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魔法学の授業

魔法学の教員は四人だ。一人一人がそれぞれ四つの属性を担当している。


属性の判明している生徒は数か月に一回特別クラスに移動するかのテストが行われ、定期のテスト以外にもある日突然魔法が使える様になりクラス移動が行われることもあるらしいが、ゲーム内では噂だけだ。


「今日は貴方達の魔力をテストします。テストと言っても難しい事はないので、安心してください」


長い髪をひっつめた老年の女性はスミス教授、この国でも屈指の王宮魔導士だ。とても厳格な女性で、アレクサンダー相手にも必要があれば臆せず叱責する。


彼女は火を操るが、火は四つの属性の中でも需要が高いにも関わらず習得が難しい。

現在の宮廷にも数える程度しか使い手がいないが、彼女はその中でも特に優秀と言われている。


逆に最も習得が容易いとされているのが、アレクサンダーとドリスの操る水の属性である。水はより身近で、変化が分かりやすいのだ。


アレクサンダーもドリスも水の流れを変え、少ない量ならまるで飴細工の様に操ることが出来るはずだ。


まぁだからどうしたって話なんだけど。


ほんの少し水の流れを変えたり手の平に入る量の水を球体に出来たりするより、エリザベスが何もないところから火花を起こす方が、マッチいらずでこの時代としては実用的かと思う。


魔導士として宮廷で働くためには、船を動かすレベルで水流を変化させる必要があるのだ。


「まずは、魔法を既に使ったことがあると言う生徒。前に出てきてください」


チラリと横を見る。A・Bクラスから特別クラスに入れるのは三人だけだ。アレクサンダー、ドリス、そして私。


既に魔法が使えることをお互いに知っている2人は、まるで恋人同士のように寄り添いながら進み出た。


……アホだな。


居心地悪そうに前進した私を見て、スミス教授がニコリと笑いかけた。


「ブラウン嬢。光の魔法を使うからといって特別扱いはしないと言いたいところですが、入学前試験の結果を聞いて驚いています。努力したようですね、魔法学でも変わらぬ努力を望みます」

『はい、善処いたします』

「ちょうど先程指先を切ってしまったんです。光の魔法を見せてください」


まだ少し血がにじむ指先をスミス教授が差し出した。あまりに出来立てと言った具合の傷に、彼女がわざと傷をつけたのではないかと不安になる。


だが傷を治すのは得意だ。両手を重ねてから、自分の手を暖炉で温める様に傷にかざす。

彼女の指がランプの様に内側から光る。光が収まる頃には、彼女の指には傷一つなかった。


「素晴らしい」


スミス教授がまさに感激という表情を見せた。


光の魔法の使い手は本当に少ない。確か100年に1人いるかいないかだった気がする。

その上、何かのきっかけで属性が光だと分かったとしても、前例が少ないために魔法の鍛錬がしづらいのだ。


属性が光だったとしても、ちょっと指を光らせるくらいじゃ意味がない。

ただの人間電球か、一昔前のエイリアンだ。


平民がいきなり傷を癒す魔法が使えるとなったら大騒ぎになるよね。


後ろではザワザワと生徒たちが騒ぎ出す。嘘じゃなかったんだ、という声まで聞こえた。


同情するよ、ヒロインちゃん。


「ェヘン!」


後ろで大きく咳払いが聞こえ、慌てて飛び上がるようにスミス教授の前から去る。


ドリスか。びっくりした。今の動きで小心者だってバレたかな。

実際小心者だから良いんですけどね?


「ではアンダーソン嬢」


スミス教授に促され、ドリスは中庭の小さな池の一部にさざ波を立て、少量の水を左手に掬い取ると、滝を逆行させるように右手で引き上げた。


ドリスの魔法がどれほど上達するかゲーム内では触れられないが、どちらにしろ彼女は働く気はないだろうから関係ない。

身分の高い女性が魔力を自慢する理由はただ一つ、優秀な子孫を残せるというアピールだ。


その次に呼ばれたアレクサンダーは湖に手をかざし半円を描く様に腕を振り上げた。シャワーの様に水が沸き上がり、小さな虹が出る。


生徒たちから歓声が上がった。


流石王太子だ。魅せ方をよく知っている。パフォーマンスに慣れているようだ。


「素晴らしい。三人とも魔法の才能があるようですね。……ですが、魔法の才能だけでは優秀とは認められません。優れた使い手になるためには、魔法だけでなく四つの属性や自然の根本的な理解が必要です。“謙虚に”学ぶ必要がありますよ」


謙虚と言う言葉を強調しながらアレクサンダーとドリスを見るスミス教授にちょっと笑いそうになる。

ヒロインにとっては良き相談相手になってくれるキャラなのだが、もしかしたらアレクサンダーから逃げるのに使えるかもしれない。


「次は属性の分かっている生徒達です。火はここへ、風はダン先生、水はミラー先生、土はヒル先生のところへ。一人ずつ確認します」


属性を確かめる方法は簡単だ。その属性の優れた魔導士と手の平を向き合わせ、相手に魔法を使ってもらう。同じ属性なら、共鳴して魔法が引き出されるという訳だ。


魔力は基本的には目に見えないものなので、自分の手の平に何らかの魔法が発生したら属性が分かるという訳だ。


やはり水の属性に並ぶ生徒が多い。ミラー先生は優しい先生らしいが、ゲームではほとんど出てこない。


次に人数が多いのは風だが、風の魔導士は宮廷ではかなり重宝される。風量や風向きを変えられるようになれば、船旅や海戦にはなくてはならない存在だ。


土の属性は人数が少ない。余程の使い手でないと魔導士にはなれない険しい道だ。


そして火。スミス教授がエリザベスを褒めている。彼女は自分で指先から微かに火花が出せる。特別クラスまで、ほんの後ちょっとなのだ。


鍛錬すれば特別クラスにいけるかも知れないと声を掛けられ、エリザベスはちょっと嬉しそうな表情を見せた。


魔法が使えないからアレクサンダーの婚約者にって言うのはどうなったんだ?

まぁ今更彼女が魔法を使えるようになったからって撤回はしないだろうけど。ゲームでは開花しない訳だし。


他の生徒から距離を取りつつ、風属性の列の最後尾に並ぶセヴァラスを見る。彼も特別クラスまであと一歩のはずだ。


「とても良いね、君はもしかしたらすぐに特別クラスに行けるかも知れないよ」


風属性のアルバート・ダン教授はゲームでも重要なキャラクターだ。


ダン教授は大嵐の中、水属性の魔導士と協力して貨物船を無事に他国へ到着させたことで有名らしい。近年まれに見る使い手だと噂だ。


ゲーム内ではとても気さくで優しく、生徒達からもアルバート先生と慕われている。

赤茶の髪に銀縁眼鏡の見た目にも穏やかそうな初老の男性だが、ゲームイベント次第では彼が激高する様子が見られる。


あれは怖かったな……。


生徒が数人怪我をする危険なイベントだし、この世界では発生させたくない。


セヴァラスは、にこやかに話しかけてくるアルバート先生の視線を避ける様に隅に移動している。

そんな風だと余計に目立つと思うんだけど。


火に並んでいたわずかな生徒が全員テストを済ませると、スミス先生は属性の分からないとされる生徒たちを呼んだ。


彼らは入学テストの時に水晶に触れ魔力が確認された以外、魔法らしきものが確認できていない。

身近に同じ魔法が使える人物がいないだけで、今回のテストで属性が分かることもあるが、大抵は属性が不明、魔力が低い生徒達だ。


貴族は横のつながり強いから、自分の身近にいなければ知人を頼れば良いだけの話だしね。


火から順番に手の平を合わせて確認していく。

緊張の瞬間だ。火の使い手は少ないから、火以外は試したことがあるという生徒も少なくないらしい。


今回のテストでは残念ながら属性の判明した生徒はいなかった。


「皆さんお疲れ様です。次回からは特別クラス、魔法クラス、魔力クラスに分かれて授業を行います。特別クラスの生徒は少ないので、全学年合同です。他の生徒と授業の時間がずれるので注意してください」


『……え!?』


授業の教室だけじゃなくて時間も違うの!?

ゲームでそんなこと一言も言ってなかったんですけど!?


いや、よく考えれば全学年一斉に魔法学やって教員が四人で足りるわけないか……。

他の学年は違う先生、とかじゃないのね……。


そりゃヒロインが一人で行動する場面が多くなるわな。

アレクサンダーとのイベントが進むわけだよ。

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