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纏めるのはアリなのか

 そうだ、今日のお昼はパスタにしよう。作業をしていると、突然そんなことを思いついた。自分で作ろうと思うと絶妙に面倒くさいが、定期的に無性に食べたくなる、パスタ。ミートソース、ボロネーゼ、カルボナーラ、ジェノベーゼ、ペスカトーレ、ペペロンチーノ、和風な明太子や醤油でも美味しそう。ちょっと変わったところでラザニアもいいかもしれない。


 中々決まらないので、最初に目に入ったものを注文しよう。そう思って、足取り軽く食堂へと向かった。


 扉を開け、列に並び、いざ注文、と思ったその時だった。真っ白な光が視界を埋め尽くし、次の瞬間、食欲をそそる香りは全くしなくなっており、代わりに冷たい空気が入って来て鼻が痛くなった。

「え……」

 呟いたのは、誰だったのか。私と、食堂で近くに並んでいた七人は、何故か大理石の床の上に座り込んでいたのである。偶然なのか、全員女子である。まあ今はそんなことどうでもいい。

「ええい、誰だ、座標をずらしたのは!?」

「原因はわかりません、が、召喚自体は無事に行えたはずなので……」

 慌ただしい足音と共に誰かの怒声が聞こえてくる。逃げようにも此処が何処なのか見当もつかない。下手に動いた方が危険だと誰もが感じていたのか、逃げ出す人物はいなかった。そして、足音が段々と大きくなり、曲がり角から恰幅のいい後頭部が危ないおじさんと数人の男性が現れる。

「此処か!!」

 服装、おかしくないですか。具体的に言うと時代がかなり前だし国も違う気がするんですが。そう尋ねるより前に、恰幅のいいおじさんは私たちの方に近付いてきて、全員の顔を順番に見た。初対面なのにじろじろ見てきて失礼だな、と思っていると、おじさんは後ろを振り返り大声を上げる。

「誰が聖女だ!!」

「わ、わかりません……」

 聖女。聖女って、あれか。聖なる乙女とかいうやつで、ゲームなら悪しき存在を祓ったり仲間を回復したり強化したり結界を張ったりする役割の。製作者によっては命懸けで世界を救わないといけなくなる、そんな存在。

「鑑定の道具は!?」

「召喚の間からずれてしまったので、直ぐには……」

 よくわからないが、会話の流れ的に誰かが聖女という事なのだろう。ドッキリ系の企画だとしても、主要人物扱いされるのは遠慮したい。できる限り存在感を薄めつつ成り行きを見守ろう。そんなことを考えている間にも状況は勝手に進んでいく。

「早く持って来んか!!」

「持ってくるよりも、聖女様たちに移動して頂く方が早いかと……」

「ならば早く行くぞ!!ついて来い!!」

 拒否権なんてある雰囲気ではなかった。結局、誰一人として名乗ることもないまま、私たちは怒鳴り声をあげてばかりのおじさんに連れられ、見知らぬ建物を歩くことになった。おじさんの部下っぽい人たちが周りを囲んでいるので逃げられないが、はぐれる心配もない。

「此方の水晶に一人ずつ触ってください」

 やけに高そうな水晶が部屋の中央にポツンと置いてある。一番前にいたポニーテールの人が水晶に触れると、【収納空間】という文字が浮かび上がった。次のウルフカットの人は【地図】、ハーフアップの人は【厨房】。よくわからないが、スキル的な何かだろうか。随分凝った演出だな、と思っていると、ショートカットの人が【演出空間】という文字を出した。

「次はお前だ」

 声を掛けられたので、水晶に触る。すると、【工房】という文字が現れた。さっき厨房の人もいたし、同じような扱いなのだろうか。というか、これでどうやって聖女を決めるのだろう。さっきから空間関係の文字しか出てない気がする。

「次だ」

 苛立ちを隠さない声音でおじさんが指示を出す。こっちに当たられても困るんだけどなあ、と見ていると、ゆるふわウエーブの人が【聖域】という文字を出した。もしかすると、これは。

「聖女様だ!!」

 わっと歓声が上がる。やっぱり空間系ではあったものの、確かに聖女と言えそうだ。一応、という感じで残りの人も水晶に触れるが、聖域の文字は出てこない。なんだかよくわからないが、聖女以外に用はないなら帰っていいのか聞きたい。

「あの……」

「聖女様、此方に!!」

「宴の用意がしてあります」

 駄目だ。聖女様に夢中で誰もこっち見てない。本当に帰りたい。すぐには帰れないならせめて宴でパスタ食べさせてほしい。仕方がないので、この場は流れに身を任せ、落ち着いたところで帰らせてもらおう。取り敢えずお腹空いて仕方がない。食堂に並んでいたくらいだし、多分、皆お腹空いてる。

「聖女様万歳!!」

「宴だ!!宴だ!!」

 今思えば、その時は、お腹が空いて冷静に物事を考えられる状態でなかったというしかないだろう。尚、宴にパスタは出なかった。


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