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個別と全体

 一方向にしか音が伝えられないという問題を解決するにあたり、最も簡単な方法は、身に着けるフィンリー鉱石を増やす、ということである。発言するための、自身の魔力を最初に流したものと、聞き取りの為の他のメンバーの魔力を最初に流したものをすべて身に着けることができれば、全員による同時通話のような事は可能になるだろう。

「問題は、全員と同時通話することのデメリットが作戦にどこまで影響を与えるか、です」

 簡単な図を描きながら桐野さんに説明をすると、彼女は眉間に皺を寄せた。そして、私から筆記用具を受け取ると、新しい紙に洞窟の簡単な地図を描き始めた。そして、そこに印を書き込んでいく。儀式を行う時の配置なのだろう。

「中央の聖女様は情報を聞いても指示を出したりする余裕なんてないでしょうし、私たちとしても、反対側のメンバーを助けに行く余裕はない。最低限、両隣の人とやり取りができれば動きやすいとは思いますけれど……」

「出口は全部で六か所、これを分担して防衛する予定ですか?」

「はい。途中でどれだけ魔物が暴れたとしても、元となる瘴気を祓う事ができれば消滅するので、街を襲ったりしないように、洞窟内に押しとどめれば大丈夫ですから」

 作戦は比較的単純なものらしい。まず、魔物を刺激せずに、聖女が一人で中央まで降りる。その間に残りの六人がそれぞれの出入り口に有志の兵を引き連れて向かい、守る。余裕があれば段々と中央の方へと防衛線を移動させ、最少人数で儀式が終わるまで耐えきる、というものらしい。

「単純とはいえ、かなり戦力が無いと難しそうな作戦ですね……」

「通信手段無しで実行できることを前提として考えているので、狭い道で押しとどめる、という方法になりました」

 どれだけ魔物の数が多かったとしても、狭い道を一度に通れる数は決まっている。そこで守ることにより、一度に戦わなければいけない数を絞ることができる。だが、問題は、数の差の関係上、長時間戦闘を行うことになるので、守り手には相当な能力が必要となる。

「ただ、問題として、私たちにはそれぞれ空間スキルと、この世界の人の平均より優れた戦闘能力が与えられてはいますが……」

「耐久戦に向いている人ばかりではない、ということですね」

「はい」

 私が最たる例ともいえるが、空間スキルを与えられているからと言って、戦闘に秀でている訳ではない。桐野さんは魔法職、と言っていたので直接戦闘は苦手だろうし、支援に特化していたり、攻撃に特化していたりする人もいるだろう。

「最も防衛能力が高い人を、この、一番大きい出口に配置します。この人は防御に特化していることと、恐らく最も魔物が集中する場所ですので、援護に回ることはありません」

「他の人も、防衛能力に応じて場所を割り振っている感じですか?」

「はい。有志の戦力はそれぞれの街から出るので、出口の大きさに対して戦力が釣り合ってない所もありますが……」

 言いながら、桐野さんは地図に担当する人の簡単な能力、予定されている有志の数、押し寄せてくる魔物の数と、中央から魔物が移動するまでにかかる時間を書き込んでいく。

「…………意外と、複雑な図ができましたね」

「そうですね……」

 完成した地図をもとに、誰と誰が通信できないといけないか、というものを書いていく。すると、ほぼ全員と通信手段が必要な人や、逆に、聖女様とだけ通信できればいいという人もいて、全く統一性が無い。

「一応聞きますけど、全員との通信は……」

「逆に邪魔だと思います。ただ、大量にイヤーカフを付けたところで、どの石に魔力を流せばいいのかわからなくなる可能性もありますよね?」

「そう、ですね。フィンリー鉱石の見た目はどれも同じですから」

 というか、同じ魔力を帯びていたら音を拾ってしまうなら、個別の通信というのも難しいのではないだろうか。桐野さんと二人、地図を見ながら黙り込む。

「……私の方で、誰と誰が通信できればいいのか、優先順位をつけておきます」

「なら、私はフィンリー鉱石の特性について、もう少し調べてみますね」

 これ以上話をしたところで、現時点では解決できないだろう。そう判断した私たちは、お互いのやるべきことを確認し、次に会う日程だけ決めて解散したのだった。


「次は二日後……。明日も当日もお店はあるから、時間に余裕はないから、夜のうちに調べるか……」

 途中でB様や魔導士様から教えてもらっていて忘れていたが、まだ本でフィンリー鉱石についての記述を見つけていない。そこを読めば、少しは詳しいことがわかるかもしれない。

「そういえば、B様からのお返事来てるかな」

 朝はまだ、手紙が読まれた形跡はなかった。森に行っていたので箱を確認するのが遅くなった、と思いながら店に行くと、件の箱は、チカチカと、いつもより強い光を放っている気がした。

「わぁ……」

 恐る恐る箱を開けると、いつものように、黒い封筒が入っている。宛名も、いつも通りの字で書かれている。が、私は直感的に思った。

「……森に行ったの、バレてるな」

 深くため息をついて、手紙の封を切った。

次回更新は5月18日17時予定です。


今日で100話です、ここまで読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] え?バレてるってか同一人物じゃないの?
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