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海と空

 ぽた、ぽた、と透明なレジンを落としていけば、水面模様が出来上がっていく。爪楊枝で掬う量を調節しつつ、全体がバランスよくなるまで落とす。満足いく模様になれば、形が崩れないように気を付けながら移動させ、UVライトを照射する。時間が経つと模様が変わってしまう事もあるので、できる限り手早く固めた方が良い。

「……うん、いい感じ」

 固めたものを確認すると、綺麗な海塗りレジンができていた。もっと薄い色のグラデーションで作ったり、青系以外の色の上に水面模様を作ったりしても可愛いのだが、今回は何処からどう見ても海、といったものが作りたかったのだ。

「後は、上に透明のレジンをのせてコーティングして……」

 仕上げとして透明のレジンを全体に満遍なくのせると、中央付近がぷっくりと膨らみ、更に下の模様が綺麗に見えるようになる。もう一度ライトを照射して、場合によっては更に艶消しや透明感を上げるグロス、パール風になる着色料などを表面に塗る。今回は使わないで、そのままの色を楽しむ。

「あ、ピンバイス」

 二つの海を閉じ込めたひし形が完成したところで、次はアクセサリーへの加工である。その為にはまず、作ったレジンに穴を開けないといけないのだが、今迄はそのまま貼り付けて使用していたので道具が無い。

「スキルポイント交換」

 工房ポイントと引き換えに、ピンバイスのセットを手に入れる。ついでに、今から作るピアスに使いたいパーツを幾つか追加で交換しておく。

「あ、交換式だ」

出てきたピンバイスは、ドリル部分を交換して使うタイプのものだった。開けたい穴の大きさに応じて使い分けるのだ。その中から一本、金具が通せる程度の穴を開けられるものを取って、片手でレジンを固定し、ひし形の上部に垂直にピンバイスを当てる。ピンバイスの平らな面を掌で固定して、先端のドリル付近を親指と人差し指で摘まむ。

「真っ直ぐ行きますように……」

 割れないように、穴が真っ直ぐに開くように、慎重に抑えながら、ピンバイスを回転させていく。ドリルがゆっくりと進み、硬いレジンに穴が開いていく。

「…………大丈夫そう」

 もう一つも穴を開け、白い削りカスを落とせばレジンの加工は終了だ。開けた穴に銀色の三角カンと細めのチェーンを付けて、一旦横に避けておく。シンプルにチェーンだけで繋いでも綺麗だが、今回は更にひと手間を加える。

「ワイヤーで形を作るとして、色は……今は無理かな」

 太めの銀色ワイヤーを取り出し、適当な長さで切る。同じ長さの物を2本作って、丸ペンチで片端を丸める。次に、先程交換しておいたゲージパイプを取り出す。これは、同じ大きさの輪を作る時に便利な道具だ。

「端から端に行くように……」

 丸めた先端部分から少し距離を置いたところを押さえて、ゲージパイプに巻き付けていく。すると、ウエーブのかかったメタルパーツの出来上がりだ。もう一つは先程とはウエーブの方向が逆になるように巻き付ける。

「できた」

 これで全てのパーツが揃った。ピアス金具を取り出し、先程のウエーブパーツの中心にチェーンが来るように取り付ければ、完成だ。なんとなくだが、チェーンを囲むようにメタルパーツが配置されている形は好きだ。今迄作った中で一番長いピアスかもしれない。

「雫型でもいいと思うけど、海塗りをしようと思うと、やっぱりひし形の方が良いかな」

 取り敢えず、これで一つ目は完成である。後は練りけしをレジンに入れて雲レジンを作るか、それともホログラム系を交換して宇宙塗りのレジンを作るか。この世界に宇宙の概念があるかわからないし、レジン作品はグラデーションと透明感があるものの方が好きなので、青空のレジンを作ることにする。

「半球モールドと、練りけしを交換して……」

 半球モールドの三分の一程度まで透明レジンを入れ、硬化。その間に練りけしを柔らかくなるまで練って、ゆっくりと伸ばす。伸びた薄い部分をピンセットや爪楊枝で拾って、それを雲の形に整えておく。あまり押さえつけると雲のふわふわ感が無くなるので気を付ける。

「硬化終わったかな?」

 先程の半球モールドの三分の二まで透明レジンを入れ、その中に練りけしで作った雲を配置していく。入れ終わったらもう一度硬化させ、今度はモールドの淵ギリギリまで青色のレジンを入れる。そうすれば、外して反対から見た時に綺麗な青空になるという訳だ。

「これはピアスに直接貼り付けるタイプにしよう」

 硬化が終わり、モールドから外すと透き通った青空のレジンが完成だ。ピアスに直接貼り付ける。

「次は……」

 着色料も沢山あるし、半球モールドがあるのでシャボン玉レジンでも作ろうか。そう思って着色料に手を伸ばすと、距離を見誤ったようで倒してしまった。蓋が閉まっていたので問題はないが、目が疲れているようだ。

「……今何時?」

 目が疲れているかも、と自覚すると、一気に視界が霞んできた。作業に熱中していて気付かなかったが、時計を見れば既に日付を超えてそれなりの時間が経っている。これは、今から寝ても確実に時間が足りないやつだ。

「後で片付けよ……」

 作業机に道具を放置して、迅速にベッドに向かったのだった。


次回更新は6月1日17時予定です。

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