが王宮中から証拠品を集めてくるだけで済みました」

「王宮に研究員だと?何故誰も止めなかった!?」

「……貴族の殆どは平民の顔を覚えない。いたとしても気にしない。それでどうやって研究員を判別するつもりだ?」

 貴族たちは平民をいないものとして扱うことが多い。今回は、その行動が裏目に出たようだ。研究員たちが持って来た証拠により、聖女を浄化装置として利用しようとしていたことと、浄化後の魔力をシルエット侯爵と王家の領地に使用する予定であることがわかり、貴族たちの反感を買ったらしい。

「不作続きで生活に困る領地が幾つかある中、貴族向けの高級食材の増産計画を企てるとは、余程私腹を肥やしたいらしいな」

「控えめに言って最低ですね……」

 それは反感も買うだろう。会場が落ち着いてからベルンハルト様は王宮側に移動してきたらしいが、その直後にこの部屋から強烈な魔力の反応があり、慌てて向かってきたという。

「現状説明は以上だが……、それでも抵抗する気か?」

 先に言っておくが、見逃す気はない。と、ベルンハルト様は、立ち尽くしている侯爵に向かって、はっきりと言い放ったのだった。


次回更新は8月14日17時予定です。

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