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一斉製作

 ベルンハルト様が指示をすると、テーブルの上は大急ぎで片付けられ、部屋全体が見通せるようになった。すると、今度は次々と素材や道具が持ち込まれ、私の前に置かれた。

「材料はこれで全部です。使い方は横の紙に書いてありますし、聞いてくれたら答えます。道具は言われた通り持ってきましたが、本当にこれだけで大丈夫ですか?」

「大丈夫です。では、始めますね」

 まず手に取るのは普段使うものに比べてかなり太いワイヤーと、短く切ったパイプである。ランタンとして使うということもあって、普段より一つ一つの物を大きめに作るのだ。

「ワイヤーを4周巻き付けて、ねじって固定をします」

 作り方自体は変わらないので、手早くやって見せようと思い手を動かした。が、ワイヤーが硬く、中々パイプに添わせて曲げることができない。

「ちょっと、待ってくださいね」

 完全に無理、という程ではないが、かなり力を入れながらやらないと曲がってくれない。息を吸い、力を入れてやり直そうとしたその時、横からベルンハルト様がワイヤーとパイプを取った。

「巻き付けるだけなら代わりに行おう。が、ルイーエ嬢は身体強化を使った方が良さそうだな」

 そう言って、ベルンハルト様はワイヤーをしっかりとパイプに添わせ、隙間ができないように留めた。確かに、男性の筋力なら私より素早く作業できるようだ。悔しいが、筋力差は埋められない。

「それでは、次の作業は……」

「その前に、これを。都度補助を行ってもいいが、ルイーエ嬢が自由に作れる方が良いだろう」

 どうしょうもないので次も頼ろうと思っていると、ベルンハルト様は私の手に身体強化ができる赤色のブレスレットを置いた。

「……ありがとうございます」

「ルイーエ嬢の作業風景を見たかっただけだ」

「そう言われると少し緊張しますが……。続けますね」

「ああ」

 次は、ペンチを使って丸いワイヤーをハート型にしていく。先程より簡単に曲げられるようにはなったが、いつもより慎重に、一つずつ形を作っていく。

「ここで光源を入れます。他のワイヤーに当たらないようにしてください」

 ワイヤー自体に魔力を通す性質があるので、完全に中に入れてしまっても光らせることはできるらしい。固定したら、ワイヤーを広げていよいよ膜を作る。

「別のワイヤーで大きめの輪を作っておいて、そこに膜を張ります」

 膜を張るために用意したのは特殊な樹液。魔力を流すことで物凄く硬くなるらしい。今は蜂蜜よりも粘度の高い液体、という感じなのでちょっと信じられない。

「これを使って、こちらのランタンに膜を貼ります」

 かぶせ付けを実演する。ディップアートで作った時は2往復させたが、今回は分厚い膜が張れたので一度でいいだろう。輪に張ってあった膜を破り、手でランタンだけを持つ。

「後はこれを硬化させて、余分なワイヤーを切ったら完成です」

 どのくらい魔力を流せばいいのだろうか、と思いながらワイヤーの部分を握り直す。すると、ベルンハルト様が私の手を覆うように握ってきた。

「え?」

「完全に硬化したタイミングで声を掛ける。魔力を流してみるといい」

「あ、はい」

 魔力の流す量を教えてくれるらしい。無駄な魔力消耗を減らせるので嬉しいが、先に一声掛けてほしい。急に行動されると心臓に悪いので。

「そこまでだ。これ以上は無駄だ」

「わかりました。残りの説明はお任せしてもいいですか?」

「勿論です」

 ランタンが完成したら、魔法陣についての説明は私の仕事ではない。人員の分担は後でクルト君がしてくれるはずなので、本格的に作業が始まるまでは私は休憩である。

「ルイーエ嬢、この書類に一つ欠陥がある」

「人材配置を間違えましたか?」

「一人足りないだろう。全員で作業した方が効率がいい」

 そこで、ベルンハルト様を人数に入れていなかったことに気が付いた。が、ベルンハルト様は所長として全体の進捗管理や騎士団との話し合いなどもあると思ったので入れなかったのだ。

「お忙しいのでは?」

「問題ない。早く作業を終わらせることを優先した方がいい」

「では、魔法陣を描き込んで仕上げる作業をお願いしてもいいでしょうか?この作業について、私は詳しくないので」

「ああ」

 これで、各部門にリーダーがいることになるので、円滑に進むだろう。ベルンハルト様も作業してくれるのなら、一番難しいという仕上げ作業も安心だ。

「では、材料を取りに……」

「既に向かっている」

 材料加工班は既に材料を取りに行ってくれたようなので、私たちは到着次第、製作を始めればいい。

「では、作業前に質問などはありますか?」

 手順説明で理解できない部分があったのなら、と聞いてみると次々と手が挙がる。やったことのない作業をやるので、質問事項は沢山あるらしい。

「……根本的な質問は今、細かい手順についてはやりながら聞きます!!」

 かぶせ付けの手順など、実際にやらないとわからないものも多い。何とか作業は始まったものの、時間以内に必要数完成するか、少し不安になったのだった。

次回更新は6月25日17時予定です。

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