お誘い ※一話抜けていたため追加しました
アレンディアの祭りは来週の金曜に控えている訳ですが、結局セヴァラスを誘えていません。いや難易度高すぎるって。セヴァラスにはまだ普通に避けられてるし。
最近のセヴァラスは図書室もあまり利用していないようだし、魔導具学の後にもホーン先生と話す事が多くて、彼の魔法学クラスの後しかろくに話す時間がない。それが今日である。
誘うなら今日がラストチャンス、もしくは来週でも良いけど流石にギリギリすぎるし、私を待ってくれているというエマをそんなに待たせる訳にはいかない。約束したわけではないけどジョシュアが待っていると言ったのも気になるし。
ジョシュアだって当然モテるんだから色んな人に誘われているんだろう。それを断っているのか返事を待たせているのか、はたまた二股かけるつもりなのか知らないけど(ジョシュアだったら二人だけの秘密……とか普通にやりそう)私の罪悪感が耐えられない。
いや、セヴァラスだって都合があるだろうし、早いに越したことはないよね。
図書室に行くが、セヴァラスはまだ来ていないようだ。
ヤバい、緊張する。人のほとんどいない図書室で大きく深呼吸すると、古い書物の匂いがした。図書館はあまり光が差し込まない設計になっている。薄い色のブラインドがかかり、陰になる部分にはランタンが置いてある。
これも魔導具であるとホーン先生が教えてくれた。セヴァラスが興味津々で目をキラキラさせながらランタンの明かりを調整していたなぁ……。あの時は仲良く出来てたのに。まだ入学から半年しか経ってないのに色々起こりすぎだよ。
しばらくしてセヴァラスがやってきた。少し疲れているように見える。セヴァラスは元々痩せているし身なりもあまり良くないので、顔色が悪いと一気に……何と言うか、あまり貴族らしくは見えない。
「レナ、遅くなった。今日のノートだ」
『いつもありがとう』
「君が勉強したい気持ちがあるからこそだ」
同じテーブルに座り、セヴァラスは自分の勉強を始めるようだ。あー誘いづらい。めっちゃ一生懸命勉強していて、私がここに来るのも純粋に勉強のためだと思っている相手に恋バナなんて出来ないんですけど。
……そうだ、相談ってことで聞いてみるのはどうかな?
私だって出来ればエマと過ごしたい訳なんだから。別にセヴァラスを誘わなきゃいけないって訳じゃないよね。
『その、教えて欲しいと言うか、アドバイスが必要な事があるんだけど……』
「なんだ?」
セヴァラスが真っすぐにこっちを見る。黒くて重い髪の間から、同じように真っ黒な目がじっとこちらを見つめている。
『えっと、アレンディアの祭りのことなんだけど、私はエマと過ごそうかなって思ってたの。だけどそれが、別の人に感じが悪いって言われてしまって』
「……今流れている君の噂を考えると、残念ながらそう思う奴もいるだろうな。だが君がナイトリー嬢と親しいのも周知の事実だし、問題ないだろう。わざわざ君に感じが悪いから誰か誘えと伝えたという事は、君が王太子やジェームズ殿下とこれ以上親しくなる前に唾をつけておこうという魂胆だろうな」
―――セヴァラス! 天才! 好き!
「なんだ、その顔は」
『いや、こんなにちゃんと考えてくれるなんて思わなくて……多分セヴァラスの言う事あってるし……。パッと思いつくのがすごすぎるよ』
セヴァラスの言う事はどう考えても合っている。ジョシュアは私が王族に迎えられる可能性を考えて、今年のアレンディアの祭りを私と過ごしたいんだ。私ですらジョシュアが風除けになると思っていた、つまり彼といたら王族ですら介入できない。
「君は噂の渦中だ。普段から誰がどう動く可能性があるか考えておくべきだな」
『えーセヴァラス大好き。セヴァラスとアレンディアの祭り過ごしたいな』
「……」
う、冗談っぽく言ってみたのに黙られた。
「君が誰にでも親し気にそういう冗談を口にするから、事態がややこしくなっているという自覚はあるか?」
『いやいやいや、誰にでもは言ってないよ!』
セヴァラスのこと本当に大好きなのに軽い女みたいに扱われてる!
そもそも好きな事を信じて貰えてないんだろうか、ウィンドレイクまで行ってるのに!
「仮に僕が君と過ごしたら、確実に王族に喧嘩を売っていると思われるだろうな」
それは確かにそう。と言うかセヴァラスは随分確定的に言うけど、もう私がアレクサンダーかジェームズと婚約するっていうのは皆が思っていることなのかな。可能性はある、ぐらいの話じゃなかった?
『じゃあ、やっぱりエマと過ごそうかな。なんか王太子殿下にとって都合良くなる感じなのが嫌だけど』
「君は王族になる気はないのか?」
『うん、全力で避けたい。王族のお付き合いとか面倒くさそうな気しかしないし、マナーとか自信ないし。それに正直、誰とは言わないけど、2人ともあんまり好きじゃない』
一息でそこまで言い切ると、セヴァラスがクスリと笑った。
うーん、可愛い。いつも穏やかそうな表情していればもっと皆に馴染めると思うのにな。
「僕としては是非君を応援したいところだが、出来ることは特にないな。残念だが、僕は自分の事で手一杯なんだ」
『……私もセヴァラスのこと、応援したい。どうすれば良いんだろうってずっと考えているんだけど……』
「ありがとう。だが、僕はもう諦めている。だからせめて君に、夏の美しいウィンドレイクを覚えていてもらいたい」
諦めている、か。セヴァラスはウィンドレイクのことが好きなはずなのにそんなことを口に出来てしまうなんて、今の状況が余程辛いのだろう。
何と声を掛けたら良いのか分からない。結局エリザベスと協力してもアレクサンダーを説得は出来なかったし……。
『……夏にウィンドレイクに行くのを楽しみにしてるね』
結局それしか言えなかった。
話は終わりとばかりにセヴァラスが勉強を始めて、私も彼のノートに目を落とした。




