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異様な暗闇

 トッド君とターシャちゃんが指差す外は、どうみても真っ暗だった。月や星の明かりすらないことを不気味に思って起こしに来たのだろうか。いや、それなら、親であるジュディさんやカルロさんを先に頼るはずだ。

「……今、何時くらい?」

「トッドたちがおきるより、ちょっとはやいくらい」

「おそとみてから、ねれなくて……」

 二人は偶然、いつもより早く目を覚ましたらしい。そして、外がまだ暗かったのでもう一度寝ようとしたが、灯り一つない異様な光景に驚き、寝付けなくなったという。

「ジュディさん達は?」

「……おきない。なんかいも、おきてって、いってるのに」

「アユムいがい、だれも、おきてない」

 どういう事だろうか。疲れているとしても、二人の起こし方はかなり容赦がない。余程のことが無ければ目を覚ますだろう。原因を探したいところだが、目が覚めたばかりで頭が回っていない上に情報が少なすぎる。取り敢えず、二人と一緒に2階に降りるべきだろうか、とベッドから降り、二人と手を繋いだその時だった。

「……二人共、それは?」

 二人と手を繋いだ瞬間、硬いものが私の手に当たった。尋ねると、二人はそっと手を見せてくれた。親指に嵌められている、ぶかぶかの虹色の指輪。私が注文を受けて作った、最初の作品である。初めて魔法付与していることを自覚した作品でもある。

「きのう、つけたまま、ねてたの」

「きょうは、たんけんするひだから」

 目を凝らして指輪を見ると、僅かに光を発している気がする。恐らく、僅かな効果とはいえ、魔法付与されている物を身に着けていたので二人は眠り続けていないのだろう。そうなると、この暗闇はかなり不味いものだということになるのだが。

「……二人共」

「「なあに?」」

 全く確定事項ではないし、単純に空に分厚い雲がかかっていて暗い上、偶然ジュディさん達が起きないだけかもしれないが。なんとなく、この空を見ていると不安感を煽られるというか、只事ではない、と直感が訴えていた。

「ちょっと、今から、ジュディさん達が起きない原因を知っているかもしれない人に連絡を取ってみるから、二人はこの部屋で待っていてくれる?」

「おいしゃさん、よぶの?」

「……そうだね」

 正確に言うとお医者さんではなく魔法使いだが、事態を解決できそうな人、と言う意味では間違っていないだろう。隣の部屋で手紙を書くだけだから何かあったら入って来ていい、という事を伝えて店に移動し、アンティークの小箱を確認する。

「手紙は来てない、か……」

 魔力がある人、又は魔法道具や魔法付与された道具を持っている人は耐性を持っていると仮定すれば、魔法研究所の人はいつも通り活動しているだろう。あの研究所は常に暗いし、まだこの事態に気付いていないのかもしれない。

「私の気の所為ならいいけれど……」

 ベルンハルト様に向けて、空の様子がおかしいこと、他の住人が目を覚まさないことを書いた手紙を送る。カタン、と音が鳴るが、すぐに見て貰えるとは限らない。私は一度、トッド君とターシャちゃんのいる自室に戻ることにしたのだった。


 部屋に戻ると、早くに目が覚めたからか、二人は眠ってしまっていた。その手にはしっかりと虹色の指輪を握ったまま、もう片方の手でお互いに手を繋いでいる。呼吸は安定しているから、ただ眠っているだけだろう。

「…………今の時間は、普段、朝食の準備を始めるくらいかな」

 窓越しに外の様子を見る。この時間帯なら、ちらほらと市場に向かう人などが大通りを歩いている筈だが、今日は人っ子一人見当たらない。もう少しよく見ようと思って、窓に手を掛ける。

「いたっ!?」

 バチ、と指先に静電気が走ったような痛みを感じ、反射的に手を引っ込める。恐る恐るもう一度手を伸ばすが、指先を近付けた時点でチリチリと僅かに音を立てているので諦めた。

「どう考えても、これが原因だよね……」

 兎に角、窓を開けるのは無理そうだし、開けない方が良さそうだ。それにしても全く状況が改善しない。深く溜息を吐くと、店の方、カウンターがある付近からガタンと大きな音がした。

「……ガタン?」

 箱に手紙が届いた時は、カタンと軽い音がするはずだ。今、聞こえてきた音は重たすぎる。手紙の他に何か一緒に贈られてきたのだろうか。理由は何であれ、確認しに行かなくては。立ち上がろうとしたその時、硬い足音が此方に向かって来ていることに気付いた。

「ふ、不審者?」

 咄嗟に身を守るものを探したが、作品の殆どは店の方においてある。認識阻害のアンクレットと空間接続チャームは持っているが、この二つは攻撃や防御には全くと言っていいほど適さないだろう。

「……扉を開けた瞬間に、攻撃を仕掛ければ」

 頭を殴れば人は動けなくなる。そう思い、扉の横に移動して息を潜めていると、反対側、扉の目の前で人が立ち止まったことが分かった。そして、その人物は、小さく呼吸を整えた後、扉を、ノックした。

「ルイーエ嬢、無事か?」


次回更新は6月17日17時予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり魔道士様の方が御相手っぽいな
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