表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/51

アレンディアの祭り

年度末忙しすぎる……

アレンディアの祭りはエマと過ごすから問題ない。そう思っていた時期が私にもありました。


「こうして4人でコーヒーを飲めるなんて嬉しいわ」


私はアレンディアの祭り当日にまた王城に呼ばれ、アレクサンダー、エリザベス、そしてジェームズとコーヒーを飲んでいる。


まぁ言わせてもらうとしたら金曜日だったのが災いしたとしか思えない。エマと2人で楽しくコーヒー牛乳を飲んで、彼女に天才と言われて浮かれていた自分をぶん殴りたい。


暢気に過ごしていざ寮に戻ろうとしたらアレクサンダーとエリザベスに引き留められ、王城に一緒に行くことになったのだ。2人が既に私の外出許可まで学園長に取っていたためアレンディアの祭りはエマと過ごしたのですがと断る訳にもいかず、今に至る。


アレクサンダーとジェームズはあからさまに険悪だし、エリザベスが気を遣って話しているのも痛々しい。そしてコーヒー苦い。さっきコーヒー牛乳を飲んだせいで余計辛い気がする。最悪。


いや本当になんでこのメンバーなの? まだジェームズと2人の方が幾分かマシなんですけど。


「レナ、コーヒーは気に入ったか? 今日のために良い物を取り寄せたんだ」


レナ!? ジェームズからの突然名前呼び!? 前回会った時はブラウン嬢って呼ばれていた気がするんだけど!


『……そうですね。私の舌では正直分からないです、申し訳ありません。こういったものはやはりリッチ様のような高貴な生まれの方にこそふさわしいかと……』


ジェームズは何でこんなに接近してくるんだろう。ジェームズとは全然会話していないのにおかしいよね?


……もしかして、セヴァラスと仲が良いから?

彼と親しくなりすぎているから、それを防ぐためにジェームズやアレクサンダーをあてがわれているんだろうか。でもそうだとしたら、やっぱりセヴァラスが国に対して敵意があるのを恐れている、そうされる可能性があると思っているって事になっちゃうけど……。


「ブラウン嬢はコーヒーが苦手か?」


アレクサンダーは先日以降話していない。お友達ではない宣言したはずなんだけど、この状況を一体どう思っているんだろう。


『はい、苦いものはあまり好みません……』

「そうだったのか。相手を誘惑する祭りのはずが、残念だな」

『…………』


アレクサンダーさん? 正気ですか?


「おい、婚約者の前で非常識だろ」

「君には関係ない、2人は僕の客人だ」

「何を言っているんだ? アレンディアの祭りに2人も招待できるわけがないだろ」


わぁ、ジェームズがめちゃくちゃ真っ当なこと言ってる。


と言うか何これ、ゲームのイベントですか? 私見逃してました?

アレクサンダーとジェームズの遭遇イベントは作中でもランダムイベントとは思えないくらいの波乱なんですけど、それの固定イベントバージョンですか?


『……帰って良いですか?』

「ごめんなさいね、レナさん」

『いえ、私こそ……申し訳ありません、リッチ様』


目の前で喧嘩されても私もエリザベスも苦痛でしかない。だけど婚約者が堂々とアレンディアの祭りに自分以外の女子生徒を誘うなんて、私以上にエリザベスの方が辛いはずだ。


『そもそも私はエマとアレンディアの祭りを過ごしていますし、祭りとして招待された訳ではないので、これは普通のお茶会と思っています』

「……レナ、良ければ後で少し馬屋に行かないか? フルフルの夕方の散歩に付き合ってくれ」


え! それってジェームズ固有イベントなのでは!?

こんなタイミングで……!?


「ジェームズ、彼女は遅くなる前に寮に戻らなければならない」

「責任をもって僕が馬車で送る。“大切”な兄がアレンディアの祭りを婚約者と“2人”で楽しめるよう気を遣っているのが分からないのか?」


まぁそれは本当にそう。私にとってこれはアレンディアの祭りじゃないけど、エリザベスにとっては違う。

婚約しているのはもちろん、エリザベスはアレクサンダーのことを慕っているから、今日の事を楽しみにしていただろう。


ジェームズが誘っている夕方の散歩は、おそらくフルフルの手綱を引いて王城の周りを散歩するイベントだ。もちろんこの時点では発生するはずがない。そもそも1年目はジェームズと会ってないし。


フルフルとの夕方の散歩イベントそのものは大したものではないがこれを発生させると、後日フルフルに乗せてもらうイベントが起こる。ジェームズルートの中では人気のイベントになるが、これが今の世界で起こると考えるとちょっと危ない。




~~~~~~~~~




『そんな、私が1人でフルフルに乗るだなんて……怖いわ』

「大丈夫だ。フルフルは賢いし、君を気に入っている。それに……俺が横についている」

『ジェームズ殿下……』


ヒロインはジェームズの手を借りて、フルフルに乗る。そして高い位置から見渡す王城の外庭に感動し、フルフルがとても良い子だと鬣を撫でる。ジェームズはそんなヒロインを眩しそうに見つめるのだ。


「いつでも王城に来てくれ。俺が招待する」

『殿下……ですが私は平民の身。殿下の良い婚約のためにも、あまり親しくするのは……』

「レナ、俺は……っ!」

『あっ……』


ジェームズは手綱を持つ手に力が入り、フルフルが少しバランスを崩す。元々ジェームズの方に身体も意識も向いていたヒロインはそちらに倒れてしまうのだ。


ギリギリのところでヒロインを支えるジェームズと、その胸に倒れこむヒロイン。2人の顔が近付き、ヒロインは頬を染める。


「……王太子を逃したのは、お前と会うためだったのかもしれない。それも悪くないと思っている」




~~~~~~~~~




勝気で上昇志向が強く、自分がアレクサンダーより優れていると疑わなかったジェームズが、初めてヒロインとの穏やかな時間が大切だと口にする。

ジェームズルートではかなり後半のイベントだ。


今まで少し棘があったジェームズの雰囲気がこれを機に少し柔らかくなるんだよね。ジェームズからアレクサンダーへの態度が柔らかくなるならそれはありがたい……。来年の入学時にアレクサンダーとジェームズの派閥が出来てしまうと学園全体がギスギスしてしまうし……。


まぁだけど、この散歩イベントからどのくらいの間で乗馬イベントがあるか分からないし、ちょっとでも状況が違えば落馬。多分私、ヒロインより体重あるし……。


でも散歩イベントだけで乗馬は遠慮すれば良いかな。ジェームズとの噂は今以上に広まりようがないだろうけど、ジェームズ自身に勘違いされる可能性はある、か……。

でもエリザベスには色々と助けて貰っているし……。


いやでも普通に帰れば良いんだけどね?

ここにいる理由ないし、でも帰るって言ったらジェームズがすんなり行かせてくれない可能性もあるか……。


『ジェームズ殿下のおっしゃる通りです。せっかくですから、アレクサンダー殿下はリッチ様とお2人でお過ごしください』


まぁしょうがない。エリザベスと敵対関係になるのは避けたいから……。

私が立ち上がって軽く礼をすると、アレクサンダーは少し表情を曇らせた。エリザベスはそんなアレクサンダーをちらっと見て、一瞬ふっと溜息をついた。


うー……私が気を遣わない方が良いのかな。プライドが傷付いたかも。いやそれ以前にアレクサンダーの態度に傷付いているんだろうけど。

残しておいてなんだけど、この後2人で大丈夫かな。


『……ジェームズ殿下、申し訳ありませんが友人が待っておりますので、なるべく早めに寮に戻りたいと考えています』

「大丈夫だ。フルフルは午前も身体を動かしているから10分程で回る。行こう」


もう一度礼をしてジェームズと共に馬屋に向かう。私の口から大きく溜息が出て、ジェームズがハッと笑った。


「お前アレクサンダーが嫌いなのか?」

『……嫌いではないですが、リッチ様を尊重されない態度が理解できません。私も困っています』

「アレクサンダーにとって光魔法の魔導士は天使だからな。変な絵本ばかり読んでいるから現実を見失う。あいつはいつも視野が狭い」


ジェームズは機嫌が良さそうだ。私がアレクサンダーより彼を選んだことが嬉しいのだろう。

連れ去りイベントが発生したと思って良いのかな。


アレクサンダーと仲良くする訳にもいかないけど、そのせいでぐんぐんジェームズとの好感度が上がっちゃうんだろう。


『妙な噂が流れているので、本当はジェームズ様とはあまり親しくしない方が良いとは思うのですが』

「……はは、お前は面白いな」


わー、ちょっと昔の少女漫画でよくあるセリフキター。

そっちは面白くてもこっちは全然面白くねー。私は玩具じゃねー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ