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虹の指輪

「【工房】、タイマーを一時間半後にセット」

 二人と一緒に虹を見た後、大急ぎで部屋に戻り、工房に入った。あの光景が目に焼き付いている間に形にしてしまおうと思ったのだ。十色のビーズを取り出し、その中から順番に、赤、橙、黄、緑、水色、青、紫を並べる。日本式だと水色と青ではなく、青と藍だが良いだろう。

「テグス……」

 ビーズリングは最近何回も作っているので、この作業も慣れたものである。テグスを切り、虹の一番外側、赤色のビーズを取って通す。細かい縞模様にするよりも、虹と全く同じようにした方が良いだろう。

「一段の太さは……」

 既に完成しているビーズリングを手に取り、何段編んでいるかを確認する。数を数えて、七で割り、その分だけ赤色の段を編んでいく。次に橙、黄色、と思い悩んでいた時が嘘のように手が早く動く。

「……かなり、良い出来栄えなのでは?」

 三十分もしないうちに、一つ目の指輪が完成した。苦労の上に完成したものだからか、喜びも大きい。これは、もしかすると、追加ポイントも貰えるのではなかろうか。期待しつつ壁の方を見る。

『アイテム:ビーズリング 製作完了』

『完成度ボーナス獲得』

『【工房】スキルポイント2獲得』

『【ビーズ】技能ポイント2獲得』

『【ビーズ】初回完成度ボーナス獲得達成』

『【工房】スキルポイント50獲得』

『【ビーズ】技能ポイント50獲得』

 瞬く間に壁に文字列が表示されていく。自分でも出来栄えが良い、と思った物を客観的にも評価されるのは嬉しい。いや、私のスキルなので客観的かどうかはわからないが。ポイントがもらえるに越したことはないだろう。

「完成度ボーナスは1ポイントか、と思ったけど、初回完成度ボーナスはかなりポイントくれるみたいね……」

 しかも、作る物ごとに初回ボーナスが貰えるようだ。初めてビーズリングを作った時ではなく、初めて完成度の高いものができた時にボーナスがあるのは微妙に厳しいのではないだろうか。

「……取り敢えず、あと二つ」

 気合を入れなおし、次の作業に取り掛かる。渡した時に、どんな顔をしてくれるのだろうか、と思い浮かべながら。


 夕食前には指輪は完成したのだが、ここで新たな問題が発生した。今回のビーズリング製作は、私の店で初めてとなる注文の品だ。幾ら相手が気にしないだろうとはいえ、手渡しをするのは気が引けるというか、自身の主義に反する。

「ソニアちゃんは大丈夫だろうけど、トッド君とターシャちゃんは小さいし……」

 何か、管理するための箱か何かも一緒に渡した方が良いだろう。スポンジに切れ目を入れて箱に敷き詰める方法は使えない。今回のビーズリングは太めなので入らないだろう。

「それに、大人と同じサイズで作ったから、親指でもぶかぶかになりそう……」

 だが、折角買ったのだから完成したらすぐに使いたいだろう。今からでも小さいサイズも作るか。いや、それでは注文の意味がない。

「あ」

 指のサイズが合わなくても、指輪を身に着ける方法。何も、指につけないといけない訳ではない。ネックレスに通しておけば、色々なものを触る時に邪魔にならないし、外にいる時は服の中に入れておけば変に目を付けられることもないだろう。

「ネックレスチェーンは、まだないし、子供には使いにくいか」

 革ひものような物を縛って長さを調整できるようにするのはどうだろうか。三人がどういうかわからないので、紐を一緒に渡して、その時に提案してみよう。

「そうと決まれば早速……」

 出かけよう。足取り軽く階段を降りて行くと、既に店を閉めたのかジュディさんが丁度良かった、と笑顔になった。その右手には包丁が握られている。

「アユム、良かったら夕食の準備を手伝ってくれるかい?」

「はい」

 昼寝をして、虹を見てから作業をしたので時間感覚が狂っていた。ご飯をご一緒させてもらっているのでできる限り手伝いたい。それに、この時間だと装飾品関連の店は閉まっているだろうから、工房のポイントで紐と箱を手に入れよう。確か、梱包用品は1セット3ポイントだったはずだ。紐と合わせても30ポイントあれば足りるだろう。笑顔で返事をして、二階の厨房に入る。

「そうそう、トッドもターシャも、相当楽しみにしてるみたいでね。今日も閉店してから張り切って掃除を手伝ってくれたよ」

「そうなんですか?それは嬉しいです」

 手を洗い、頼まれた野菜を切っていると、ジュディさんが笑顔で私に教えてくれた。いつも積極的に手伝ってくれたらいいんだけどね、と口では言っているものの、その表情はとても柔らかい。

「明日の朝で二人の手伝いは終了の予定だけど、アユムの作業の方は順調かい?」

「はい。後は渡す為の仕上げというか、そう言った作業だけです」

「代金は早めに払っておこうか?」

「いえ、引き渡しが終わってからで大丈夫です」

 自信はあるが、もし気に入らなかった場合は代金を受け取らないつもりだ。そう伝えると、真面目だね、と溜息を吐かれた。

「損をしないようにするんだよ」

「はい。気を付けます」

 優しい忠告を貰い、思わず笑顔が零れる。料理をしながら、明日の朝を待ち遠しく思ったのだった。


次回更新は2月18日17時予定です。

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