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付与の詳細

 開店早々、ランバート様から問い詰められたりと波乱はあったが、その後はお客さんも来て、指輪も三つ売れるなど好調な滑り出しだった。流石に注文は入らなかったが、初日にしては上々だろう。

「【工房】」

 部屋に戻り、工房に入る。商品補充をする必要があるので、売れた指輪と同じものを作らないといけない。後は、見本を増やすためにもブレスレットやネックレスも作っておきたい。

「今のポイントは……」

 工房スキルポイントは75、ビーズ技能ポイントは184ポイントだ。作成した装飾品が売れると、初回以外は作成時のポイントの2倍程受け取ることができるようだ。

「【ビーズ】技能ポイント引き換え」

 一覧を見ると、ビーズの種類と関係する金具が並んでいる。今ある丸小ビーズと同じシードビーズに分類される、特小ビーズと特大ビーズ、丸中ビーズ。そして、スワロフスキーのそろばんビーズを引き換える。

「あとは、金具を……」

 ブレスレットを作るにしろ、ネックレスを作るにしろ、アジャスターや金具が必要だ。後は、それらを扱う道具も。

 潰し玉やアジャスター、丸カンなどの基本金属を引き換えた後、工房のポイントも使って平ペンチ、丸ペンチ、ニッパーを引き換える。

「違う種類のビーズを混ぜて指輪を作って、ブレスレットとネックレスも……」

 そろばんビーズと特小ビーズで全く同じ作り方をしても、かなり雰囲気は変わるだろう。ビーズの大きさを変えて、ビーズボールを作ってブレスレットに付けてもいい。

「後は、魔法付与のことがわかればいいけど……」

 ランバート様から言われた魔法付与。工房の材料で作ったことが原因なら、工房に手がかりがあるはずだ。

「製品詳細情報とかってないのかな……」

 呟くと、壁全体に読み込み中のような、円形の矢印が表示された。もしかすると、答えてくれる気なのだろうか。

『空間スキル【工房】詳細』

「あ、スキルの詳細なの?」

『空間スキルには、それぞれ、特殊な効果が付与されます』

「特殊な効果が付与……」

 その、付与された特殊効果が、魔法付与だというのだろうか。つまり、工房スキルはただ単に便利な工房をいつでも呼び出し、設備を拡張できるスキルではなく、作品に魔法付与するスキルということか。

『特殊効果詳細』

「既に予想はできてるけど……」

『魔法付与1』

「1?1って何?2も3もあるの?」

 特殊効果の後ろについている数字に含みを感じる。これ、もしかして成長していったりするのではなかろうか。

『装着者に与えたい効果を具体的に思い浮かべることで、合致した効果の魔法を付与する』

『付与詳細』

『虹色の指輪・装着者に元気を与える』

「成る程……」

 三人お揃いの指輪は、元気が出るように、と考えながら作ったので、その通りの効果が表れているらしい。他の指輪は虹色の指輪に比べて効果は低く、内容も色で連想するものだ。

「黒は厳格、白は清廉、青が冷静、赤が勇敢……」

 指輪をつけていると、少しだけそう言った思考になりやすい程度の効果しかない。気持ちというか、プラセボ効果というべきか。

 指輪をつけているから大丈夫、という気持ちを手助けする程度の物だ。問題ない。

「……まあ、悪用しようと思えばできそうだけど」

 私は純粋に作品で喜んでもらいたいだけなので、悪影響を及ぼす魔法を付与することはない。これで安心して新しい物を作ることができる。

「アラームセット」

 壁の表示を戻し、日付が変わる時間にアラームを設定し、作業に没頭する。種類が増えたことで組み合わせも増える。沢山あるビーズから、一つ一つ選び取って形にする作業は心躍るものだ。

 どのような効果が付与されるのだろう、と楽しみにしながら、色を選んだ。


 結局、色合わせが楽しくてアラームが鳴っても延長して作業を続けてしまった。開店してしまったので日中は纏まった作業時間が取れないから、と自分に言い訳したのも良くなかった。

「でも、新作もいい感じかな」

 あの後作ったのは、種類の違うビーズを組み合わせた八の字編みのリングが二つ。

 ビーズコードを使った三つ編みと四つ編み、六つ編みのモノと、八の字編みとビーズボールを使ったブレスレットも一つずつ。

 最後に、中央にビーズボールをあしらったシンプルなネックレスを一つ作った。

「ネックレスはやめておくべきだったかな……」

 ビーズボールの部分以外は通すだけとはいえ、長さがある分、製作時間は掛かった気がする。しかし、ネックレスを置いたことでテーブルは華やかになった。

「いや、やっぱり作ってよかった」

 入り口からテーブルを見て、何度か頷く。昨日に比べて商品の数が増え、かなり見栄えが良くなっている。昨日は入り口から少しだけ覗いて中に入らなかったお客さんもいたが、今日はその割合が減るだろう。

「よし、そろそろ……」

 開店にしましょう、と言いかけたその時だった。階段に人影があることに気付いた。見覚えがない男性だ。多分お客さんだろう。

「いらっしゃいませ」

「あ、あの!!依頼を、したいのですが!!」

 少し早いがお客さんがいることは良いことだ。笑顔で店内に招き入れると、その男性は大きな声でそう言ったのだった。

次回更新は2月23日17時予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「指輪も三つ売れるなど好調な滑り出しだった」 パン三つに相当する金額の売り上げがあったということですね。一つ作るにも相当時間がかかるのにやっていけるのかな。
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