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二度目の招待

 予想通り、B様は私が森に行ったことを知っているようだった。正しくは、桐野さんが滞在している宿屋に行ったことで、依頼された魔術道具の試作品ができていると判断し、結果的に森でフィンリー鉱石を採取したことが分かった、という事だった。

「聖女一行について調べることができるってことは、B様は、かなり地位を持っていらっしゃる可能性が……」

 確か、ランバート様は聖女様たちの情報を得ることができない、と言っていたはずだ。王都の警備が仕事であるランバート様よりも、魔法研究所に勤めているB様の方が聖女様達への支援を行ったりすることが多いだけかもしれないが、どうであれ、本来なら二人共私が関わることのないような雲の上の人なのだろう。

「……これは、もしかしなくても、心配させてしまった、みたい」

 手紙を開くと、最初に書いてあったのは、B様が調べた聖女様たちの動向についてだった。聖女を騙る人たちに魔法付与を利用されないために調べてくれていたらしい。確認が終わる前に試作品を見せに行ったことに対して次からは気を付けて欲しい、と書かれていた。

「一緒に連れて来られたから、桐野さんの顔を知っていたけど、その事はランバート様達には伝えていないんだった……」

 聖女様達と出会ったのは王宮で、ランバート様と会ったのは王宮から出た後だ。事情を知らないB様からしたら、私が騙されていると疑うのは仕方がないだろう。

「『聖女一行が現在、ネイジャンに滞在しており、儀式の準備のために我が国に戻って来たことを把握しているものは少ない。今回、ルイーエ嬢の店を訪れたことに関しても、情報が制限されているから大々的に知られることはないだろう』」

 私の店を訪れたことを知っている人は一握りで、更に、私が魔法付与を使った道具の製作を依頼されたことを知っているのはB様だけだという。桐野さんが滞在している宿屋に出入りしている姿は見られたものの、単純にアクセサリーを依頼されたと思われているらしい。

「ネイジャンとの国交は現在良好だから、国としてもネイジャン付近の魔物の掃討は援助する方針って、私に教えて良い事なのかな……」

 この間、キアン様が国を訪れてから、ネイジャンとの交易は活発になっており、今回の儀式の際、近隣の街に被害が出ないように兵を出すらしい。つまり、手助けをするのは国の総意なので、私も全力で道具を作れ、という事なのだろう。

「『試作品を製作して、魔法素材について行き詰ったことがあれば相談してほしい』」

 丁度行き詰っている所である。都合の良すぎる手紙にちょっと驚きつつも便箋を取り出し、フィンリー鉱石について詳しく知りたい旨を綴る。具体的な課題としては、同じ魔力を帯びていても、どうにかして音を送る石を選べるようにできないか、だ。

「そもそも、一人一人魔力が違う、っていう概念からよくわからないけれど……」

人によって使える魔法が違うのだから、何か違いがあるのだろう。その違いが明確に分かっているのなら、個人通信と全体通信などを分けることもできるとは思うのだが、アイディアがあっても知識が無い。専門書を手に入れることもできないので、聞くしかない。

「魔法について詳しくないので、初歩的な質問だったらごめんなさい、と」

 そこまで手紙を書いて、封をする。B様の返事を待っている間に、私は本でフィンリー鉱石の記述と、組み合わせたら使えそうな素材が無いかを調べるつもりだ。手紙を入れて小箱の蓋を閉め、本を開く。

「あ、あった」

 本をパラパラと捲っていくと、フィンリー鉱石についての記述を見つけた。何か新しいことが分かるかもしれない、そう思って説明文に目を落とす。

「…………あれ?」

 しかし、フィンリー鉱石についての記述は短く、名前の由来や素材を見つけやすい場所、音を伝える性質については書いてあるものの、正直、B様の手紙に書かれてあった以上の情報は全くなかったのだ。

「現時点では特に使用用途はなく、素材としての価値は低い、か」

 この本は森などで素材採集を行い、売ることで生計を立てている人に向けて書かれた本のようで、素材が採取できる場所や一般的な使用法、素材としての価値や相場も書かれていることが多い。しかし、フィンリー鉱石はその素材としての価値が殆どなく、性質についての研究も進んでいないようだ。

「だから魔法研究所にも在庫が無かったのかな……」

 ある意味納得の理由である。それにしても、研究されていない、あまり名前も知られていなさそうなフィンリー鉱石を紹介してくれたB様は、やはりすごい。


カタン


 小箱が音を立て、B様からの返事が来たことを知らせる。随分と早い返事だ。今日はたまたまは起きていたのかもしれない。

「さて……」

 手紙を取り出し、封を切る。すると、中には、便箋と一緒に『招待状』と書かれた、重厚感のある紙が入っていたのだった。見覚えのあるその招待状は、国立魔法研究所に入るために必要なものだった。

次回更新は5月19日17時予定です。

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